第十五話 忍者、ハーレム作りに着手する
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『SSSランクのおっさん無双 ~異世界で妄想を実現したら、人生大逆転で余裕でした』
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王都パリーズ、その王宮にて。
今日は俺とフリージアとオルレアナ、三人で会食をしている。
「さすがはハンゾー様ですね」
オルレアナがうっとり顔で俺をほめる。
「あの頑固なジャモニー卿が、今ではよく躾けられた犬のようにハンゾー様に従っています。当然のこととはいえ、感嘆を禁じ得ません」
「意外に話のわかるヤツだったぞ」
火吹き鳥のエール煮込みをかじりながら、俺は言う。
「一晩酒を飲み明かしたら、すっかり仲良くなった。小者なだけで別に悪いヤツじゃあないさ」
「まあ、なんという寛容さでしょう! さすがはハンゾー様、わたくし惚れ直してしまいます」
さらにうっとりするオルレアナだった。
ちなみに彼女のそんな姿は激レアらしい。
聞いた話である。俺のとなりに座っているフリージアから。
「……どうせ脅したに決まってます」
面白くなさそうな顔で、フリージアは虹色ぶどうの実をほおばる。
「従わなければ殺すとか、気に食わなくても殺すとか――まるで目に浮かぶようですよ、ハンゾーがしれっとした顔でそんなことを言ってる姿が」
「まあフリージア、ハンゾー様に対してなんという口の利き方を。……申し訳ございません、この子は市井の育ちゆえ礼儀がなっておらず――」
「俺は気にしてない。それより肉のお代わりをくれ」
「ええどうぞ、どうぞ」
甲斐甲斐しく俺に料理をわけてくれるオルレアナ。
それを見て、もっと面白くなさそうな顔をするフリージア。
「ハンゾー様は本当によくお食べになります。見ていて気持ちがいいですわ」
「食える時に食っておくのが忍者だ。仕事が始まれば飲み食いしてるヒマがないことも多いからな」
「厳しいお務めご苦労様です。遠慮なくどんどん食べてくださいな」
「……そんなことより二人とも」
いらいらと貧乏ゆすりをしながらフリージア、
「もっと大事な話をしませんか? 『やつら』の危険性と、それに伴う諸国との外交問題――議論しなければいけないことは、いくらでもあるはずです」
「心配は無用ですよ」
オルレアナがやんわりと返す、
「あなたが都を留守にしている間、わたくしも遊んでいたわけではありません。西方連盟の諸国、精霊教会、商人ギルドや傭兵ギルド――各方面との調整は進んでいます」
「ですが宰相閣下――」
「なによりわたしたちにはハンゾー様がいます。異世界から来た最高の救世主が」
「……その救世主を召喚したのは誰だと思ってるのよ……ぶつぶつ……」
「フリージア。何か言いましたか?」
「いーえ、べつに!」
「まったくこの子は……ハンゾー様、お見苦しいところを申し訳ありません。大方、わたくしとハンゾー様の仲の良さに嫉妬しているのでしょう」
「だ・れ・が! 嫉妬などするもんですか!」
ずっとこの調子だ。
俺のサポート役たる二人の仲が悪いのは、あまりよろしくない。
仕方ない。ここは一肌ぬぐとするか。
「ところでものは相談なんだが――オルレアナ」
「なんでしょうハンゾー様」
「屋敷が一軒ほしい。できれば王宮のそばに。古くても狭くてもいいし、借り物でも構わない。人が住めるならそれで十分だ」
「ええもちろん、その程度でしたらすぐにでも。……ですがそんな屋敷をいったい何に使うのです?」
「そこを俺の生活の拠点にする。それと――」
火竜苺の火酒をあおりながら俺は言う。
「フリージアとオルレアナ。お前たちもそこで暮らせ」
「……はあ!? 誰があなたなんかと!」
「かしこまりましたハンゾー様」
二人とも即答だった。
答えた内容は正反対だが。
「そうか。じゃあフリージアはいい。オルレアナ、お前は俺のところへ来い」
