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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
78/127

長い日 6





それからケイトは残りの授業に復帰して


夕方、

酒呑童子に呼び出された。




未来堂(そっち)には行かないよ。」


《ええ、ここで結構ですよ。》




学校の屋上、

夕陽から吹く緩やかな風に吹かれ、


集魂石片手に

売店で買ったあんぱんをケイトはかじっていた。





《ケイト様、悪い事は言いません、月下の(しもべ)と関わるのはやめなさい。》





月下のしもべ?

ルカ夫人のこと?


何故

を尋ねると、




魔娘(フランシスカ)が言っていた事は本当です。夫人(あれ)は手に負える相手ではありません。》


《ましてや、清浄会による報復の片棒を担ぐなど…感心しませんね。》






出た出た、

また酒呑童子の心配症。


「勿論それはわかってるよ。けど、その向こうにはお兄ちゃんも鬼切丸も関係しているかもしれないし、」


《関係しているしていないの話ではないのです。ケイト様の下着が汚い汚くないの話ではないのと同じ事。》




何を言ってんだこいつ


「岩代さんの事はわかんないし、あたしが出る義理もないけどさ、」


「この街、お兄ちゃんが大好きで守ってきた青葉にこんな事を持ち出してきたことは奴らの罪だよね。」




集魂石の向こうで少し沈黙が流れたが、


《なりません。》


頑なに今回のことから手を引けという。




「なら、」


「ならさ、」


ケイトは視点を変えた。


「件の災いの向こう側にルカ夫人がいたらどうするの?」


「見過ごすの?」




未来堂の酒呑童子、

そう言われて

返答に困る。


それを同じく、

猫叉やいばらが聞いていて、




《これは一本取られたニャ》


と、

未来堂の縁側に座る酒呑童子の肩を叩いた。





「とりあえず、やばくなったら逃げるし、やるだけやってみたいんだよね。」


珍しく

ケイトも今回の件は張り切っている様子。






《逃げる?夫人(あれ)からは逃れられないから言っているのです。》


しかし

返す言葉に返す言葉。

酒呑童子もルカ夫人の恐ろしさをよく知っているというのか?


「酒呑童子もルカ夫人と何かあったの?」


フランシスカみたいに

メタメタに痛めつけられたとか?





酒呑童子は少し間を含んで、


《いいえ、何もありませんよ。》


とだけ答えて、


冥土からの通信を終えた。






ケイトは

普段とは違う、様子のおかしな酒呑童子を少し気にしたが、

切り替えて、


「少し練習しとくか。」




屋上の夕陽に照らされた大きな換気口、

その上へ座り、

禅を自分なりに組む。


そして、

鬼に変化する 鬼羅 状態に自分を変えた。




《…ぐ、ぐぐ、》


少しでも長い間、

少しでも、

成って慣れなければ…。



手のひらに自らの妖力珠を成形、

それに凄まじい回転を加えて…


…胸に押し込む!!!





ケイラが何度も失敗したのは、

妖力珠の精度が低かったから。


精度が低ければ体内で取り込んだ時に暴れて

本人を吹き飛ばす。


だが、

ケイトの妖力珠は精度も練度も高い。


その為、

衝撃なしでスムーズに取り込めるのだ。





取り込んだ妖力珠はケイトの体内に巡るいくつもの経絡を駆け巡り、


肉体を活性化、

自分自身を妖怪化させ、


鬼となる。






《…よし、成った。》


ツノが生え、

髪の毛も牙も伸び、


その状態で神経を研ぎ澄ます。




しかし、

鬼羅を維持するのはかなりの業で、


ケイトの集中が少しでも途切れると、

妖力が弾けて

鬼羅が解けてしまう。




体内の珠を

常に胸に置いて回転させるイメージ、


そのイメージを保ちつつ、

戦闘をしなければならない。




《……。》


とりあえず禅のままどれだけ維持できるかが勝負。





すると、

屋上の扉が勢いよく開いて、


「バカタレ!!結界を張れ!」


川上先生が飛んできて

ケイトに飛び蹴りをかました。




勢いよくすっ転んだケイト、

もちろん鬼羅が解ける。


「な、何するんですか!!」



ケイトの怒鳴り声を

さらに上回る声で


「お前こそ何してくれとんのじゃ!!」


「その馬鹿でかい妖力で妖怪どもが集まってきたらどうする!」




あ、ああ、そっか。


川上は腕を組んで

頬を膨らませる。


「ったく、結界の張り方も知らんのか。」





結界を張らないと妖力がみんなに丸見えで、

そこに集まってくる悪い連中もいる、


それは盛鬼やフランシスカ、

俥でわかっていたことだった。




「学校に妖怪が集まってきたら大変ですもんね…。」


「まあ、大変ってか、めんどくさい。」





川上はまた背を向け、

屋上を出る。


「今度、結界の張り方教えてやんよ。」


「修行すんなら、地下でやんな。」





それを見送ったが、


「地下って…めちゃくちゃになってんじゃなかったっけ。」



ケイトも屋上を出る。






「…な、なんじゃこりゃ。」


ケイトの鬼羅滅斬でめちゃくちゃに崩壊した地下施設が、


すっかりそのまま元どおりになっていて、

他の生徒たちが当たり前のように

各々トレーニングに励んでいた。




「よっ、不登校!」


「晴名!」


「ケイトちゃん!」




こ、これは…一体…。


たしかに

崩壊した地下施設が元に戻っていることも驚きだが、それよりも


自分に気づいた生徒達が続々と集まり、

自分を中心に囲んで

輪ができて、



「お互い頑張ろう」


とか


「リカの敵討ちだ」


とか


どんどん奥の方にひきづりこまれて行く。

青春?

という名の沼にズブズブと。




ケイトは自分を取り巻く生徒たちを制止して、




「ちょっと、ちょっと待って!」


「何で普通なの!?」


「昨日、あたし、みんなを傷つけて暴れまわったんだよ?」




すると

奥から先ほどの制服姿とは違う、

ジャージ姿の近田が現れて


「晴名、昨日の敵は今日の味方って言葉がどっかであったろ?あれだよ、あれ。」




とてもじゃないが、

みんなの名前は覚えきれていない。

だが、

どの生徒も自分をしっかり見据えて

笑顔でいてくれている。




「昨日のことは昨日のこと、それに自分でインターンシップとか言ってただろ?」


「ひのえ討伐の為、お互い頑張ろう、な?」


近田はケイトの肩を叩いて微笑んだ。





「晴名さん!」


そして神くんといばらが登場。




「さっきは詳しく聞けなかったけど、何だか大変なことになったみたいだね。」


近田を含む生徒たちに頭を下げて、

ケイトは

神くんといばらと施設の奥の方へ歩き出す。


「ひのえを差し出すには、ひのえがやった証拠を出せって言われたよ。」




いばらが眉をひそめ、


《誰に?》


すぐさまケイトが答える。


《ルカ夫人?誰だろ》


また更に答えると、




いばらの足が止まる。


《ケイト、あんた今何てった…?》


未来堂にいばらがいなかったため、

酒呑童子との会話は知らない様子。


もう一度、

はっきりと、


「月下13衆のルカ夫人!!」




耳を通り抜けた信じられない言葉、

いばらの顔色が

潮のように引いていった。




…それから一言も話さないいばら。







「…そんなにヤバいの?」







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