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My own Sword  作者: ツツジ
本編
1/187

第1話 過去の夢

初投稿です! 亀スピード、メンタルチキンですがよろしくお願いします!

 

 子供の無邪気な声があちこちで聞こえる。視界に映るのは、ブランコ、砂場、鉄棒といった遊具と端に置かれたベンチ。

 近所でよく行っていた公園だ。




 これは夢だと、天村七音(あまむら ななね)は自覚していた。最初に目に入った、砂場の一か所に固まっている数人の少女。

 その中で頭から双葉が生えたような、特徴的な緑髪を持つ少女が目に入る。



 紛れもない、幼い頃の七音自身だ。過去の出来事を眺めている夢。



 この夢は、今までに何度見たことがある。それ程、七音の十五年の人生を運命づけたもの出来事だと言える。




 突如、地面が円を描いて光りだした。魔法陣と呼べるそこから、浮き上がってくるように何かが現れた。




 パッと見れば蟻だ。だが、周りの遊具よりも大きな体は金属めいた光を放ち、大顎を鳴らす度に不快な金属音を響かせる。

 何よりも、本来ある目ではなく、人間の目玉が顔一面に浮かび上がった不気味な姿。


 それは出現すると同時に、近くにいた子供数人に噛みつく。鋭く強い大顎は少年少女の柔らかい身体を簡単に切断した。

 上半身と下半身が時間差をあけて地面に落下する。



 誰かの悲鳴が轟く。同時に、その場がパニックに陥った。公園から出ようと走り出す人々。

 その努力をあざ笑うように、近くにいる者から大顎の餌食にする化け物。


 魔物と呼ばれる生物だと後で聞いたが、この頃の七音は知らなかった。

 突然現れ虐殺し始めた生物に、七音は足がすくんでその場にへたり込んでしまった。


 逃げなければ。本能がそう叫ぶのだが、身体が動かない。下着が濡れる触感さえもわからず、ただただ魔物の殺戮から目が離せなかった。

 魔物の目の一つが、こちらを向いた。瞬間、七音を見つけたのだろう。一斉に目玉がこちらに向いた。


「……!」


 恐怖で声も出なかった。魔物が狙いを七音に定め、その巨体でこちらに歩いてくる。

 逃げろ、危ない、立って。遠くから大人の指示が飛んでくる。

 七音だってわかっている。だが、涙が溢れてくるだけで一向に動くことができない。


 魔物が、大顎を鳴らして近づいてくる。べったりとついた返り血がその度に飛び散り、先程までの惨劇を表している。

 今までの楽しい記憶、悲しい記憶、いろいろな記憶が急速に溢れ出してくる。もうだめだ。迫りくる恐怖に目をギュッと閉じた時だった。




 顔の前を風がよぎった。同時に、大きな音と低い悲鳴のような音が聞こえてきた。




 恐る恐る目を開けると、そこには魔物ではなく一人の少女がいた。一つに結った黒髪をなびかせ、銀の小手、靴、銃を身に着けた少女。

 その奥で態勢を崩しながら低い声で唸る魔物。七音よりも若干年上の少女は、七音を見てにこりと笑った。


「大丈夫?」


 その問いに、七音は首をぶんぶんと縦に振った。少女はそれを見て頷き、また前を向く。

 今のやり取りの間に態勢を戻した魔物が、奇声を上げて突進しようとしていた。


「遅いっ!」


 そう言って、一歩踏み込んで駆け出す少女は速かった。一瞬で魔物の前に潜り込み、担いでいた銃をゼロ距離で打ち込んだ。

 銀の弾丸が、目玉からその下の金属の身体を貫く。少女が離れて着地するのと魔物が倒れ込むのはほぼ同時だった。


「すごい……!」


 感嘆の声が漏れる。先程までの恐怖はすでに消え、代わりに少女の活躍に対しての興奮が七音を捉えて離さない。

 目を輝かせて少女を見ていると、少女は満面の笑みを浮かべてこちらに駆けよってきた。


「倒せたー!」

「ひゃい!」


 勢いのまま抱き着いてきた少女に、驚きつつも受け止める。思わず変な声が出たが、少女は気にしていないようなのでそのまま流した。


 ふと、公園の外のざわめきが強くなった。同時に、公園の中に何人もの人が入ってくる。


 皆、女性だった。高校生くらいの人もいれば、二十代くらいの人もいる。共通しているのは、それぞれ何かしらの武器を持っていることだ。

 女性たちは倒れた魔物と少女を見比べ、驚愕していた。


「あの魔物……あなたが倒したの!?」

「あたい? そうだけど」

「ちょっとこの子、三つも武器を使えてるわ!」

「有望株ね! ちょっと本部に連絡してくる!」

「詳しい話を聞かせて頂戴!」


 あれよあれよという間に少女は少し離れたところに連れていかれ、女性たちに囲まれて見え無くなってしまった。

 離れてしまったことにショックを受けて俯いていると、一人の女性が七音にハンカチを差し出した。


「はい、これ」

「あ、ありがと……ございます。その、お姉さんたちは……?」

「私たち? 魔物退治の部隊よ。でも、今回はあの子の活躍のおかげで出番はなかったみたいだけど」


 そう言う視線の先には、質問攻めにされている少女がいる。魔物退治の部隊。それを聞いて思い浮かぶのは、先程の少女の活躍だ。

 思い起こす度に胸の鼓動が早くなる。七音はハンカチを握りしめたまま、思ったことを口にした。


「あの子……その部隊っていうのに入るんですか……?」

「そうね。とりあえず、うちの学校に入ってもらうことになるわ。本格的に魔物退治にかかるのは、まだ先ね」

「じゃあ……あたしも、あの子みたいになれる?」


 キラキラと少女を見つめる七音。自分も、誰かを救う一人になりたい。今の七音は、その思いでいっぱいだった。

 七音の問いに対し、女性はにこりとほほ笑み頭を撫でる。


「強い思いがあれば、なれる。私たちは、いつでも歓迎するわ」


 その言葉だけで、何倍もの勇気をもらったような気がした。頬を緩ませていると、少女が質問の合間をこちらに走ってきた。

 きょとんとする七音に対し、少女は手を差し出して二カッと笑う。


「そういえば名乗ってなかったな! あたい、鞍馬武蔵(くらま むさし)!」

「え、あ、天村七音、です!」


 急な質問に動揺しつつ、差し出された手を握り返して名前を言う。

 珍しい名前の少女だが、七音の知っている幼稚園内では聞いた覚えがない。恐らく、小学生なのだろう。

 武蔵は笑顔のまま、握った手をぶんぶんと降った。


「七音、だな! あたい、妹分が欲しかったんだ!よろしく!」

「よ、よろしく!?」


 いつの間にか妹分認定されていた。疑問に思ったが、憧れを抱いた相手なのだ。嫌なはずはない。

 そう思って七音はそのまま武蔵の妹分の座を甘んじて頂いた。




 第三者目線で過去を追憶していた七音は、意識が朧気になってきていた。目覚めが近いのだろう。

 改めて自分のルーツを再確認した七音は、ゆっくりと瞼を閉じて夢から覚める道を選んだ。


一時間後くらいに次話も上げます。

それからは一週間ほど一話ずつ上げる予定

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― 新着の感想 ―
[良い点] 今後の展開が気になる作品ですね、文章もしっかりしていますし、今後ヒロインがどう成長していくのか楽しみです! [一言] これからもいい作品をたくさん書いてください!
[良い点] 魔物怖いですね… [一言] Twitterからきました。 応援しています!
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