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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
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一方、

夕食を済ませると出て行った川上先生だったが、


礼服に袖を通して、

とある部屋のドアをノックした。





「失礼します。」


ノックの了承を聞いて、

入室する川上。




そして

すぐに腰を曲げて

頭を思い切り下げる。




「この度は…突然の出来事で、さぞかしお嘆きの事と思います。お悔やみの申し上げようもございません…。」


そして同席する校長、

川上旧太郎も頭を下げる。





相手は岩代リカの両親だった。





両親は椅子から立って、


「頭を、上げてください。」


と、

優しく促した。




父は郵便局員のちょっとした役職ある人で、


母は保険のセールスをしている、

ごく

普通の3人家族だった。



頭を上げて、

川上と校長は俯く。


その目線の先に、

桃色の棺。


白い布に覆われて

静かに時を止めていた。





リカの遺体は

警察各所から清浄会が引き取り、

手厚く葬る予定だ。


「私を含む、教師一同が付いていながら、この様な事になってしまって…。」


いつもの様子とは全く違う川上が、

暗い表情を見せて

ひたすらに謝っている。





そんな川上に

父は手のひらを見せて、


「こういう事がある、それは本人も僕たちも覚悟の上で、この学校にやって来たんだと思います。」


「先生達には何の責任もありませんよ。」


そう言ったあと、

隣の母の顔を見合わせる。



お互いうなづいて、

言い聞かせる、



リカは昔からそうだった、と。




幼くしても魑魅魍魎と戦い続けて


ここにやって来たのだ。





「しかし…」





父が前置きをして、


堪えていた涙線がどっと決壊した。





「子を…子を殺されて!!黙っていられる親などいません!!」


母も同じく狼狽する。


「お願いです!!犯人を探して!!見つけ出して!!必ず報復してください!!!」


「こんな頼み、間違ってる!それはわかっている!!けど…!!!」




とうとう父は

床に膝をついて顔を伏せてしまった。




咄嗟に川上が駆け寄って

肩を触ると、


その手首を強く握って、




「…けど、こんなあんまりなこと…理屈じゃないでしょう…?」















確かに、

この学校に来たという事はそういう事、


覚悟の具現化、可視化である。




リカの妖力の特性上、


からくさ街に行く人物としては的確だと思った。





「しかし、迂闊だった…クソ。」




相手がひのえ、


更にはルカ夫人だったのだ。





職員室に1人戻った川上は


椅子に沈み込むように座って

膝を思い切り叩く。





「…防げた。」







そして


リカと両親の写真だけが

静かに彼女を笑っていた。






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