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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
99/127

ろ組の特訓 16




近田を下げ、


二双の剣となって

川上に向き合う北郷と杉高。




「合わせぇ!新平!!」


「わーってる!!」




北郷が突っ込み、

サーベル、奉国を連ねて突く。


川上はその連突を

身体をクネクネさせて上手く回避、




「また気持ち悪ィ動きを!!」


横一閃、

愛刀、(かさね)を振るうと、

消える川上、



「てめーらの足元は出掛けてるのか?」


「…お留守だぜ!!」



捨て台詞と共に、

太刀の影に隠れた川上の

2人の脛に向けた強烈な水月蹴り。


足が面白いように掬われて、



蹴られたと感じた瞬間にはもう

川上は既にいない。



「上だ!新平!」


北郷は目で追えていたが、

そんなことを言い追えた所で

川上は対応できるような位置ではない。


「ほあちゃあ!!!」



強烈な飛び回し蹴りが横っ面を捉えて


ジャッキーチェンの映画に出てくる

敵役のように

スピンして地面に叩きつけられる杉高。


普通の人間がこれを食らうと

頚椎がねじ切れて

一撃必殺だったろう、


だが

杉高は北郷の声かけで警戒し

回し蹴りに合わせて

首を同じ回転にした事で対応できた。


ボクシングでいう、

スリッピングアウェーというやつだ。




ここまで見て、

近田が思う。




(何故、刀の間合いに、剣の間合いに体術で堂々と入り込める?)


(何故、その間合いで、剣が届かない?)




川上は宇宙なのか?

一瞬浮かんだ壮大な空想を

すぐさま否定しにかかる近田。


「う、うぉおおお!!!」




刀を構え、

飛び込んで行くことで、

否定しにかかる、近田。




しかし、

川上はこの3人だけと戦っているわけでは無い。





「…!!みんなごめんよ!縛れない!!」


汗を垂らし、

目を閉じて手でなにかの印を結びながら、

国母が皆に謝る。


それは甲島もそうだ、



「近田くん達と戦いつつ、川上先生は私たちにも警戒を止めない!」




国母は業、

イロトリオニで川上を捕まえようとし、


甲島は自慢の弓、愛鴨(あいがも)で妖力の矢を放つが、




「ほっ!!」


北郷の顔を掴んで

跳び箱のように跨いで見せ、


多段な攻撃を同時に回避していく。





「…結局、そうじゃねえんだよ」





地下施設の壁に背をもたげ、


腕組みをして横目で

7組の面々を睨む川上。





「てめーら、相手がこう来るだろうから、こう打って、ん、待てよ、けどああ来たらダメだとか、」


「相手の一手の百手先、千手先を読むのは間違っちゃいねえ。」


「だがなあ、そーじゃねえんだよ。」




皆、息が上がり、

肩を揺らして話を聞く。




「おめーらには、そう来たらこうすりゃいいんだよ、っつー大局観みたいなのを考えて欲しいんだ。」


「わかるか?」




手のひらを上に向けて

5人を指したが、


その5人の反応がイマイチだ。




「ああ!!わかんねーかなー!」


2つに縛った長い銀髪の片方を手で払って、


5人に迫る川上。




「手の先なんか読んだって答えなんてないんだっつーの!」


「そんな事考えてるから手が遅れる!」


「戦いなんて練習でやって来たことをする事以外にねーだろうが!」




川上は自らの愛刀、銀銀銀(ぼうぎん)

いきなり出現させ、

鞘から抜かずに

それを肩で担いだ。


「相手が武器出して来たら武器出すだろ?」


「相手がかかって来たらかかるだろ?」


「ああ来たらこうするしか無いっての、あるだろ?それを戦いでやれっつってんだよ!」




そのまましゃがんで、


捨て台詞を吐く。



「ほんとにつえーやつと戦った時なんてな、考えてる暇なんて与えてくれねえ。」


「身体に染み付いたもんで対応するしかねえ。」


「ここまで言ってわかんねえなら、今ぶち殺すし、あとでぶち殺されるだけだ。」




キッと睨まれて、


5人は丸裸にされたような気分になる。




これから戦う、


ひのえやルカ夫人の事を言っている事がわかったし、


今後もそういう敵が現れる事も示唆している。




そして、


今みたいな戦いじゃ、

戦えないという事が、

嫌というほど理解できた。





「おい近田ぁ!!」


川上が怒鳴り、

近田が大きく反射的に返事をする。


すると、

猫のように目を細め、


「てめーの指捨ててワシに打って来たのは、良かったぞ。そう、あの一手はリスクがデケーけどな、そんなん四の五の言えねえ感があったからな、あれは良かった。」


川上はニコリと笑った。





そうだ、

理屈じゃ無い。


攻撃なんてものは単純でいい。


ああしようこうしようなんて、

その場で思いつく以外にない。

準備するもんではない。




「おうおう、その顔、ちったあ言ってる事がわかったか?ボンクラどもー。」




5人も笑い、


川上に向き合った。




「よっしゃ、もういっちょかかって来い!次はぶっ殺す!!」





7組は何か吹っ切れたかのように、

川上へ飛び込み、



死んだ。



だが、

その死一つ一つには全て意味があり、


つまらないものでは無かった。






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