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My own Sword  作者: ツツジ
本編
25/187

第25話 特待生、戦闘

前回、くろえの噂の内容がわかった七音達。






『これが、噂の元になった事件だね』




 そう締めくくるマサルの言葉に、七音は何も言えなかった。他の皆も同じ様に唖然としている。

 生々しい詳細は、くろえの恐ろしさを明確に浮き彫りにさせた。マサルの話では、くろえが人を殺すことに躊躇している様子がなかった。そこまで考えて、身内だからこその疑問が浮かんだ。


「ねぇ、おにい。調べたら出てきたって言ってたけど……何をしたらそんなに詳しくわかるの? うちにはそういう情報が入らないようにしてたの、おにいでしょ?」

「確かに。普通はそこまで調べられない」

「零君なら知っていそうですけど……」

「前も言った通り、権力ないので触り位しか流れてきませんよ」


 七音の疑問をきっかけに、流華達も次々に乗ってくる。教員勢は知っている様子だったが、それを生徒に話すことはないだろう。そもそも、島外にいるマサルがわかるはずがない。

 その疑問を、マサルは何でもないようとばかりに答えた。




『簡単だよ! 水無月の本部サーバにハッキングしたからね!』




「「「……え」」」

『いや~。意外とセキュリティ高くて焦ったよ。おかげで一か月も取られちゃったよ。今までで一番難易度高かったよ、うん!』


 あははと笑うマサルに、血の気が引いていく七音達。いの一番に、七音が叫んだ。


「っんのバカおにぃぃぃ!!」

『うぇぇ!? 何で!?』

「……ハッキングは犯罪」

『うん? わかってるよ?』

「なら、捕まっちゃいますよ!?」

『ああ、ちゃんと対策してるから大丈夫だよ』

「七音! お前の兄ちゃん悪だぞ!?」

「しかも、慣れてるってことは常習犯だよな? やばくね?」

『証拠がありませーん。七音残して檻にぶち込まれるようなヘマしてませーん』

「…………面倒ごとになりそうなので、今回は目を瞑りましょう」

「零君!?」

「代わりに、サーバに入っていただろう戦闘映像を送ってください。盗んでますよね? 短時間で詳しく映像を分析できませんもの。七音さんを気遣って口頭説明したようですが、入学式初日ですでに同じような戦闘映像は見ています。実際、目で見た方が伝わりますから」


 零の提案に、今まで笑って流していたマサルが真顔で黙る。怒らせたのかと誰かが唾を飲み込んだ時、マサルがテーブルに音を立てて突っ伏した。


『七音の目に……天使の目に、生肉ぐちゃあな映像が…………!』

「いやいや!? 小さい頃にもう見てるからね!?」

『イコール何度も見せていいって訳じゃないじゃん……? 畜生………………七音、見たい?』


 マサルの泣きそうな問いかけにドン引きしながら、はっきりと首を縦に振る七音。それを見たマサルは長いため息をついた後、無言で手元の操作を始めた。

 キーを叩く音、クリックする音、しばらく響いたと思うと、マサルがおもむろに顔を上げた。


『今、映像を圧縮ファイルに入れて、そのパソに送ったよ……すぐ届くと思う……』

「ありがとう、おにい!」

『ああ……! 七音の笑顔、久しぶりだぁ……!!』

「……そーだねー」

「ひでぇ棒読み」


 勇人のツッコミは、涙ぼろぼろで七音の笑みを拝んでいるマサルの耳に入らなかったようだ。それどころか、恭しく拝み始める。

 呆れ顔の七音の肩に、静葉がポンっと手を置く。気持ちの共感ができるのだろう。


 数秒後、ポンっと軽い音が鳴った。動画が届いたようだ。早急にファイルを開く七音。皆が画面に食い入るように見る中、動画の再生を始めた。

 


 マサルの説明で大まかな流れはわかっている。なので、長時間の映像を飛ばし飛ばしで見ていく。

 結末を知っていると、魔物に対抗する隊員に言いようもない気持ちが浮かんでくる。そのまま、映像はくろえとの戦闘に移った。


 圧倒的な強さを見せるくろえは、まるで踊っているかのように見えた。水色が基調の、一般的な物より一回り大きな鉄扇。それがくろえの武器だった。

 近接武器の攻撃を閉じた鉄扇で受け流す。少し距離を取って鉄扇を広げると、大きく扇ぐように振るった。それだけで、軌道上にいた隊員が切り刻まれる。まるで魔法を見ているようだ。

 美しいとしか言わないヴィンには触れず、映像を凝視する。ふと、七音は気づいた。


「ねぇ、これ……」


 動画を止め、皆が見える様にそれを指差す。場面はくろえが鉄扇を扇いでから隊員が袈裟懸けに裂かれるまでの、絶妙なタイミングだ。

 二人の間に、三日月の形をした何かがぼんやりとした輪郭で存在していた。目を凝らさなければわからず、目の前で起きていたらまず気づかないだろう。

 それを見つめていた時、静葉がハッとした後に七音からマウスを奪った。


「静葉っ?」

「貸してください! もしかしたら……!」


 カチカチと操作をする静葉に、何に気付いたのかと画面へ視線を戻す。そうして次々と映し出される場面に、七音は目を見開いた。

 くろえが隊員を切り裂く直前、三日月のそれが必ず移っていた。静葉がコマ送りにした映像では、鉄扇で扇がれると三日月のそれが形成され、直線状に進んで隊員を切り裂いた。

 

 

 ここまでくれば、正体がはっきりした。


味方を切り裂く物の正体とは!?

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