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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
79/127

長い日 7




いばらも

ましてやあの酒呑童子も恐れる組織、


月下13衆、




この13人の悪魔たちがこの世界を

この地球を

牛耳っていると言っても過言ではない。


神が犯した大罪、

それこそが彼ら、


大罪こそが、




彼ら。















月讀(つくよみ)とは随分会っていないですねえ。百年か、二百年か、どれくらいか忘れる程に。》


作務衣を着て、

未来堂の縁側で

猫叉と並んで昔話をする酒呑童子。



《つくよみ?その、月下13衆の一人かにゃ?》



猫叉の問いにうなづいて答え、


《その旧い友人は、闇に呑まれて変わってしまった。》


《下らない徒党を組んで、三千世界の天井から恐怖を降り注ぐ、なんて下らない、下らない。》




今日の冥界は晴れていて、

二つの真っ赤な月が

まん丸と並んで出ている。


それを寂しそうに見上げ、

酒呑童子は月讀との過去を回想した。





《あの巫女は大丈夫だニャ?》


《…大丈夫ではありませんね。》


《…ケイト様。》














ケイトは昨日と同じように、

生徒たちに囲まれ、

孤立していた。


そして、


《…はああああああ!!!》




鬼羅、

鬼化した。




まばゆい光、

突風が

全てを包み、


《…よし、どこからでも、かかってきなさい》




現祓を敢えて持たず、

四方へ素手の構えを見せた。




これは近田の提案、


「ルカ夫人やひのえを相手にしなければならない俺たちが、晴名相手に太刀打ちできないんでは話にならん。」


「晴名に協力してもらい、稽古をつけてもらうことにした。」




ケイトは申し訳なさそうに頭を下げて、


「あ、あたしも皆さんに稽古してもらうつもりですので…。」


「そんな、稽古をつけるだなんて…はは。」






そして先ほどに戻る。


「鬼がなんぼのもんじゃいいぃ!!!」



先陣は相良あかね!


拳に武器を付け、

殴る殴る!



しかしとっくの昔に

ケイトは回避していて、


相良は残像をひたすらに攻撃していただけ。




《よっ、と。》


足払いをして相良を転がすケイト。


だが、

ただ転がるわけではない。


空中で激しく何十回転もして、

その勢いのまま地面に叩きつけられた。




「…か、は。」


《はい、次お願いします。》




腕組みをし、

自分の出番を待つ近田、

そのこめかみに冷えた汗が伝う。




ならば、

多勢ではどうか?


大石ゆか、辻まみ、

キッコにナッコ、

山岡に清河、


6人でケイトへ一斉に飛びかかる!




