ろ組の特訓 11
「あの雨は、カモフラージュ…。」
比村の読みは良い線を行っている。
だが、
半分外れ。
大嶽丸の本体はまさに本物、
皆が見ているあの鬼だ。
だが、
大嶽丸の絶対防御には仕掛けがあって、
先ほどの刃物の雨、
あの中に、
顕明連
大通連
小通連
という三振り、
神刀と呼ばれる剣、
三明の剣
と呼ばれている剣が、
雨の中に多数の刃物と混ざりあって降り注いだ。
その三明の剣は大嶽丸を中心として
二等辺三角形を描くよう点在、配置され、
その中の大嶽丸を3点で守っている内は無敵なのである。
その、無敵のカラクリ、
この三振りは過去、現在、未来全てに通ずる神通力を持っており、
攻撃を受ける際、
未来を読み、過去を知って、現在を放つ、
この作業が
やって来る攻撃に対して行える。
攻撃が通じていないように見えるが、
攻撃される場所を先読みして
その部分に妖力を最大限集中させて
防御しているだけにすぎない。
だが、
それで十分に攻撃を無力化できる。
まさに、
絶対防御。
しかしその神通力にはデメリットもある。
1、決められた場所でのみ神通力を使用できる。
2、神通力を使用している最中は既存の自身以外の森羅万象に触れる事は一切できない。(未来を変えるようなことは出来ない、つまり攻撃できないということ。)
このデメリットがある所為で、
やはり神通力のみに頼るわけにはいかず、
自分自身、
二等辺三角形から出て積極的に攻撃を仕掛けていかなければならない。
《………。》
だが、
大嶽丸はまだ焦らず、動かず。
まだだ、
打って出る必要性はまだ、無い。
(俺様は無敵、と思わせるのが味噌…。)
大嶽丸は考える、
何故?
これが人間たちの最大の武器であり最大の弱点と考える。
何故?が強まり出すと、大嶽丸よりもそこに注意や意識が高まって、終いには仲間にさえもそれを向ける。
ましてや、
比村たちには制限時間があり、焦りも積もる。
そこから仲間の崩壊に繋げていき、自滅を狙う。
その為、
絶対防御のカラクリは絶対に知られてはならないのだ。
《破ァアア!!!》
大嶽丸の雄叫びが上がり、
小町が変化した大斧を振り回して
4人を挑発する。
(攻撃が通じないジレンマ、それが攻撃を大味にして、致命的なミスとなる。)
(俺様はそこをただ集中して突けばいい。)
(痺れを切らせ…さあ、早う…!)
【残り時間 20分】
アナウンス、
そして、
「比村、時間が無いよ!」
大山が冷や汗を垂らし、叫ぶ。
それを合図に、
比村、自らの得物、
緞帳をまた頭から被り
姿を消す。
「(大山)奈緒美!松田!!攻めるぞ!」
木戸も比村に続けと、
気合いを入れて、
とにかく攻めると胆を決める。
「わかってる!」
大山も武器、努努を出現させ、構える。
努努は長い野太刀、
普通と違うのは刃紋も何もない事だろうか。
しかし、
大山の隣の松田は躊躇う。
「幾ちゃん!行くよ!?何してるの!」
顎を持ち、
大嶽丸を睨んだまま。
「あれ、ほんまに絶対防御なんかな。」
木戸と大山の足が、このセリフで止まる。
「今、なんもわからん状態で下手に動いても自爆するだけやろ?」
「比村も何か考えがあってどっか行ったんやろ?ウチが飛び出すにはまだ材料が足らんわ。」
そう、比村には考えがある。
大嶽丸の横に回り、
じっと観察しているのだ。
しかし、
その観察には反応が欲しい。
何でもいい、大嶽丸の反応が、欲しいのだ。
「その生贄になってくれ。」
なんて
口が裂けても他の三人には言えない。
だから、
あのような形で飛び出すに至った。
そこには松田はまだ気づけない。
しかし、
それを何となく気づいていたのは木戸だった。
「…俺はな、2度も攻撃に成功した。しかもな、この通り無傷!!」
「材料が足りねえだ?ならその材料、俺が集めてきてやるよ!!」
自分しかできないことが何かある、
それに何となくだが気づいている。
「奈緒美、援護しな。テメーなら得意だろ?」
松田はとりあえず置いて、
木戸は攻める事にやはり躊躇わない。
大山はうなづいて、
木戸を先頭に大嶽丸へ向かう。
「どうやら、よっぽど博打が好きみてえだな!!付き合ってやる!!」
再び、博打・丁半を繰り出す木戸。
分身して2人に、いや、3人になる!
