ろ組の特訓 6
5組、
4人が目を開けると、
四方を塀で囲まれ、
玉砂利が敷き詰められた広い庭だった。
手入れされた松もあり、
正面には立派な縁側がある。
そこで湯呑みで呑気に
真っ赤な顔をして
茶を飲むこのステージのボス。
《来タカ、挑戦者ヨ。》
それを飲み干し、
長い鼻を揺らし
膝を叩いて立ち上がる。
そしてアナウンス、
【ステージ 庭園 ボス 天狗】
面を喰らってしまった。
天狗次第では全滅もあり得た。
なのに、
戦いが始まろうとしてるのに、
まあ呑気で。
更に耳を疑うようなことを言った、
《ユルリト行コウカ、準備ガ出来タラカカッテ来イ。》
長い一本歯の下駄を履く脚を持ち上げ、
準備体操をする天狗。
「ほ、ほほーん、馬鹿にしやがってー。」
坂本が苦笑いをして
上着の袖を捲る。
しかし土倉がそれに首を振って、
「いや、あれは敬意だろ。」
冷静に考えて、
準備が出来たら来いなんて言うことは、
相手の手の内の全てを把握したい、
もちろんこちらも万全の状態で
条件を五分にして戦いたいと言う願望。
「それを、敢えて口に出してこちらに伝えてくる、これ以上の敬意の表し方を俺は知らん。」
そして
この言葉で土倉は口をつぐんだ。
「こう言う奴ほど、シンプルに強い…。」
6組、
血の池が湧き、
針山がそびえ、
暗雲立ち込める雲と地上の間に雷が轟き、
ここが地獄だとすぐにわかった。
そして、アナウンス、
【ステージ 地獄 ボス 大嶽丸】
そして
突然に
その暗雲切り裂く、
豪雨のように降り注いでくる…
キラキラした…何だ、
いや、あれは!!
刃物という刃物!!
刀剣は勿論のこと、
農具である鎌や鍬、
スコップ、シャベル、
忍者が持っているような手裏剣やマキビシ、
鋭く尖ったもの全てが天上から天下へ!!
4人は
上を見上げる。
これくらいならと、
木戸あたりは回避できると踏んで
行動を準備するが、
ほかの3人は何もせずただ呆然としているだけ。
そして頭上に到達する幾千の刃物たち。
「オメェら何やってる!早く避けろ!!」
その刹那、
「皆は僕が…!!」
比村が大山と松田を抱きかかえて、
黒いマントのような妖力で包んで
降り注ぐ刀剣を
弾いて防御した。
「…比村!よし!いいぞ!オラ!」
ようやく刃物の雨が上がって、
地面いっぱいに
さまざまな刃物が等間隔で刺さっている光景が広がった。
そして、
《旦那様、雨が上がりもんした。》
開いた蛇の目傘を閉じる、
着物姿の麗人と、
顔にびっしりヒゲを蓄えた、
羽織を脱いで腰に巻き、
隣に据わる大きな筋骨隆々、
草履でのっそと歩く…
裸の、鬼。
《土砂降りじゃったのお。》
木戸がメンチを切って、
比村が妖力を元に戻して、
奥歯
を
噛みしめる。
とんでもない強さだと
誰にだってすぐにわかった。
そりゃ、
レベル10のボスなんだから当然なんだろうけど、
そういう事ではなく、
あの鬼の一つ一つの所作や
立ち振る舞いでわかる、
細胞が叫んでいる、
早く逃げろと、
隠れろと。
「じょ、上等だコラぁああああ!!!!」
木戸、
切ない咆哮、
それを見て大嶽丸、
《見よれ、小町よ、猿がおるぞ猿が。》
鋭い爪、
鉄パイプのような人差し指が
木戸を指した。
それを見て着物、
口元に細く白い手を置いて
クスクスと笑って、
《旦那様、ありんは猿ではなか、子供にございまする。》
強者の風格、
突然現れた下賤にいちいち驚かない。
「…な、舐めやがっ」
「木戸くん、落ち着いて…やる事をやろう」
静止する比村、
そして大嶽丸の拳ほどの大きな眼を見つめて
「僕らには、必勝の策がある…。」
7組、
「ここは…」
5人は驚きを隠せない。
何故なら、
先ほどいた地下施設に
そのまま辿り着いているのだから。
但し先ほどと違うのは、
誰もいないこと。
…いや、
…その奥から突然現れた。
「よーほほほほぉ!」
5人は目を丸くして、
そいつに話しかける。
「か、川上先生!!!」
「よっ!」
手のひらを上げて
5人に挨拶する川上。
そして、
「レベル10と言えばラスボス、ラスボスと言ったら…ワシだろう!」
長い白衣の袖を捲り、
ズボンの裾も捲って
脚を出して構える。
なにかの武術の型だろうか?
膝を落とし、
肘を相手に向け、
顔の横で拳を作った。
「では、挨拶もこれくらいにして、」
「まずは素手で参ろうか」
そして
5、6、7組の挑戦が始まった!!