飛んできた集団を

見上げて、牙を見せ微笑むケイト。


《はっ!》


まるで

ハエを払うように

手を横へ出す


すると旋風が起きて

6人をそれぞれ壁へ裕に吹き飛ばした。


大の字でめり込む6人。






「…これじゃあ、かませ犬じゃねーか…。」


山岡が呟き、

壁から剥がれ、

地面に落ちた。




「…なるほどな。」


ここまで見て、

近田、

あることに気づく。


それを土倉と沖野に伝える。



「晴名は極力妖力の消費を抑えている。」





そう、

攻撃がいちいち単純で、

挑発にも乗らず、

淡々と対処をする。


「そうして、少しでも鬼化の時間を伸ばしている。」




近田の読み通りだった。


《ふう…はあ…ふう…》


神経を研ぎ澄まし、

集中して

少しでも鬼羅状態を保つことだけ。


ケイトは細かく深呼吸し、

冷静に対処する。




「だけどそれ、本末転倒じゃね?」


沖野が笑って

頭の後ろで腕を組んだ。


「確かにな、せっかく凄い力を身につけても、自由に身動きできないんじゃな。」


土倉も同調、

だが近田は違う。




「それをする為に今苦心しているんだ。自由になる為に。」





単独でも集団でもダメ、


弱いからダメ、


ならば、

強い個の力で…






《…フランシスカ。》


ふらりとケイトの前に現れ、

両手斧を出現させて肩で担ぐ。


《…今日はどうしてもな、むしゃくしゃする。だから、お前に当たってやろうと思うんだが、どうだ?》




フランシスカが笑い、

ケイトも笑い、


手首を上に向け、

何度も折って

こちらにおいでと催促した。




フランシスカは魔の力を解放する。


今までにないほどの

真っ紅な妖力が

小さい身体から吹き出して


フランシスカを包み、

まるで薔薇の花の中にいるかのように、


いちいちの行動に花びらのような妖力がハラハラと舞って散る。




もう魔族、

もちろん瞳は縦に割れ、

牙を生やし、

黒いコウモリのような羽を生やした。




《…あんたもそういう変身できるんじゃん》




フランシスカは羽ばたき音だけをその場に残し、


丸腰のケイトの目の前に現れ、

遠慮なく斧を振る。




昨日とは比べものにならないくらいに

速く、

力強く、


繊細で。





《…やばっ!》


一眼を使わざるを得ないほどに

回避や防御が困難と判断。


フランシスカの背後を取るが、

追撃せず、

敢えて引いて、


《おいで!現祓!!》




刀を出す、

構える。





その時だった、


ケイトが回避した時に居た場所

その背後の壁が

まるで削り出した谷のように


大きく真っ二つになって

時間差で崩れて壊れた。




《…ふん、よく避けた。》




回避の判断は正しかった。

察するに

あの斧にも纏われた妖力が

ケイトの蒼刃飛ばしのように飛んで、


背後の壁を破壊したのだろう。




まだまだフランシスカは終わらない、

始まったばかり、


下がったケイトを追いかけ、

じっとりと、斧で狙う






《こ、こいつ、いつもみたいにがむしゃらでワガママじゃない!》


戦い方、

よく考え、狙いをつけ、

いつもと違う、

冷静によく行動している。




フランシスカの魔族化、

これも鬼羅と同じ、

集中が途切れるとすぐ解除してしまう


アンバランスな力、

だが、

それがフランシスカには却って都合が良く、




神経を研ぎ澄ませているということで、

冷静を保て、

一つ一つの行動に無駄がないのだ。




(このまま鬼ごっこをしてもこちらに利がある、何故なら、鬼化の発動の方がこちらより早いから。)


持久戦で

鬼羅が切れるのを待てるというフランシスカの強み。


だからこそ大きく仕掛けない、

仕掛ける必要がない。





それはケイトにもわかっていて、


(逃げ回るだけじゃジリ貧になってこちらがまずい、やはり…)


迎え撃つ。




地下施設を飛び回っていたが、

踵で急に踏ん張り着地して、


そのまま追いかけてくる

背中のフランシスカめがけて、

大きくなった現祓を思い切り振りかぶる




《読めている!》


それを回避…!


だが、

ケイトがいない!


《こっちだバーカ》


振りかぶった瞬間の転身!

そのまま振りかぶりながら背後をつき、




ぎゃん!

背中を大きく斬り払った!


が、



受け止め、

フランシスカが斬り返す!

背中の、

羽で!


胸を大きく斬り付けられたケイトは

激しく、

駒のように空中で回転して

吹き飛んだ。




フランシスカのその羽は激しく羽立めき、

ゆっくり地面に着地。





《痛たた…。》


斬り付けられたが、

妖力でガードしているため、

ダメージはあるものの、

切れたり出血したりはなかった。


そして気づく、

あのコウモリのような

細く、華奢な黒い羽、


とんでもない、




斬り付けられてわかる、

あれは、


斧、

普段フランシスカが使っている斧、

それと全く遜色ない二体の斧、


前に一本、

後ろに二本、


飛び回る為?

とんでもない、

まるで斧の3刀流で前衛後衛、

隙を全く作らないための羽!




斬られた胸を撫でて、

鬼羅が解けなかったことを噛みしめるケイト。




《…油断した、気をつけなきゃ。》




笑う、ケイト。

フランシスカも笑う。


楽しそうに。





「こんなん稽古になるんかいな」


沖野がつまらなそうに天を仰ぐ。


見せつけられた両者と生徒の差。


「なら…ならないな。」



悔しいのは近田だって同じだ。

青葉にやって来て、

生徒たちの中のエースとして

自分は期待されていたのだ。


なのに、

何もできず、

冷や汗を垂らして鬼と魔の戯れをただ傍観するだけ。


これで、

悔しくないわけがない。




「…。」





悔しくないわけがない。






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