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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
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ろ組の特訓 14





仮想空間の荒れ果てた地は、


その名の通り荒れに荒れて、

来て早々に思った地獄の様相を見せている。





中でも

生き地獄を見ているのは、


顔面を潰された大山だろう。


確かに、

木戸は背中を斬り刻まれ、骨まで見えるほどの深手を負っている。


比村は胸を砕かれ、

呼吸もままならず苦しんでいる。


松田は外傷こそないが

妖力をほとんど使い果たして

全身に激しい疲労感が広がっている。




だとしても、

顔が陥没して

死ぬに死ねない地獄に比べれば


それはまだ生ぬるい。






《残り時間 あと5分》






死んでも現実には影響は無い。


そうは言っても

それに対する恐怖は存在し、

これからも

この光景をトラウマとして抱えなくてはならない。




「うああ、奈緒美ぃ、奈緒美ぃ!!」




木戸が情けなく叫ぶ。


心が壊れそうな位に

大山の痛みが分かるのだ。


なのに

まだ死ねない!

楽になれない!


その悲痛がよく分かるのだ。





比村も考えていた。


あの化け物をナメすぎていた。


ここはレベル10のトレーニングなんだ、

前人未到の

レベル10なんだ。


それを自分がタカをくくって

クリアなどと…




もっと

綿密に、

繊細に

1つ1つ行動していれば

クリアはせずとも

こんな事にはならなかったのか?




「う、うう」


起き上がる、比村。





責任は取る、


緞帳を

震える手で広げ、

纏う。



姿が消える。





(…刺し違えてやる、こうなったらもうどうにでもなれ…。)


(…こんなもの、辛くも何とも無い。大山さんや、木戸くん、松田さん、そして、)


(リカに比べれば、こんなもの…!!!)




のろのろと

渾身の力で立ち上がり、


気配を殺す。




大嶽丸含め、


ここにいる全員がやはり比村の姿を

視認できない。




だが、

比村がやろうとしている事は

大嶽丸以外は全員認識している。





来て早々言っていた事、

それを木戸が、

比村の行動を見て思い出す


「…まさかあの必勝法…をやるのか…!!」





6組、比村にはとっておきがある。


だが、

それはほぼ実戦では実践的では無かったが、


無限に死ねる、

という

このレイドトレーニングならば、


そのとっておきは光り輝くのだ。





だが、

何故それを先にやらないのか?

それには

発動条件でかなりのリスクを伴うからだ。




「松田ぁ!!アレやるぞ!!」


叫び、

木戸も覚悟を決める。




松田も起き上がり、


「…よっしゃ…よっしゃ!!ウチも腹括るわ!!」




大嶽丸は

復活こそしないものの、

目の色を変えた木戸と松田を睨み、


窮鼠猫を噛む

が如く、

警戒し、


《…ぬう。》


目を細めて睨み、

企みを潰しにかかる。





まずは木戸!!


比村はいない、

松田はまだ余力を残しているかもしれない。


木戸が一番重傷と見た!




「…俺に来たか…。」


まっすぐ、

拳を矢に見立てて、


弓に見立てた腕を思い切り引いて

走って向かってくる




木戸はそれを見て笑う


「…本当に馬鹿野郎だなぁ!!!」


「俺はテメェにまた博打を仕掛けようとしてたんだぜ!?」




大山がそれを止めたが、


木戸はいつでも博打を打てるように準備していた。





そう、

既に指の間にはサイコロが3つ挟んであり…





「…賽子嵐(チンチロリン)!!!」




賽を投げる!


出目が出る!




「…すかさずイカサマ!!」


出目を調整!!


そのサイコロ3つ、

大嶽丸も攻撃の最中に確認した。


だが、

もう大嶽丸も立ち止まるわけにはいかない。




そのまま、

出目を待たずに

拳を撃つ!!




だが、

そのサイコロの出目に仰天する!




《ひ!!一二三(ヒフミ)だと…!?》




イカサマをして

敢えて

自滅役の一二三!!


その驚きには立ち止まらざるを得ない!!




