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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
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ろ組の特訓 5





ビープ音が流れ、

冷たいアナウンスが


近田含む、出番を待つクラスメイト達に伝わる。






【神 衛花 ゲームオーバー 1組ホームに戻ります】







そして

レイドトレーニングの扉が光を放って開く。




その光を背に受け、


1組、

4人が地下施設に帰還した。




「ご、ごめんなさい。ダメでした。」


頭を抱えて

近田達や組のメンバーに謝る神くん。




すると、

一緒に出撃した

2組、3組、4組も既に帰還していた事に気づく。


その組の皆は表情が暗く、


結果が思わしくなかった事を表していた。




「神達が一番粘ったか。」


近田が神くんを迎えて、

肩を優しく叩いた。


しかし、

その激励に首を振って、



「いえ、僕がもっと上手くやってれば…クソ。」


神は歯を食いしばって悔やんだ。




しかし、

近田が返す。


「神、何言ってる、お前だけだぞ?」


「やられなかったのは。」



近田のその言葉で

皆の背中に戦慄が走った。















ダイダラボッチに突き刺した刄沙羅、


そこに

ありったけの妖力を込める神くん。


神くんの妖力は普通の妖力とは違う、

心の力、式を操る。



「…はあああああああ!!!!」




面白い事に、

その式の色は真っ黒で、


刄沙羅の周りに

黒煙のような式が燻り、

漂っていく。




刀に式を込める。





この動作に違和感はなかった、

何故なら、

式を色々なものに込める事は慣れている、


人形代がいい例で、


どんどん式が込められていく刄沙羅。




するとその刄沙羅がどんどんダイダラボッチのお腹辺り、

刺さった場所で大きく、

巨大化していき…





「ありったけだああああああ!!!!!!」





もう死んでもいい、

そういう強い気持ちも込められた刄沙羅、





どんどん大きくなって、

ダイダラボッチの陸地のようなお腹を貫通して


裂き広がりながら

ぬるりと抜け落ちた!




「…うっあ…!!」


しかし刃が巨大化しすぎて

神くんが持てないくらいまでになって


そのまま刄沙羅ごと

地上に落っこちてしまった。





《ぬぶぁあああああああああああああああ》





痛みで叫ぶダイダラボッチ。


裂けた腹部を

大きな手のひらで覆い隠し、


神木のような指、

一本一本の間から透明な液体を


滝のように垂れ流した。





神くんは生きていた、


だが、

落下の際に全身を打って

傷だらけ。


最後まで刄沙羅を握っていて

刃が先に地上に当たって

落下の衝撃が緩和されていた為だった。




しかし、

もう何もできる事もなく、


倒れながら、


怒り狂って

暴れまわるダイダラボッチを


ただただ虚ろな目で見つめていただけ。





「…それで時間切れ、です。」


先にゲームオーバーになった3人に

神くんは顛末を話した。


「情け無い、ごめんなさい。」




頭を下げたが、


「そんな話、聞かせないでよ…」


「余計にウチらが情けなくなる…」


キッコとナッコが目を潤ませて、


「…。」


林は何も言えなかった。




キッコとナッコは、

そんな状況なら絶対に神くんを援護できた、




(あたしの鎖鎌で、ターザンロープのようにその巨人の身体を駆け回って陽動できたし…)


(あたしのコケちゃんで神をキャッチできた…壁を作る事だって今なら出来る気がする…)




そう強く思わざるを得ない。




しかし、


林は違った。


「いやいやいや、無理だって!!その、巨人?そんなの無理だって!!」


「神がやられなかったのはたまたまだろ!?俺でさえ一瞬でやられたんだぞ!」


「無理ゲーだって!」




言い訳に奔走し、

相手をイメージすることすらを嫌う。




「ユッキー、何言ってんの」


「超絶引いたんだけど」




林はその発言で完全に孤立、


信用

音を立てて崩れ去り、



ダイダラボッチの圧倒的強さが、

チームを引き裂いていた。






「よし、5、6、7組、行くぞ。」


近田が手を叩いて

出撃を促し、


1〜4組と入れ替わる気だ。




最強の5組、

比村率いる6組、

そして近田含む7組、




全員、

口を合わせたように


自分の得物を出現させた。




「あ、そうか…スタートと同時に襲われる可能性もあるんだ、だから皆武器を最初から…」



つくづく

自分の無計画を恨めしく思う神くん。



「逆を言えば、最初から敵の不意をつけるかも知んないし。」


「ピンチのように見えて、実はチャンス、だよね、うん。」




キッコとナッコも5、6、7組の意識の高さに敬意を表する。




「よし行くぞ!!」


近田の号令と共に

皆が光に包まれ

入り口に吸い込まれた。







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