「ええもちろん喜んで」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ちなさい!」
あわてて立ち上がるフリージア。
「どういうつもりなの、いきなりそんな――一緒に暮らすとか、いくらなんでも――」
「別におかしなことじゃないだろう? ここにいる三人は、この世界を救いたいという目的が一致している。一緒に暮らしていた方が何かとやりやすい」
「そ、それはそうかもですが――」
「もちろん夜の生活についても、まとめて俺が面倒を見る」
「よ、夜の生活……っ!?」
「心配するな。三日三晩、女を抱き続けても問題ないように鍛えている。忍者だからな」
「別にそういう心配はしてないのですけど!?」
「だったら何の問題が?」
「そ、それは――」
口ごもるフリージア。
そこにオルレアナが口を挟む。
「フリージア……かわいそうな子」
「わたしの! どこが! かわいそうだというんですか!?」
「わかっていないからですよ。あなたはハンゾー様を独り占めしたいという気持ちが強すぎます。ですが、ハンゾー様はひとりの女が独占すべき器の持ち主ではありません。それを理解していないことが、わたくしは不憫でならないのです」
「ちょっ、勝手なこと言わないでください! わたしは別にそんな――」
「いいえ、あなたは何もわかっていませんよフリージア。ハンゾー様が『まとめて面倒を見る』と仰った意味をくみ取れないのですか?」
「……え? ――あっ」
何かを理解したように言葉を飲むフリージア。
俺は火吹き鳥の肉をかじりながら言う。
「この国は、一夫多妻を特に問題にはしてないはずだ。ふたりとも俺のところに来い。欲しいのであれば子種もくれてやる」
「まあ、ハンゾー様とわたくしの……さぞかし素敵な赤ちゃんが生まれるのでしょうね。もちろん生まれた赤ちゃんは、わたくしが責任を持って育て上げますのでご安心を」
「ちょっとちょっと! 話が早すぎませんかいくらなんでも!?」
「で? フリージアはどうする? 俺のところに来るのか、来ないのか?」
「う、うぐっ……そ、それは……」
「結婚などという野蛮な制度に、俺は少しも興味が持てないが。お前が望むならそれもいい。だが、あくまでも俺の愛情をひとりで独占したいと主張するなら――残念だがこの話はここでお終いだな」
「……うう……あううう……」
フリージアは半泣きだ。
いきなり人生に関わる選択を迫られて、さぞかし混乱しているのだろう。
だがこの程度は乗り越えてもわらないと困る。
この先も俺の隣に寄り添いたいのであれば。
「――け」
しばらくして。
フリージアがやけくそ気味にわめいた。
「契約が! ありますから! わたしがその――ハンゾーのモノになるという契約が! すべてはそこから始まったのですから! その契約を守るために仕方なく! わたしはハンゾーと暮らすことにします!」
「そうか。じゃあそうしよう」
「ですがこれはあくまで仮の! 仮の話ですから! まだ本格的にそういうことになると決まったわけじゃありませんから!」
「そうか。じゃあそれでいい」
「そう、わたしには契約があるんです! わたしとハンゾーとの間にだけある、特別な契約が! それに比べると宰相さまは何の契約もしていません! いわばポッと出の人です! どちらが優先されるべきかは火を見るより明らかです!」
「まあフリージアったら! 一国の宰相に向かってなんという口の利き方を!」
「わたしだって精霊教会では序列三位の精霊騎士です! しかも叔母さまより若いです!」
「ですから叔母さま呼ばわりはやめなさいと言ってるでしょう! わたくしとあなたは七歳しか違わないのですよ!?」
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……言い争いを始めた二人を横目に、俺は食事をつづける。
惚れられた女たちの面倒も、一手に引き受けなきゃならない。
異世界に召喚された忍者の暮らしは、まったくもって楽じゃないのだった。