表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
93/127

ろ組の特訓 10





6組、





《俺様はぁ~鈴鹿山は鬼神魔王っ!!大嶽丸様だぁ!!》



手のひらを見せ、

首を回し、

歌舞伎のように名乗りをあげる。



そしてその横で、


《…私は小町、言います。》


白い着物の女が名乗り、

蛇の目傘を畳んで、

すっと抱き寄せた。




木戸は今にも大嶽丸に飛びかかりそうだが、


「その威勢はこの後存分に発揮してよ…」




比村は先ほどの黒マントで

自分を覆い、


姿形、これっぽっちも残さず

消えてしまった。




6組の作戦はもう既に決まっていた。





木戸、大山、松田で時間を稼ぎ、


闇から

比村が刺す。


即席の必勝法。





そんな付け焼き刃が

通用する相手なのか?


だが、

試してみるだけの価値はある。


比村はそう踏んだのだ。






《貴様ら、名乗りぐらい上げんか。》


《戦いに水が差されるわ。》


大嶽丸は不服そうに腕組みをして、

ヒゲを撫でた。


《今から殺されるモンの、名前ぐらい聞いておきたいじゃろうが。》




木戸は笑って、

冷や汗を垂らす。


「…オッサン、俺は木戸 龍よ!!」


「アンタの言う通りだ!だから俺の名を教えてやった!!」




木戸はヤンキーお得意の、

しやくり上げるガン飛ばしを行い、


自らの得物を出した。




「撲殺刀・打殺(ブッコロ)


釘を至る所に刺した妖力の長い木刀、


手で持つ柄の部分に巻かれた

ほつれたテーピングが血だろうか?

赤く染まっている。




それを肩に乗せ、


「俺に打殺を背負わせたなぁ…オッサン!!」




木戸の本気、


そのまま突撃し、

思い切り振りかぶった。




大嶽丸も動き、


先ほどの剣雨で

その辺に刺さっていた適当な刀を抜いて、


受ける!!




木戸は飛び上がって

前転するように打ち込む


だがそれをいとも簡単に受けて、


薙ぎ払う。




そしてそのまま刀を捨てて、


次はどれにしようか

顔を振って

拾う刃物を探す大嶽丸。




それを見て、


神経を逆撫でされる木戸。





「じょ、上等じゃねぇか馬鹿野郎!!!」




木戸はまた突撃、


しかし今度は様子が違う、




ケイトで言うところの、


(カルマ)を使うか!




「…博打・丁半!!」




木戸が

ブレて見える、


ブレ、いや、違う。

残像が1つ増え、


とうとう二人になり、




分身となって

二人で攻撃!!


しかし、

その向かって左側を

ナイフのように投げた刀で貫く大嶽丸。




「うぐっ…!!」




貫かれる左側の木戸、


だが

すぐに消えて、


「…残念、丁じゃねえ、半でしたァ!!!」


それは本物ではなく分身!





すかさず

甲高い衝撃音!


大嶽丸の側頭部に思い切りめり込む打殺、


クリーンヒット!!

だが、

首すら動かない。





《…蚊にでも喰われたか?》


無傷。

叩かれた頬を指の長い爪で掻いて、

余裕を呟く余裕。



「フヘヘ…」


だが、

木戸も笑む。


「ここからが、博打よ!!」




木戸しか気づいていない事がある。




それは、

足元に振られた、2つのサイコロの存在だ。




大嶽丸、

ここで気づく、


木戸の目線が一瞬切れて、

下を向いたことを。




その下を

自分も見ると、


《…賽子(さいころ)か?》


出目は、1と2…。





1と、2!!


「1・2の、半!!」





そう叫んだ瞬間、


大嶽丸の側頭が

爆発して大輪の火花を咲かせた。





中学が一緒だった大山が木戸の事を話す、



「博打…命と言う種銭を賭けて丁半勝負する。」


「賭けに勝つと、サイコロが投げられて目を決められる。」


「その目が大きければ大きいほど、相手に爆破ダメージを与える業…」




その話を聞いた

隣にいる松田が気づく、


「こ、ここやったら種銭の命、何のためらいもなく賭け放題やんけ!!」





更に大山が、


「命を賭けた瞬間が修羅場な分だけ、ダメージは乗っかるんだよ…!」




まさにギャンブル、

負けても死ぬわけではない、


このレイドトレーニングの為にあるような業!




