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翌月水曜日

「フォー・ウィークス・ラブ・ストーリー!」

 エコーの効いた私の声がヘッドフォンの中で響いている。ただし先週までのものとはほんの少しエフェクトのかけ方が違っている。今週から少しルール変更をするということで、タイトルコールのエコーも少し変えることにしたのだ。

「星村瑞希がお送りする『happy line days』。さあこの時間は毎月私と、そしてラジオを聴いているみなさんで、恋に悩める方にアドバイスをして、いっしょにラブストーリー作っていく『4 weeks love story』のコーナーです!」

 ここまでは先週までと同じフレーズ。さてここから、新しいルール説明をしないといけない。

「さて今回からですね、少しルールを変えていこうと思っています。というのもですね、前回の相談者がリスナーアンケートの結果とは違う選択肢の行動をとって、結果オッケーとなった、というのがあったんですよ。それで私が思ったことはですね……」

 ここでほんの僅かの間を置く。先週の夜の手塚との会話を思い出しながら話し始める。

「こうやってリスナーのみなさんから意見を募集して最後には集計結果を発表するんだけど、結局最後に決断すべきなのは本人なんじゃないかなーと思ったわけなんですよ。もちろんリスナーのみなさんの意見は貴重なものですので、どしどし意見は募集しますよ。でも恋愛って最後は二人だけの問題じゃないですか。本人と、そして相手がいいなって思っていることをやる、それが一番じゃないかなと、先月のラブストーリーで感じましてね」

 前回の「マルーン」がまさにそうだった。リスナーアンケートの結果を無視してでも、相手の要望に応えたことで、彼は成功することができたのだ。

「ですから今回からはですね、同じように相談者からのメールを紹介して、恋が成就するために私たちが選択肢をふたつ用意します。それに対してみなさんからの意見を募集して、四時半から結果発表を行います。が、多数決にとらわれる必要はありません!相談者の方はですね、結果はあくまで参考にして自分はどうするか、じっくり考え込んでください。そして来週の放送までに結果報告、そしてまたアンケートをとる……という方法にさせていただきます」

 今これを聴いているリスナーはどう思っているのだろう。やっぱりそう思う、というリスナーもいるかもしれないし、それでは自分たちの意見が意味ないではないか、というリスナーもいるかもしれない。だがそれでもいいと思う。そういったいろんな意見が集まってやりとりが行われていく、それがラジオというメディアの最大の魅力なのだから。

「もちろん、リスナーのみなさんの意見は今まで以上に紹介していこうと思っています。自分はこうやったから上手くいった、だからこうした方がいい、という熱い思いをどんどん送ってきてください。その思いが相談者を動かすかもしれませんからね」

 そう、リスナーのちょっとした一言が、他のリスナーの心に響く。それもまたラジオの魅力の一つだ。

「では今日は先に1曲かけましょう。明日が見えない不安の中でも笑っていこうという前向きな曲です。ちょうどこの番組と同じ単語が使われていますね。YUIで『It's happy line』」

 曲が流れ始めると、私はブースの向こうにいる手塚の方に目をやった。手塚はオッケーというように頷いていた。

 先週の日曜日、私たちは水族館に行き、そこでちゃんと付き合うことになった。そのときにイルカのストラップを渡されたときはさすがに恥ずかしかったが、別にこれはこれでいいか、と思った。もしかしたら「4 weeks love story」の企画がなかったら、「マルーン」からの相談がなかったら私たちは付き合うことにならなかったのかもしれない。そしてその根底には、意見をたくさん送ってきてくれる数多くのリスナーの存在があったからだと私は勝手に思っている。勝手かもしれないけれど、やはり私にとってラジオは最も魅力あるメディアであるし、こうやってリスナーと、そして身近な人と繋がりを持たせてくれているものだと思う。音波で繋がりを持とうとするイルカのストラップは、私にとっては、電波で繋がりを作るラジオの象徴のようなものになっていた。

 気がつくと曲が終わりかけていた。私は次に読む原稿を手に取り、手塚からの合図が来るとマイクに向かって話し始めた。

「曲はYUIで『It's happy line』でした。では、今月のラブストーリー1週目です。今回の主人公は……」



(了)

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