ろ組の特訓 13
大嶽丸を吹き飛ばした大山、
松田の救出に成功する。
だが、状況は芳しくない。
背中を負傷した木戸はとうとう倒れ込んでしまって、
比村も胸に大ダメージを負っている。
松田は妖力をほとんど使い果たし、
残るは、
(あたしだけ…)
武器、努努を握る力が
自然に強くなる。
(あたしが、何とかしなきゃ…)
大山は焦っていた。
「援護頼むぜ」
と
木戸に言われたのにも関わらず、
何もできずに
木戸に負傷させてしまった。
そこからは松田と比村が大嶽丸を追い込んでいる時にも参加せず、
ただ、たじろぐだけだ。
もっと何かできたんじゃないか?
それができていれば、
このトレーニングをクリアできたのでは?
なんて自分はダメなんだ、
そう自責せざるを得ない。
吹き飛んだ大嶽丸がゆっくり立ち上がる、
(何で…!寝てろよ!!)
それを目で確認して
歯をくいしばる大山。
…あたしは、
…龍に偉そうなこと言って、結局何もできなくて、
「…奈緒美ぃ、良くやった…!!」
気づくと
木戸が身体を引き摺り、
大山のすぐそばまで来ていた。
しかしその顔は青く、
戦える状態ではない。
もちろん大山も制止するが、
「うるせぇ…!!」
一喝、
そしてすぐさま、
「…ピンチになればなるほど、命の賭け値は跳ね上がる…」
「…今の状態で、奴ともう、一勝負…してみてぇんだ。」
木戸は死ぬまで大博徒、
命よりも博打を取るという。
そんなバカな発言で頭が冴えた。
フラフラな木戸に
足を掛けてすっ転ばせて、
「…は?あたしに転ばされるような奴がどんなギャンブルできるっての!?」
手のひらで木戸を遮り、
「あんたはそこで見てなよ!あたしの、大勝負を!!」
武器、努努から黄色い妖力が立ち上り、
煙のように
燻る。
大山の剣は妙剣刀術、
長くしなやかな野太刀、
努努から繰り出される美しい太刀筋、
そこに不可思議なほど壮麗な業を目的としている。
先ほどの業、
妙刀もその中の1つ、
しかし、
一の太刀ではさほど威力が無いため、
敢えて間合いを詰め、
リスク覚悟で打ち込まねばならない。
目を閉じて、
感覚を研ぎ澄ませる大山、
「…。」
今の大山に、リスクなどという言葉、
それは
あまりに無粋だった。
大山、抜刀した努努を腰に据え、
突貫!!
迫る敵に
大嶽丸、最後の妖力を振り絞る。
《…人間とは、こうもまあ、弱いくせに、可能性に満ち溢れる、何とも不思議な生き物よ。》
《寝ていればどれだけ楽か…だが、血湧き、肉躍らされるわ…!!》
大山の突撃する速度と相対して
黄色の妖力が全身に激しく広がり、
身体能力を過剰に高める
そして、
地を踏み込み、
有無を言わさぬ、
大連撃!!
1つ太刀を振るうと
すかさず背後に回りまた1つ、
そしてまた横に回り1つ、
1つ、1つ、
1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ…
1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ1つ!!!
一文字の剣閃がいくつも走り、
まるで
黄色い彼岸花、鍾馗水仙のように
大嶽丸の全身に花開き、咲き乱れた!!
業・鍾馗水仙が終わると、
大嶽丸を通り抜け、
腰元で野太刀を回転させ、
納刀。
「すぅ…」
と
呼気を整え、大山は残心した。
そして
大嶽丸の方へ振り返り、
「!!!!」
思い切りのいい、
フルスイングのハンマーナックル。
大山はモロに顔面でそれを受けて
地面でワンバウンドする。
《…ほああああ…。》
擦過傷だらけで
血が流れ、
全身真っ赤、
口から湯気を出し、
白目を剥いてはいるが、
まだ息があり、
大嶽丸は死ななかった。
「…っあ奈緒美ぃ!!」
打殺を杖に
何とか立っている木戸が叫ぶ
人の顔面がこれほど簡単に損壊するのか?
あの美しかった少女の首から上が
目も覆うほどの有様に。
目も飛び出し、
下顎が飛び出て
鼻なぞ潰れて
どこからがそうだったかわからない。
倒れて
大山は何を思う。




