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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
7/127

リスク




「鼻垂れの青っ尻がもう高校生か」


「行きたい高校にお前を上げれて、お兄ちゃんも一息つけるわ。」


「おめでとう、しっかり頑張れよ。」




高校に入学したときのことはよく覚えている。


あの口悪いお兄ちゃんがやけに喜んでくれて、

スーパーのお寿司とケーキを買って小さなお祝いをしたことを。



《そう、あなた様が勉強をして、学校に行けるのも、全て、お兄様があなたの未来を借りて、現と戦ってきたから。》



眼を閉じて、

右眼に手を当て、

じっと考える。



《件がじきに新たな災いを産む、そうすればあなた様は死に、お兄様とは永遠に会えなくなる。さあ、》


眼を閉じていても牙を見せ、

歪んだ笑みを浮かべているのが声色でわかる。


《…さあ、ご決断を。》


眼を開けて、

予想が的中したことを噛み締める。



立ち上がって、


「あたしにも貸してほしい、その、未来を」


何が何だかよくわからないけど、

うだうだしてても仕方がない。


お兄ちゃんはなんとか生きていて、

自分が死ななければ、

いずれまた会えるなら、


不安でたまらないけど、

こいつらの口車に乗ってみようと思っている。




《いいでしょう、あなた様に未来を、貸しましょう。》



和服男がそう言うと、和服少女に目で合図を出して、


その少女は

件と呼ばれるグラマラスな女のそばへ行った。



《先ほども申し上げましたが、未来の返済は1週間以内にお願いします。》


《災いのレベルが高ければ高いほどに現の魂が必要となる。》


《未来亭 百一文の由来の通り、百文貸したら百に一文つけて返すのがここのルール。》



件のそばへ行った少女は、

件の上着を捲り、


「えっ」


お腹を露わにし、

その膨れ上がる盛り上がりにそっと触れる。



《あの、お腹にいるものこそ災い、今回はかなり大きいですねえ》


件は唸り声を上げる。

苦しそうに、

低く、重く。



《3週間以上産んでいない、大きくて辛いんでしょうねえ。》



そして少女が手のひらを開き、


《災いは…破級、魂は5つってとこだね。》


と、

こちらに呼びかけた。


え、なに?

はきゅう?

5つ?


すると、

和服男がはしゃいで、


《破級!?デビュー戦が現の魂5つで破級とは!ほほ!愉快ですねえ!ほほほ》



追いつけない思考、

何の話をしてるか全く見えない。


《わかってます?戦うんですよ!現とあなた様は!》


《現だって狩られたくない、あなた様を殺しにかかりますよ!》


《戦うんですよ!命を賭けて!ほほっ!》



戦う…

命を、賭けて?


《当たり前です、魂を奪いに行くんですから奪われるリスクももちろんあります。》



災いが産まれたら死ぬし、

その災いを回避しようとしても死ぬの!?


「ちょっと、ちょっと待ってよ!どっちにしても死ぬリスクがあるなんて、聞いてない!」


《今言いましたよ、リスクはあります。》



ず、ずるい

涼しい顔をして、

平気で現実離れしたことを言う


和服男はこちらを指差し、

安心しなさいと言って、



《あなた様にはお兄様の眼があることは勿論ですが、》


《現と、戦う資格が実はあるのです。》





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