「丁半勝負?いや、手っ取り早くチンチロ勝負と行こうや!!」
業 博打・賽子嵐
「チンチロリンを知らないとは言わせねえ!」
木戸が親となり、分身1人ずつサイコロを振る。
(ションベンは無し)
「6!」
「1!」
「5!」
出目は 6 1 5、役無し、二投目に移る。
それを黙って腕組みして見ている大嶽丸。
やはり
三明の剣で描いた陣内から出ない。
その様子を見た木戸、
「…随分余裕くれてくれるじゃねーかよ、鬼さんよ!!」
また振られたサイコロ。
「6!」
「4!」
ここに来て、
3つ目のサイコロを持つ木戸が叫ぶ!
「よっしゃ!イカサマ発動!!」
6、4と来て、イカサマするとしたらあの出目、
サイコロがクルクル回り、
回り、
止まる。
「…5!!」
6、4、5…!!
賽子嵐の役、無条件支払いの4、5、6が揃った!!
打殺の剣先を大嶽丸に向けて、
「出目合計×3倍!!支払ってもらうぜ!!」
振られたサイコロが妖力となり、
打殺に取り込まれた。
すると、みなぎるエネルギー!
木戸は腰を低くし、
思い切り打殺を振り上げた!!
「派手に破産な!!」
「四五六竜巻!!!」
足元が激しく揺れて
縦に大嶽丸を裕に飲み込む大きな竜巻が現れる!!
その竜巻、竜の爪の如く鋭さを帯びて、
巻き込み、
大嶽丸を宙に吹き上げながら
激しく斬り刻む!!
余りの竜巻の大きさに、
周りの皆も何かにしがみついて
吹き飛ばされるのを堪える!
「破産!破産!!破産破産破産破産破産ぇええ!!!!!!」
木戸は狂ったように笑い、
腕を広げて
大風を大きく身体で受ける!!
しかし、
気づくのが遅すぎた。
"ドカッ!!!"
背中に思い切り突き刺さる斧、
斧、
大嶽丸の武器、小町!!
「…なっ、何…!!」
そうだ、
確かにそうだ、
賽子嵐発動の時点で、
小町はもう既に居なかった…
放たれていた。
放たれた小町はブーメランのように
大きく弧を描きながら飛んで
木戸の背中を狙っていたのだ。
「…えっ嘘」
信じられないのは大山、
木戸の背中を守っていたはずなのに。
更に、
小町はただの斧ではない。
刃の中に更に三枚刃を隠しており、
「ごふっ!!!」
木戸の背中の中で
刃が開いて爆裂した。
ズタズタになった背中の肉から、
血風と共に、
ズルっと小町が滑り落ち、
地面へ高らかに突き刺さった。
《…ふぬう。》
四五六竜巻が収まって、
やはり無傷の大嶽丸が皆の前に姿を現す。
《…所詮、手品、ワシには効かん。》
やはり、
過去を読み、未来を知って、現在で防御を放つ。
三明の剣の中ではダメージを与えることはできない!
