第24話 噂の実態
GW毎日1話の更新です
「鉄板?」
「何か焼くん?」
「開発部が作った物の一つですよ!」
「さすがに私でも覚えてるよ……」
「七音の言う通り、授業でやった。後、今日のテストに出た」
「「のぉっ!」」
頭を抱える男子二人に、七音達の方が抱えたくなった。
戦闘部隊だけで、魔物退治はできない。それを支えるべく、水無月には後衛部隊がいくつも存在する。
研究部は魔物の生態を詳しく調べ、弱点を探る。情報部は世界各所の魔物の出現条件、場所などの統計。一番上の司令部は、水無月の部隊全てを統括し動かす。
開発部はその名の通り、戦闘をサポートするための物を日々開発している。戦闘の撮影隊員や民間人を守るように持ち運びやすいが防御力の高い鉄板、動画で見た様々な弾を放つ手筒は全て、開発部で精魂込めて作成されている。
テストの答えという嫌な現実に放心気味の二人は放っておくことにし、マサルに続きを促した。
部隊は蜂たちに見つからない距離で適合をし、気を見計らい、突撃した。
花弁を散らし駆け抜ける隊員達。武器を振るい、最初の一撃を確実に魔物に食らわせる。攻撃を受け、魔物達は迎撃に移った。
鞭のように毒針を伸ばし、隊員達へと襲い掛かる。集中すれば避けられる速さだが、如何せん数がある。
ついに、毒針が一人の隊員へと突き刺さる。だが、逆に毒針を掴んで引き、本体へとナイフを深く突きたてた。すぐに仲間が安否を確認する。
刺された箇所を中心に周りの感覚がなくなる。だが、毒針自体が細いからか、範囲はごく微小。毒の可能性はあるが、今のところ戦闘に難なし。
刺された本人の報告に、隊長が指示を飛ばす。近距離で押し切る。遅効性の毒だった場合を考え、毒針は極力避け、早期に決着をつける。戦闘さえ終われば、すぐに水無月の医療班が治療してくれる。
隊長の思惑を理解し、同意する隊員達。だが、一人が声を上げた。
『樫城くろえだけは、その意見に反対したんだ。毒針を受けてはダメだ、遠距離から攻撃してってね』
「くろえが……?」
「でも、普通は隊長命令優先だろ?」
「そうですね……それに、実戦経験がないから怪我に対して敏感になっているかもと、自分的には考えてしまいますね」
『実際、そうだったみたいだよ』
怪我をしてパニック、新人にはよくあること。
そう考えた隊長は大丈夫だとくろえに声をかけ、近距離の戦闘を続けた。他の隊員も同様で、誰一人としてくろえの声を聞かなかった。
長い時間が過ぎた。最後の一匹を撃ち落とした時には、誰もが一か所は毒針の跡を残していた。それは女性に限らず、武器の男性も同様に刺されていたようだ。
適合を解いてほっと一息をついた隊員達が、非戦闘員に近づいてくる。その前に鉄板を挟んで、くろえが移動して立ちはだかっている。
安心しきった顔で隊員達が声をかけてくる。主に、戦闘中の意見が過剰だったという笑い話だ。
だが、くろえはその場で適合をし、一言だけ告げた。
『残念だけど、貴方たちを生かしておくことができなくなったわ』
直後、隊員一人の首が刎ねた。落下する首、一瞬遅れて切断面から血が噴き出し、その場に倒れる胴体。
仲間の死による動揺はその間だけだった。異常事態を飲み込み対処すべく、再び適合をして目の前の敵と交戦を始めた。
だが、それは戦闘とは言えないものだった。あまりにも一方的な殺戮。
二十はいる歴戦の戦闘員が、ついこの間まで普通の学生だった少女がねじ伏せられる。攻撃を容易く避け、一人ずつ死を与えていく。それは、適合を解いた男性に対しても同じだった。
疑問も、命乞いも、罵倒も、全てを聞き流した。
くろえが動きを止めた時、戦闘隊員は誰もが地に伏して物言わぬ肉体へと変えていた。周りの花々が血を浴び、毒々しい赤色へと染まっている。
恐らく、隊員達が戦闘前の万全な状態だったとしても勝てなかっただろう。非戦闘員の一人がそう呟いた。その証拠に、くろえは少し疲れたとばかりに小さく息をつくだけだった。
ついに明らかになった噂の内容
凶行に及んだ理由とは……!?
次回に続く!