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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
81/127

長い日 9





天上のフランシスカ、


天下のケイト、





ケイトの鬼化がとうとうボヤけてきた。

霧がかかるような、

煤けてくるような、




近田も気づく!


「晴名!!時間がない!!」





そんな事はとっくの前にケイトだって気づいてるんだ。


ならば、

もうアレしかない。

それも並行して頭にあった。





《いつも、こう。》


《このデカい妖力に頼った戦い…。》


《フランシスカがこんなに強いなんて…。》




またアレを出す事しか考えられなくなっている。


あくまで昨日の、

フランシスカをぶっ飛ばした時は

フランシスカが通常だったからに過ぎず、


自分が強くなった?

そんな事はさらさら無いのだ。




《地力で負けた…強い、フランシスカは。》




現祓のきっさきを

浮かぶフランシスカに向けて、

柄を手の平で押し付ける。




俥にも、

川上にも使ったこの業を

またフランシスカに放とうとしている。





()ぃ…》


()ぁ…》


ケイトが一言ずつ呟くたびに

蒼色の妖力が

きっさきに溜まって大きく膨れ上がっていく。


()ぇ…》


眼を閉じ、

もう何も考えず、

ただ放つ事だけを考える、


鬼羅滅斬(きらめき)


ケイトのとっておき、

(カルマ)





それに

気づくフランシスカ。


ならばと、

こちらも斧を手元で回転、

その先をケイトに向けて、

そこに妖力を集中させる。




紅い紅い妖力、


同じく溜まっては膨らむ、


そして

美しき紅の魔獣は異国の言葉を紡ぐのだ、






《Canciones de práctica técnic trascendente calabaza...》


(超絶技巧練習曲 鬼火…)







しかし

フランシスカの妖力は、

ケイトとは違う形に変化していく。


洗練されればされるほど

その真っ紅な球体は

小さくなり、

バレーボールくらいの大きさになった。




それに気づいたのはいばら、

声を飛ばす!


《ケイト!!馬鹿みたいに妖力をぶっ放すな!!》


《貫かれるぞ!!!》




えっ!何!?

ダメだ、もう間に合わない!


あと一言で

鬼羅滅斬は完成する。





そう、

フランシスカは読み抜いて、

ケイトのとてつもなく大きく、

分厚い妖力の波動に

正面から鬼火をぶつけるわけではなく、


あえて磨き抜いた小さな球、鬼火でそこを貫いてみようという策、




もう間に合わない、

ケイトは

間に合わない!!





()ぃいいいい!!!!!》


きっさきから放出される蒼い大きな妖力、

すべてをその色に染める閃光、


その超大太刀を一つ振るだけで

巻き起こる爆風、

それで他の生徒たちも吹き飛ばされそうになる!





「みんな伏せろぉ!!」


近田が叫び、

皆、

地面に伏せる。


ケイトは天井に向かって思い切り妖力を放出した。


その大きさは東京ドームでいうと何個分になるのか皆目検討がつく人間などいない。




そんな巨大な妖力に

ひるむ事なく、

影も消し飛ぶほど

光に照らされたフランシスカも鬼火を飛ばす!




その鬼火は

光の中へまっすぐ飛んで、

どんどん奥に吸い込まれていった。


しかしここで疑問が残る。

貫いてケイトまで鬼火がたどり着いたとしても、


鬼羅滅斬の巨大な妖力は

フランシスカを

あっという間に取り込んでしまう。




《相討ち…?》


眩い光の中、

目隠しの腕の隙間から

いばらはケイトとフランシスカを見た。


このままではそうなってしまうだろう。




と、

ここでフランシスカは変形する、


そう、

傘を閉じるように羽を畳んで、


あのドリルの形に。




《あれは攻撃の変形ではなかった!》


《あれは、防御か!!》




斧の位置は変形しても変わらず正面にあり、

鬼火を撃ち続けられる。


自分は鬼羅滅斬を防御しつつ。





そしてとうとう鬼羅滅斬と鬼火がぶつかり、


合った!

が、

すぐに針を刺した水羊羹のように

鬼火は鬼羅滅斬を貫き、

分厚い妖力の層をいくつも突破して

一瞬でケイトへ届く。




《えっ》


何かが一瞬蒸発したような音と、


機械的なレーザー音、





そして、

時間差で

光に包まれる空中のドリル形態フランシスカ。





再び壊滅する地下施設。


またケイトの鬼羅滅斬は

川上にいなされた時と同じく、

天井を突き破って

そのまま上空へ、


勢いそのままにまた大気圏外へ飛んでいって

マスコミや新聞を賑わせる事になった。







…それから、


落ち着いたあと、

羽ばたき、

舞い戻るフランシスカ。


もう魔族の形態はしておらず、

ふらふらになり、

少し焦げて

白い煙を上げた身体が

崩れ落ちるように瓦礫の山に着地した。



だが、

膝をつき、

かろうじて倒れることを拒む。



いくら羽で防御したとしても、

この傷つき様は、

逆に防御していなければ、


フランシスカなど消し炭ほども残らないような運命を辿っていた事を

誰にでも安易に示している。





それから現場の人間たちが次々と

瓦礫を持ち上げて存在をアピールした。





だが、

1人、

反応がない。





いばらが叫ぶ


《ケイトぉおお!!!》





瓦礫をいくつも放り投げて

必死でケイトを探すいばらの姿を尻目に

フランシスカは確信する、



勝った、


と。







何故なら、


鬼羅滅斬がバズーカ砲なら

鬼火は一点集中のレーザービーム。


斧の先端に妖力を溜め、

凝縮、

そこからさらに濃縮して


ボールペンほどの太さに出力を変えて放った。






撃ち合いの際、

ケイトはそれに貫かれ、


更には貫かれたままそれを真上に釣り上げられたのだ。


確実にケイトを鬼火で刺して割いた。

こちらだって死んでもおかしくなったんだ、

だから死なせる気で鬼火を放った。

そう言い聞かせて

苦味がたっぷり効いた納得

とやらを

無理やり飲み込む。




《はあ、はあ、はあ…》


そんな中、

四つ足でやっと立つフランシスカは、

明後日の方を向いて、

微かに揺れる

一点の瓦礫を見つめていた。


その揺れは

次第に大きくなり、

それを持ち上げて、



吹き飛ばして

現れたケイト。




《あ、あぁっ!!》


音に気づき、

いばらも叫ぶ





現れたケイト、


貫かれた右肩から出血し、

そこが、

がま口財布のように大口を開けて


右腕と肩が皮一枚で繋がっているかどうか、

激しく負傷した

瞳の輝きを失った姿だった。




だが、

その姿よりも

更に周りを驚かせたのは、

その後のセリフだ、





《フランシスカぁあ…》


《まだだぁあああ…》




よろよろと歩き、

遅くも確実にフランシスカへ迫る。


ツノは片方が折れて、

血も吐き、

左眼も開かないケイト。






《まだぁああああ終わってねえぞおおおお!!!》








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