「…チッ、出目が悪かったな。」


「…まだ無傷ってか。」




爆煙が収まり、


先ほどと何ら変わりのない大嶽丸が現れた。




《…フン、まあ、痛かったぞ小僧。》




また攻撃に移る木戸、


(奴をぶっ飛ばすには…ゾロ目!!)


またボヤけ、

分身を生む。




「さあ!丁半張れや!!」


何となくだが、

大嶽丸は木戸の攻撃を理解してきたようで、


《猪口才な、ならば分身全て薙払ってやるわ!!》





小町に合図して、

大嶽丸は小町のその細い足首を

鷲掴みにして持ち上げる


《はいな~旦那様!》


取り乱す事なく、ブンブンと全身を振り回される小町。




すると、


見る見る姿を変えていき、





《小町は小町でも、斧の小町ってか!!ワハハ!!》


なんと、身長くらいの両刃斧に変化して、


そのまま

つまらない駄洒落とともに

木戸二人を横から一刀両断。


「うわああああ!!!!」




上半、下半を2つに横から分けられ、


木戸は

すうと消えてしまった。




「…だが、外れだ馬鹿野郎。」




大嶽丸の

背後に急に現れて、


また側頭を

今度は後ろから思い切り打殺でぶっ叩く。



そして

すかさずサイコロを振る!




《…イカサマだとぉ??》


「そう…イカサマだ!!」




イカサマ、

木戸の丁半勝負、

分身の丁半勝負はどちらも丁半などなく、



ツボから飛び出したサイコロのように、

急に現れてみせた。





「さぁて鬼さんよ!派手に破産(トビ)な!!」





ここまで来たら出目までイカサマする。


6ゾロを狙ったが、

惜しくも隣面の4ゾロ、


だが、支払いは4倍だ!!





木戸をも吹き飛ばすほどの

猛烈な爆発、


先ほどのしょぼい出目とはワケが違う。





しかしもう、

木戸には手応えでわかる、


今回もやはりダメ!



「…どんな顔面してやがるんだ。」



ましてや、

傷1つつかない!





《…ボファ。》


ただ、

ドリフの爆破コントのように煙を吐いて

大嶽丸はチリ毛になっただけ。




何をしても無傷!


無傷!


無傷!!!





木戸は下がって、


「おい比村ァ!!」


どこかに姿を隠して居る比村に叫ぶ



「ヤッコさん、あまりに硬ぇんじゃ、必勝法も通用するかわかんねぇぞこれ!!」




それは

もちろん比村に聞こえたし、

比村だって

木戸と大嶽丸の戦いを見ていたからわかる。



ため息をつき、

マントをひるがえすと、

姿を現して




「…あの硬さ、何か仕掛けがある。」



比村はこう考えた、


「あの鬼が手練なのは間違いないよね、なのに木戸くんの攻撃を避けない。」


「何が来るかわからない攻撃ほど回避しなくてはならないのに、避けない。」


「何故なら、防御に絶対的な自信があるからじゃない?」




四人は今一度、


向こうの大嶽丸を見据える。




大嶽丸は

腕組みをし、

肩を揺らして笑っていた。





「…その圧倒的自信ってヤツを看破しないと、僕らは、死ぬ。」





四人に迫る死の恐怖が、

啜り音を立てて

徐々に距離を詰めて来ている。




ここで大山がちょっとした疑問を呟いた。




「…何で武器を降らせたんだろ?」



先ほどの

刃物の雨のことを言っている。



「…攻撃?それとも、ありとあらゆる場所から刃物を拾い上げて戦うため?」


「その割には何度も雨が降るわけでもなく、ましてやあの場所からあまり動かず、色々な刃物を試す様子もない。」


「もしかして、その絶対防御と何か関係あるとか…?」





四方無数に刺さって散らばる

刃物たち、


大山の疑問をヒントに、

松田も続く、


「…あの女が斧に化けた様に、あの鬼も本体は武器なんちゃう…?」




逆転の発想だ、


あの鬼の姿こそ偽物で、

本体はどこかに突き刺さる刃物、


だとしたら…

木戸がやっていることは何の意味も為さない。






「あの雨は…カモフラージュ。」


比村は笑った。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=836330751&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