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ほんとは嫌なんだけどね。

 人間関係って大変ですよね・・・。

 彼女が転校してきたのは梅雨の初め。ニュースで、「明日から梅雨入りです」と流れていた、丁度その次の日だった。中途半端な時期の転校ということもあり、クラスはその話題で持ち切りだった。私のいるグループもその1つ。カレンたちと「女の子らしいよ」「うちのグループに入れようよ」と、同じことばかり話していた。

 彼女が入ってきたとき、クラスはざわついた。転校生だから、というのももちろんあるだろう。しかし、それ以上に、彼女が美少女だったからだと思う。透明感のある肌、くっきりと切れ長の目、すっと高い鼻、さらさらの黒い髪。そして、ガラスのような瞳は、透き通るような青をしていた。

 「雨の色だ」私は無意識のうちに呟いた。彼女の名は、天野しぐれ。別世界の人だ、と私は思った。窓の外では、大粒の雨がパラパラと降っていた。




 私――ゆきのは、中学2年生。同じ部活のカレンと同じクラスになって、カレンやカレンの友達と連むようになった。連むといっても、話が合うわけではない。どちらかと言うと話は合わない方だ。

 それに、住む世界も違う。私はスクールカーストで言うと下の方で、俗に言う陰キャ。でもカレンやカレンの友達の多くは、スクールカーストの頂点に位置する、俗に言う陽キャ。なぜそんな別世界の人と私が連んでいるかというと、部活が同じだから。全てはそこだ。

 カレンたちと話すのは、だいたい恋バナか、人の噂話。たまに悪口も出てくる。The苦手、みたいな会話ばっかりだ。「白川さんまた1人だよ」とか「香野くんってモテるよね」とか。

 私がこんなに無理をしながらもカレンたちと一緒にいるのは、悪口によく『ぼっち』の人が出てくるからかもしれない。あんな風に言われたくない。その思いだけでここまでやってきた。

 もう6月の初め。そろそろ私の話の合わなさが、はっきり目立つようになってきた。


 「ユキ、カラオケ行こー」


 カレンの友達の真音が言った。


 「あ、うん」息をするように私は答えた。


 真音は歌が得意だ。

 何でもできる、何でも1番と称されるカレンを超えて。


 「じゃあいつものとこで」

 

 真音は私に軽く目を向けた後、すぐにカレンの方に行ってしまった。どうせ、合いの手要員か何かなんだろう。

 わたしのいるグループには、クラスの歌うまトップ2が集まっている。真音とカレン。

 真音に関しては97点とかをバンバン出す天才だ。歌手を目指しているという話も聞いたことがある。

 それに対して私は、歌があまり得意ではなかった。

 大抵、70点後半から80点前半。良くて80点後半だった。そこまで悪くないような気もするが、私のいるグループには真音がいる。

 90点取れなきゃダメ。そんな空気があった。

 だから行っても合いの手ばかり。本当にお金の無駄だった。


 「今日はカラオケの気分じゃないんだけどな・・・」


 私は小さく呟くと、教室を後にした。

ちょっとずつ投稿していきます。

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