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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
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ろ組の特訓 12




大嶽丸の絶対防御は、

瞬間的に防御力を高める。


松田の大射撃が終わる頃には

その防御が解けて

通常に戻る。




三明の剣は何処かへ飛んで行ったのだろう、


体感でわかる、

自分は

三明の剣の中にはいない。



もう通常通り。


しかし

それを悟られてはならないのだ。





《…うぐっ!!》


大嶽丸を背後から貫く剣、


《貴様…》


比村だった。




剣を抜いて、


「…緞帳引きの舞台稽古(ゲネラールプローベ)!!」


そう呟くと、


斬り!

斬り!

縦横斜に斬りまくる!!




咲き誇る血花、

これには堪らず大嶽丸、


《こ、小町!!来い!!》


木戸の所、地面に刺さる小町を呼び戻す。



すると、

勝手にそこから抜けて


飛んで、

巻き戻しの映像のように

大嶽丸の手の中に戻ってきた。



そこから、

チャンバラ。


よく見ると、

比村の剣は

マントのように使っていた緞帳を丸めたものだった。




比村の縦剣を斧で受け、

手首を回し回転させて

比村の股へ振り上げる


だがバックステップで回避し、

また斜めから

緞帳を振りおろす。


それをまた受け、



「はあああ!!!」



気迫とその剣圧に押されて

吹き飛ばされる大嶽丸。





(な、何、何を、俺様はやっているんだ)


尻餅をつき、

迫る比村に仰け反る大嶽丸。


(こんな、不細工な、戦いを、何をやって)



大嶽丸も、自分の不甲斐なさに情けなく、

自責の念に駆られる。




それとは対照的な比村、


非常に脆さを感じる、

これが先ほどまで無敵だった鬼なのか?


なんて脆い、

まるでスポンジケーキのようだ。





…と、


比村の脳裏をよぎる、慢心。





だが、

そう言った慢心が戦いを一転させる事を

比村は知っていたし、

心がける。


無常に、


絶つだけ。





「死、死ね!!」


横一文字に斬り払った緞帳が、

喉元を断つ。


《…カハッ。》




ざっくりと割れた喉から

血しぶきが吹き出て、

比村の顔が返り血で真っ赤に染まる。





《おおっ…小町…》


小町が大嶽丸の前に立ち、

手を広げて、

比村の剣の盾となって、


従者として、御身を守った。




《あっ、かっ、はっ》


(諦めてはなりません)





小町、渾身のメッセージ。


折れかけた大嶽丸の心を間一髪で繋ぎ止める。





小町、死亡。


そして、

大嶽丸の咆哮が比村を揺らす。




それを見ていた松田、叫ぶ


「アホ!!逃げや!!!!」




脳まで揺られた比村は、


一瞬、動きを止め、硬直してしまった。


そこを

大嶽丸、逃さず




岩をも砕く、

ハンマーのような拳。




比村の

貧相な胸板に思い切り突き刺さり、


吹き飛ばす。





そして小町を抱き寄せて、


《何故じゃ!何故変化を解いた!?》


斧のままでいれば、

比村の剣で死ぬことはなかった。


だが、

それでは間に合わなかった、

小町は決死の覚悟で大嶽丸を護ったのだ。




《何が、三明の剣じゃ…》


《何が無敵じゃ…》




大嶽丸、妖力全開放。


あまりの凄まじさに、

突風吹き荒れ、

4人の身体を硬直させる。





吹き飛ばされた比村、

よろよろと

身体が動く事を確認して起き上がる、


《…ぬう。》


目の前に大嶽丸。



顔を覆う、

その巨体の影。



死、



死を覚悟、

したその時、




「ぉるぁああああああ!!!!」


松田の安楽死!

一斉砲火!!


比村の顔面が潰れる寸前で

その光弾幕が大嶽丸を遠くへ吹き飛ばした。





「比村ぁ!しゃんとせーや!!」


松田は引き金を緩めて、

狙いを大嶽丸に付けたまま

比村の方へ歩く



その比村、

完璧に胸骨が折れて

中でバキバキになっている。


起き上がり、

ミリ単位で身体を動かすだけで

激しい痛みが奔り、

意識がぶっ飛びそうになる。




血混じりの唾液は自然と口から垂れ出て


フラフラと

ゾンビのように地上を漂うだけ。




「木戸も、比村もあかんか…奈緒美は木戸のトコにおらなあかんし…」




松田がなんとかしなくてはならない、


覚醒した、あの羅刹を。




《…ふしゅうう》


全身から湯気が立ち上る大嶽丸。

筋骨1つ1つが汗で艶めき、

より筋肉の隆起を浮きただせる。




「無傷、か…」




ガトリング、安楽死の弾薬ベルトを引き抜き、


違うベルトを挿し直す。




「…まあ、別に関係ないわ。」


安楽死(ペインレス) 内部破壊弾(ホローポイント)!!




一発一発を射出する際に

弾ける火薬の明かりが

松田の小さな顔を大きく、いちいち照らす。


向かったその違う光は


敢えて

大嶽丸を貫かず、


身体に触れ、

留まり、




圧裂。




《!!!!》


銃撃の威力で

身体が揺さぶられ、

まるでダンスをするように大嶽丸は躍らされる。




「これであかんなら心中や!!妖力全て使い切ったるわ!!!」


安楽死の弾は松田の妖力に比例する。


威力に応じて

臨機応変に妖力量を調整するのだ。





…止まらない射撃。


毎分4000発は撃てる安楽死、


それを3分間続け、

撃ち尽くし、


前のめりに松田は倒れた。





「…クソが。」


松田の前に立ち尽くす大嶽丸。





撃たれながらも前進し、


途中、

比村とすれ違ったが、


スルー。



ただひたすらに

ゆっくり、

撃たれながらも前進し、


撃たれながらも、前進!




《……クソは、お前じゃ》


ただ、

大嶽丸も無傷ではない。


血を吐き、

肉を散らし、


右眼と右腕を安楽死に吹き飛ばされている。




残る右足を大きく振り上げて、


狙うは

仰向けの松田、その顔面。




《踏…!!!!》


「努努・妙刀(みょうとう)!!」





目を瞑る松田、


その瞬間、

大山が間に合い、


思い切り大嶽丸の後頭部を長い野太刀で

打ち叩いた!!




そしてまた吹き飛ぶ大嶽丸。




「…はあ、はあ、はあ、」


「…奈緒美…あんた…」





息も絶え絶え、


大山は松田に手を差し伸ばし、

引き起こす。


「奈緒美、来んの遅すぎやで…」


「ご、ごめん。」






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