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My own Sword  作者: ツツジ
本編
31/187

第31話 サポートタイプ

ジャンル変えた記念更新


 七音、勇人、零のツッコみが入る。その反応には慣れたものだと言わんばかりに、ロビンと呼ばれた男子生徒はもう片方の手をひらひらと降った。


「血は繋がってないさね。昔、流華の近所に俺っち家族が引っ越してからの付き合いなんよ」

「そう。ロビン・カラム兄さん。七音には前、話した」

「あ、船で言ってた人?」


 こくりと、流華が頷く。その間にロビンは流華の隣の椅子を引き、そこに座った。その間に呆気に取られていた勇人が我に返り、立ちあがってロビンを指差した。


「学生のタバコは悪だぞ!」

「これ? ペロッとキャンディさぁ。一ついるかい?」

「わーいオレンジ味~」

「勇人君……謝罪が先では?」

「いいさぁ。こいつの所為で印象悪いってのはわかってるさね」


 そう言いながら、自分のタトゥーを指差すロビン。その後、七音をじっと見てくる。だが、若干目線が上の方だと七音は感じた。実際そうだったようで、ロビンはうんうんと頷く。


「その双葉が噂の女の子さねぇ? んで、もう一人は悪って言ってたその子かい?」

「「う゛っ」」

「身構えんでもいいさぁ。流華の人……んにゃ、友人を見る目は確かさね。それに、こうして見ても悪い奴に見えんよ」

「優しい人だ!」

「圧倒的感謝!」

「あ、じゃあSEIN交換しませんか!?」

「零君、行動速い」


 話ができる上級生という、棚から牡丹餅な状況を見逃す零ではなかった。すぐに全員のSEIN交換と自己紹介が行われた。その後、いろいろと情報を聞くことができた。





 ロビンが知る範囲だけとはいえ、七音達一年生が知っているよりも去年一年の経験を元にしたものだ。

 正確な情報を教えられ、嘘の情報は否定される。その選択だけでもありがたいものだった。


「いや~ありがとうございます! 自分的に、情報はもう諦めるしかないかと思っていました!」

「こんなんで役に立てたのならいいさね。まっ、この学園では噂話ってのはいい娯楽なんよ。すぐに面白おかしく駆けまわって落ち着かんから、下手な事はしない方がいいさぁ」

「ですって、勇人君」

「……だってよ……目の前に悪がいたから……」

「あたしに関しては、気が付いたらこうなんですけど?」

「あれは武蔵さんと樫城くろえが悪い」

「でも、いい点もあるさね? 俺っちがここに来たのも、話が回ってきたからさぁ」


 はははと笑うロビン。聞けば、七音達がこのフロアで声をかけているという話がSEINで回って来たそうだ。恐らく、断った誰かが友人に『噂の人物に声かけられた』と送ったものが広がったのだろう。『戦艦様に言えばいいのに』という妬みの尾ひれもついていたそうだ。