大嶽丸が笑い、トドメを刺すべく
そばにあった刀を抜いて
木戸へ歩いて行く、
木戸は膝を突き、
血を流しすぎている、
小町は微動だにせず、
大山は戦意をどんどん喪失していく。
やはり無駄なのか…
「いや、無駄じゃない。」
どこかで比村が呟いた。
それは松田にも聞こえていて、
「ようやったで、ヤンキー。」
2人で木戸の無謀にも見えた特攻を讃える。
比村と松田に分かったことが2つあった、
1つは、
大嶽丸が何かに縛られているようにその場から動かないこと。
先ほどから続く、木戸の攻撃3回全て
大嶽丸は回避せずその場で
無防備に腕を組んで、ただひたすらに受けている。
四五六竜巻のようなド派手な、
誰が見ても超必殺技だとわかる業ですら、
甘んじて受け続けている。
これはどう考えても怪しい。
そこから更に推察したのが2つ目、
分かったこと、と完全に言い切ってしまうのは危ういのかもしれないが、
2つ目は、
動かない理由はその場所にあるという事、
何故そのような考えになったか、
それは…
あの、刃物の雨だ。
一見ランダムに配置されたと思われた刃物が、
実はカモフラージュで、
そうしなくてはならない理由として、
その刃物が刺さっている場所、
又はその刃物自体に
絶対防御のヒントが隠されているのでは?
大嶽丸自体、その刃物を使おうともせず、
相棒、小町をわざわざ飛び道具にした。
細かいニュアンスは違えど、
比村と松田の意思は統一されていた。
ならば、
その疑問を取り払うべくすることは何か…
「…材料が揃たで…!!」
松田がとうとう武器を出す!
「"安楽死"…!!」
そう呟くと、
弾薬ベルトを袈裟のように肩に巻き、
両手でしっかり握りしめ、
松田は長い銃口を
勢いよく振り下ろした。
松田の武器は、
黒光りする、
なんとも大袈裟で、
贅沢なガトリングガンだった。
「比村ぁ!避けな、死ぬでぇええ!!!!」
どこかにいるであろう比村に回避を警告する!
「ぶち散らせやぁああああ!!!!」
始まった壮絶な射撃、
撃ち出された弾は
あまりの速さや熱量で、
いくつものオレンジ色の光弾となって放たれる。
《…馬鹿がぁ!!そんなもんまた防御してやるわ!!》
三明の剣が
現在の時を止める。
静止する世界、
そして
そのまま未来を映し出す。
もちろん大嶽丸を狙っている松田のガトリングガン。
一点集中というよりは、
射撃の反動なのか?
光弾はばらけて通り抜けて行くようだ。
《芸のない業よ…》
大嶽丸は身体全体に強力な妖力を纏い、
防御に徹する。
《とりあえず全身に防御を纏うか!!》
この時、
少しだけ何か違和感を覚えたが、
気にせず、
止まった時をまた再開させる。
時が再び動き出し、
大山や木戸の脇をかすめて
松田の光弾が飛び交った。
《はははは!!!かゆいかゆい!!》
案の定、
大嶽丸の防御を貫通できず、
ガトリングガン・安楽死の弾はどんどん弾かれてしまう。
「…守ったな?」
笑う、松田。
大嶽丸が馬鹿のひとつ覚えのように
防御するこの瞬間を待っていた。
狙いは大嶽丸などではない。
狙いは、周りの刃物達!!!
刺さっていた刃物達は無残にもどんどん砕ける。
弾かれて飛んで行く刃物もある。
大嶽丸が感じた一瞬の違和感、
それこそ、
三明の剣狙いの射撃かも?
だった。
「クソ武器供が!!ぶち散らせや!!!」
銃口を振って、
大嶽丸の周りを跡形もなく吹き飛ばす。
しかし、大嶽丸、
ここで取り乱しては
絶対防御のカラクリがバレてしまう。
大きな声を出して
《何してくれやがる!!このボケアマぁあ!!!!》
と叫んでやりたい!
しかし、
悟られてはならない!
三明の剣は吹き飛ばされ、
絶対防御はもう破られた。
だが、
それを、悟られては…ならない!!
ーー比村 どこかで待機
ーー木戸 瀕死
ーー大山 戦意喪失
ーー松田 イケイケ
ーー小町 木戸の所
ーー大嶽丸 ピンチ




