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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
91/127

ろ組の特訓 8






見た目には分からない

2人の変調。


だが、

はっきりと2人にはわかる。





玉砂利の上を

思い切り踏みしぎり、


同時に飛翔!!




その時、白砂利は舞って弾ける!!




その砂利が落ちきる前に

天狗へ到達、


後頭部を思い切り坂本が刀で叩き、


よろめいた顔面を

土倉が斬り巻き上げる!!




あまりの速さに

動きは動線でしか捉えられず、


2人の跡を

桜の花びらのような妖力だけが遅れて

ハラハラと揺れて落ちるだけ。




渾身の一撃、二撃だった。




《HAHAHA!!!》




まるで無傷!!


天狗の

白目のない瞳が

2人を捉えて、




重力のまま

地上へ戻る事を許した。





そして着地する坂本、土倉。





「…あ、あ、あの野郎…。」


坂本が震え、


土倉が腰の鞘に納刀した。


「見逃された、な。」





敢えて見逃した、のだろうか。


このまま2人をやっつけても詰まらない、

だから見逃した?






どんな理由にせよ、


また侮辱された事は確かだった。






ここで土倉が


「坂本、俺たちどうせ死んでもリスクは無い。捕まえるから、俺ごと叩き斬れ。」


何という提案。


それに、

先ほどの2人の剣は通じなかった、

それは土倉にも分かっているはず。




「って顔をしてるな?バーカ、脳天を割るんだよ!」



これまた無茶な提案。



「まあ、頭を引っ込めれる余裕があんなら、なるべく…俺の脳天は避けてほしいがな。」



土倉は坂本の腕力を知っている。

勿論、それが自分以上だという事を。

そこに賭ける。



折角の原のステータスアップも切れてしまう、

今のうちにやるしか無い。




「俺ゃスイカ割りは大得意だけど、脳天割りはどうだろうな~」


「目隠しが無いだけ、楽勝か~?ワハハ」




坂本が大きな口で豪快に笑う


そんなに笑うことでも無いのだが。




「どうせこれがダメならダメなんだからよ、気楽にいこうや~土倉~」


「応!!」




2人は刀を構えて、

土倉が先に天狗へ飛翔!


遅れて時間差で坂本!!




《策ハ練ッタカ?小童ドモ!!》




天狗も大きな葉団扇を構えて、

迎撃態勢。



「…宙でやるのは初めてだっ!!!!」



向かい合う土倉と天狗、



「鎮撫・虎砲!!」


腕に引いた刀身の背を乗せ土台とし、

回転と妖力を加えて

一気に打突!!


その姿、まさに牙を剥く虎の咆哮の様。




これをそのまま受けるのはまずい、

そう思ったか、

天狗は身をよじり回避、


だがそれこそがまずかった。




「やはり避けたか!!」


「鎮撫・虎爪砲!!」




虎砲の土台となっていた逆の手、

実は

しっかりと腰の二の太刀に添えていて、


虎砲の右手打突が回避された瞬間、


左手でそのまま二の太刀を抜いて

鞘を土台に二の虎砲、



それをそのまま横に薙ぎ払って、


二つの太刀で思い切り横斬り。




それはまるで虎の爪撃のように

天狗の胸板を大きく斬り裂いた。





しかし、この虎砲、


威力が大きく、

相手に背中を見せてしまうほど

大きな反動があった。


それをそのまま見過ごすわけがなく、




《DIE!!SENG!!PUU!!!》




妖力を纏い、

なおかつ原の妖術でステータスまで上がっている、


防御力はそこそこあるはずなのに、


土倉の背中はズダボロに。


バラバラに吹き飛ばされはしなかったものの、

まるで

背中に手榴弾の爆風を受けたような状態に。





だが、それこそが土倉の狙い。





「よう捕まえとった!!土倉ァ!!!」





大旋風、


この技も大威力かつ、


大リスク!!





無防備に

坂本へ背中を向けた天狗が、


その背中で殺気を察知。




振り向いた時にはもう遅い。


ならば、

背中の翼で受け止める!!