 それを聞いた勇人が首をひねってロビンに問いかける。


「じゃあ、ロビンは最初、ここにいなかったのか?」

「そうさぁ。自室で流華にすすめられた本を読んでたさね」

「なら、もう相手いんの? その相手との『適合』の練習とかは?」

「逆さぁ。声がかからないように部屋にいたさね。俺っち、サポートタイプなんよ」

「「「……えぇ!?」」」


 一瞬の間の後、七音は驚愕の声を上げてロビンを見る。また勇人達と声が被ったが、それどころではない。流華も初耳らしく、目を見開いてロビンを見た。



 数少ないサポートタイプは優遇されるかと思われるが、実際は冷遇に近い。理由としては、女性側が適合相手になりたがらないのだ。



 サポートタイプだけでは戦闘に参加できないため、必然的にもう一人と適合する必要がある。そうすると適合率が下がり、能力も低下する。

 魔物との戦闘では短期戦での火力が重要視されており、女性はサポートタイプによる戦略性よりも適合率を高めた火力の方を選ぶのだ。

 過去に二人と適合して戦う隊員は数人いたが、いずれも近距離と遠距離で使い分けていたらしい。その為、サポートタイプ自体が認知されていない状態だった。

 それが一般にも知られるようになったのは、樹の存在と武蔵の活躍によるものだ。逆に言えば、樹以外でまともに適合相手がいるサポートタイプがいないのだ。


 それは目の前のロビンもわかっているはずだ。だが、本人は笑顔を絶やさずに七音達に話しかける。


「まっ、こればっかりはしょうがないさね。自分の身体に文句言っても仕方ないさぁ」

「……兄さん、相変わらず達観してる」

「逆に、流華は変わったさぁ。明るくなって、いい友達を持ったさねぇ」


 そう言いながら、ロビンは七音に向かってウインクをした。自分に言われているのだと分かった七音は、少し恥ずかしくなりつつ笑みで返した。


「ロビンさんに質問ー。サポートタイプってわかってるのは、適合したことあんの?」

「そうさ。サポートタイプだからか、そこそこ適合しやすいのさぁ」

「どういう形になるんだ!? 感覚は!?」

「ちょっと勇人君、どうどう」


 目を輝かせて食いつく勇人を零が抑える。七音と流華が苦笑して二人を見る間、ロビンは困ったように唸りを上げた。


「う~ん……説明しにくいさねぇ……ただ、身体が変わっても、最初っからその形だったように動かせるんさ」

「ロビンさんの場合はどうなるんですか?」

「俺っち? 翼になって、空を飛べるんよ」

「飛べるっ!!」


 今度は七音が食いついた。椅子から立ち上がりそうな七音とは逆に、勇人は残念そうに口を尖らす。


「空飛ぶんなら、赤マントの方がヒーローじゃん……」

「勇人君。求められているのはそこではないです」

「そうでもないさぁ? 今年卒業した先輩で、適合率高いけどごつい武器の相手より、適合率そこそこで見た目いい武器の相手を選んだ人がいたんさ」

「選べる時点で凄い贅沢……」


 七音の言葉に全員が頷く。ふと、自分の言葉から連想して思い出したのは、つい数時間前に聞いた内容だった。


「そういえば、誰でも適合できる人がいるんですよね? その人とならロビンさんも」

「七音」


 話を途中で止めてしまった。それほど、ワントーン下げてロビンに呼ばれた名前から圧を感じた。ロビンを見れば、にこりと笑う姿が目に映る。だが、抑えているだろう不快感がにじみ出ている。

 その話題に触れるなと、暗に伝わってくる。なんとなく思いついたことを口にしたのが間違いだったようだ。気さくなロビンが話に出すだけでも嫌だなんて、いったいどんな相手なのだと疑問が浮かぶ。

 詳しそうな零に後で聞こうと思いつつ、話が途切れたせいで生まれた妙な間の対策を考える。


 その時、一際大きな音楽が流れてきた。心臓が飛び跳ねて変な声が出た。幸い、皆は音楽の方に意識が向いて聞こえなかったようだ。


 心臓をバクバクさせながらもよく聴けば、今放送中の戦隊シリーズの主題歌だ。誰が鳴らしているのか、すぐに検討が付いた。

 皆の視線を集めながら、勇人はスマホを手にじっと見つめている。そこから鳴り響く音を止める素振りはない。


「勇人君、何の音ですか?」

「え? 『氷上戦隊 フィギュアーズ』の主題歌だぜ!」

「それはわかります! 何で鳴っているかってことですよ!」

「アラームだよ。『戦艦様』の訓練見たいじゃん?」

「なら、早く止めて。うるさい」

「いや、折角のサビなんだから最後まで聞かないと」

「放置の理由それ!?」


 七音が反射的にツッコむ裏で、ロビンが静かに吹き出した。くだらない理由に零は真顔で勇人からスマホを奪い、音楽を消した。一切の躊躇はなかった。


「あ゛ぁ!! ひでぇ!」

「公共の場で音楽垂れ流しはいけません。自室ならいくらでも聴いていていいですから」

「ってか、もうそんな時間なの?」

「……三十分前」

「それ、ホントかい? 『戦艦様』の訓練なんて一大イベント、皆見に行くさね。今から行くとなると……遠くからギリギリ見える位置を取れるかどうかってとこさぁ」

「ゲッ!? マジ!?」

「んーでも、天村は『戦艦様』と仲いいんよね? なんかあるかもしれんよ?」

「とりあえず、行くだけ行きますか……」

「兄さんは?」

「俺っちはいいさぁ。まっ、何かあったら相談乗るさね」


 そう言いながら、ロビンは流華の頭を撫でた。流華は抵抗する素振りを見せつつも恥ずかしそうに受け入れている。満更でもないようだ。


 気が済んだロビンは自分のゴミを持ってテーブルから去っていく。それを見送ってから、七音達も急いで片づけて一階へと向かった。

  

今のところアクション要素少ないですが、後々戦闘が主軸になる予定です

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