そして、


「…へへへ、くたばりやがれ!!」




自らが、

木戸自らの業、一二三竜巻(ヒフミトバシ)

飲まれる!!




「…は、ははは、やっぱ、俺の業は最強だ…」




刃属性を帯びた竜巻が

木戸を斬り刻む


傷から吹き出た血風は

辺り一面を真っ赤に染めて




「…どうせみんな死ぬんだ…最期くれぇテメーの業で死んでやるわ…はははははは!!!」




木戸を

笑い声と共に

無数の肉の細切れに変えた。




【木戸 龍 死亡】




不可解…


大嶽丸は理解できない。


(奴は、イカサマである程度の賽子の出目を調整できる、だから一二三役を避ける事だってできたはず、なのに、)


(なのに、自ら一二三役を受け入れた…)




更に不可解な出来事が続く、


【松田 幾 死亡】


【大山 奈緒美 死亡】




立て続けに

2人の死亡アナウンス。


もちろんこれは大嶽丸の耳にも届いている。




すかさず2人を見る大嶽丸。




《銃、銃を使う女は…瀕死のあの女にトドメを刺して、且つ、自分で自分に引き金を引いたのか…!?》


松田は武器、

安楽死を大山に撃ち、


その後すぐ自らの顔に向けて撃って

事を終えている。






大嶽丸の心がハラハラと慌てふためき、


岩肌のような

皮膚はうっすらと冷たい汗をかいた。





「…。」


姿を現した比村が

ゆらゆらと揺れ、

顔を悲壮で暗くしている。




《な、何じゃ…こいつら、味方を殺し、自ら死を選んだのか…》


比村や、

他の奴らの行動が理解不能、


大嶽丸はとうとう不可思議に飲み込まれ、

尻餅をついて

後退りした。




「…鬼、聞け。」


比村の緞帳が剣の状態から解け、

広がり、


フワフワと宙に浮かぶ。


それはまるで空飛ぶ絨毯のように。




「鬼、お前を殺す準備が整った。」




俯く比村、


その顔のすぐ下の地面に

涙が何度も跳ねる。




「これだけ悲しみが集まれば、もう、十分だと思う。」


比村が何を言っているのか、

大嶽丸にしてみればそれは宇宙、

何も分からない。


「だがもう、こんな悲しみを経験するのも、もう十分だ…。」





緞帳が大きく広がり始める。


その大きさ、

空を包み、

大嶽丸の頭上を越えて全てを覆う。





緞帳引きの幕引き(カーテンコール)…!!」




大嶽丸を緞帳の影がすっぽり包み込み、


そのまま被さって

丸まる。




緞帳引きの幕引き(カーテンコール)は、俺の悲しみが深ければ深いほど、多ければ多いほど、その威力を増し、その場に居るもの、敵味方問わず…」


「何処だか知らない空間に吸い込み、吹き飛ばすんだ…」




大嶽丸からはわかる、


緞帳の真ん中を見上げると、

我々の言葉で言う、

ブラックホールのようなものが


確かに存在していた。




《どうせみんな死ぬ…あの博打小僧はこのことを言っていたのか…!!》





木戸も松田も大山も吸い込まれる、


ならば

自ら死を選ぶ。





「現世じゃ、とても…この業を使うのは、こわくてこわくて…ひ、ひひひ」




とうとう時間が来た。


拍手も何もない、

戦いという舞台のカーテンコール。




遺言を待たずして、


大嶽丸は

緞帳に吸い込まれ、


その存在を終えた。






「…う、うう、何て悲しいんだ…なんて辛いんだ…!!」


戦いを終えてすぐ、

腰を落とし、

子供のように泣きじゃくる比村、


「誰かの犠牲で生き残る事が、こんなに…!!」




【比村 馨 トレーニングレベル10 クリア ホームに戻ります】





ろ組、初のレベル10クリア。


この経験が

比村に教えたこと、それは


そんな辛い思いをしないでも

自分の力だけで

妖怪と戦い、勝つことの重要性だろう。







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