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My own Sword  作者: ツツジ
本編
2/187

第2話 水無月学園

つらつら書いたのをぶつ切りにしているので、文字数はバラバラになるかと

 

 重い瞼をゆっくりと開けると、見慣れた天井が七音の目に映る。少しの間、天井をぼーっと眺めていたが、ハッと上半身を起こした。

 その時、手元に硬いものがあることに気付いた。布団の中から取り出して見れば、一冊の本だった。握りしめていたその本に、七音は自然と笑みを浮かべていた。


「そうだ。寝る前までこれ見てたんだ」


 あの日の夢を見たのも、きっとこれが原因だろう。七音はそう判断した。

 何度も読み返されてぼろぼろになったそれは、あの日の後におねだりして買ってもらった本だ。

 内容は簡単に説明された魔物と人の歴史。

 運動する方が好きな七音にとってはそれでも難解な箇所が多く、最初はよく兄に質問をしていた。




 魔物と呼ばれる生物が明確に人間を襲いだしたのは、百年ほど前だという。

『禍々しい力と見た目の化け物』と名義つけたのは誰なのか定かではない。

 問題は、数匹の魔物がゆっくりと、だが確実に街や村を襲撃して廃墟にしていくことだった。






 普通の武器では傷一つつかず、逃げることしかできない人々。絶望的な中、奇跡は起きた。






 魔物の襲撃が間近に迫った街で、神父と修道女が手を繋いで神に祈りを捧げていると、急に神父の身体に変化が起こった。

 淡い光を放ちながら、見る見るうちに人の形が変わり、修道女の手に杖として収まった。受け止めた修道女はすぐさま外に出て、その杖を天へと翳した。



 すると黒雲が空を覆って轟雷を呼び、魔物へと降り注いでその進撃を止めた。


 初めての対抗手段に、各国が総力を上げてこの出来事に食いついた。

 二人の許可をもらい様々な検証を行ったが、なかなか進まない。



 そうこうしているうちに、違う魔物が別の国に現れた。だが、最初の街で同じような出来事が起きたのだ。



 今度はとある若い夫婦だった。夫が弓となり、妻が引いた矢はまだ離れた所にいた魔物を貫いた。この二人にも研究の対象になってもらった。


 それから数年、魔物が現れては対抗手段を得た人が退治するということが続いた。


 共通点として、必ず男女一組。主に十代後半から二十代。男性が武器となり、それを女性が何倍もの力で使いこなす。




 そして遂に、ある科学者がその手段を発見したのだ。




 人を構成する遺伝子、その中で性別に関わる遺伝子の配列に通常の人とは違う部分があった。

 それが男性を武器に変化する力を、女性を男性武器の力を何倍に引き出す力を与える事がわかったのだ。


 さらに科学者が調べた結果、その遺伝子を持っているからといって誰もが戦えるわけではない。

 男女の組み合わせによっては男性が武器になれず、武器の力を女性が適切に引き出すことができないこともわかった。

 だが、それは特訓することでコントロールができる範囲内だという結果が出てきた。



 そこで、科学者は考えた。『適合』と名付けた男女の組み合わせがそう簡単に見つかるとは思えない。

 また、組み合わせた男女同士の相性、『適合率』も最初から高い方がいい。それをさらに高めることができるのなら理想的だろう。


 ならば、適合が可能な男女を集め、訓練できる施設があればいい。



 科学者は各国と相談し、とある島に適合の可能性を秘めた男女を育てる施設を作った。

 魔物との戦闘や戦術だけでなく、一般的な知識も教えられるように。その想いを詰め込んだその施設は、科学者の名前からこう名付けられた。





『水無月学園』






 本の内容を反芻し終えた七音は、ベッドから降りてクローゼットから一着の服を取り出す。それを隣の姿見で自分に当ててみる。

 剣をモチーフにした校章のついた、臙脂色のブレザー。

 ずっと憧れていた水無月学園の制服だ。自分サイズの制服に、顔が破顔していく。



 水無月学園高等部へ進学するには二つの方法がある。中等部から繰り上がる方法と、外部から試験を受ける方法。

 両方とも一般的な学力試験と共に、簡単な遺伝子結果に受かる必要がある。元は中等部から通おうと考えていた為、七音の遺伝子検査はすでにクリアしていていた。

 諸事情により地元の中学校に通っていたが、問題は中学校の定期試験で下から数えた方が早い順位の学力の方だった。


 それでも夢の為に必死に勉強し、なんとか合格ラインを超え、憧れの制服が今、手元にある。


 晴れの日である入学式が、今日である。準備は万全。

 必要なものはすでに島に輸送され、後は貴重品やガイダンス資料など手荷物だけである。



 そういえば、今は何時だろう。念入りに五分刻みにしたアラームが一つも鳴っていない事から、楽しみ過ぎて早く起きてしまったのだろう。



 振り返って後ろの壁時計を見、そして固まった。




 針の位置がおかしい。服を戻して目をこすり、きちんと確認する。

 先程と変わっていない。壊れたのかと、携帯の方を確認する。



 時間は同じ、家を出る予定時刻の五分前だった。




「ぎゃああああああああああああああああああああああああっ!?」



 心からの悲鳴が家中に響いた。



後程出しますが、世界観は現実に近いです

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― 新着の感想 ―
[良い点] スピーディーな展開で、ちょっと怖い部分もそこに囚われずに先に進めます。 男性が武器に、女性が使い手という異色な表現がとても面白いです。 もう少し時間のある時に、ゆっくり拝読させてください…
2020/05/18 21:08 退会済み
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