天狗は振り向くのをやめ、

翼を思い切り大きく広げた。


だが、

坂本にはそんな防御関係ない。




「関係、無いねぇ!!!」




坂本の刀の柄から飛び出す引き金を

連続で何回も指で引く。


すると

鍔から火薬が爆ぜて、


振りかぶる太刀に勢いをつける。




何度も爆ぜれば、


それはもう滝を真っ二つにするような

勢いが付けられて、





「死にさらせぇ!!!!!」





天狗の脳天に

思い切り

刀の波紋を叩きつけた。


あまりの勢いに、


叩きつけたあと、

坂本自身が空中で何回転もしてしまう、

が、

その勢いそのまま、


何回転も脳天割り。

味噌が吹き出て

汚い花を咲かす!








決着!!!


…いや!?







回転を終えた坂本の足首を掴み、


そのままそれを地上にぶん投げる天狗。


急降下した坂本は玉砂利を舞い上げ、

そこをえぐり、

その下の茶土を露わにするほど

背中から叩きつけられ、

出来たクレーターにダラリと舌を出して横たわった。





「坂っ…!!」


地上に降りていた土倉は坂本を見て、


頭上の天狗を見上げる!




幸いにもアナウンスは無い、


坂本はまだ、生きている!!





天狗も地上に降りて、

翼をゆっくり畳んだ。


《見事ナ一撃、少シ驚イタゾ!!》


《ダガ、頭割ッタ位デ、天狗ニナルナヨ。》




土倉は刀を杖に、

重い腰を上げ、


ふらつきながら立ち上がる。




「チッ…めんどくせぇな、死んどけよバカヤローが。」




座っていた所には血だまりが、

背中が

かなりの大怪我だということを示している。




左手には坂本が倒れ、

背後では原が肩で息をし、


手負いだがやる気十分の天狗が正面に。




「…楽しいね、楽しいじゃねぇかよ。」




土倉がやる、


土倉がやるしかない。





鼻で深呼吸して、


刀をだらしなく持ち上げて、


キリッ

と刀身の波紋を天狗へ向けた。





「どうやったって俺はテメェに勝てねえよ。」


「けどよ、だからって諦めるか?」


「テメェもそうだからここに立ってんだろ?」





万策尽きた、


だが、

背中を向けるような真似はしない。


戦えるなら、

戦える奴が、

戦うだけ。




「撃てるのは一度だけ!!それでいい…」


「それだけでいい!!!!」





天狗は腕を引き、

腰を落として

団扇を振りかぶる。





「鎮撫……虎砲ッ!!!!!」


《DIE!!!SENG!!!!》


「今だぁ坂本ぉおおおお!!!!!」





坂本がクレーターから跳ね起きて、


「土倉ぁ!よく合わせた!!!」





刀先の照準を頭へ付ける


放たれた土倉の虎砲は天狗の肩へ突き刺さり、

動きを拘束、

だがその代償として


大旋風をモロに受けてしまう。




だがもう遅い。




発射された坂本の刀身は

見事、

裂けていた天狗の頭へ突き刺さり、



脳漿をかき混ぜ、突き抜ける。






発射の反動で


坂本は背中から

玉砂利へ落下、


天狗も大の字になってそのまま後ろへ倒れた。





【土倉虎三狼 ゲームオーバー】





一斉に知らされる土倉の死。


だが、

だが、まあこの際いい。


坂本は土倉の犠牲に敬意を払いつつ、

次のアナウンスに

期待を強める。


倒した、

倒したんだから、


早く、アナウンスを!!





【…。】


だが、

アナウンスは一向に流れる気配もなく、


《オ、オゴゴ、オゴェ!!》




天狗が、

膝に手をつき、


ゆっくり、

ふらつきながらも

立ち上がる。



《フ、フハハ…!気分ガ悪イ…!見事ダ!小童ッ!!》




坂本は眉間に指を当て、

頭を振る。


「さっさと死んでくれ〜あんのバケモノ〜」


まだまだ終わらない、

判定決着無しの戦い。


次のラウンドに備え、

坂本もふらつきながら、

刀を鞘に戻して

刃を装填。




すると、

周りがまた桜色に変わり、


負傷した傷や痛みが癒えていくのがわかった。




「え、嘘まじ!?」


背後へ振り返ると、


「妖力が戻りましたよ!」




原が手のひらを坂本に向け、

懸命に

治癒の妖術を放っていた。






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