脆
腕を組み、
顎に指を添えて
退屈そうないばら。
「…はあ、はあ、なんで、はあ、なんで」
その目線の先、
相良あかねには、
いばらが何人にも見える。
そのいばらにまた囲まれ、
打たれ、
削られ、
「なんで」
《もうやめたら?》
ふふっ
と
優しく微笑む何人ものいばら、
要は、物凄いスピードでぐるぐる
相良の周りを回っているだけ。
そんな状態で一打放てば
それは連撃になるのは必然。
《なかなかいいセン行ってたけど、所詮は素人…》
《実際に、妖怪相手にしたことあるの?》
いばらとて無傷ではないが、
軽傷、
頬を赤くし、
口角が切れたのみ。
屈辱…
悔しくてたまらない相良、
だが、
とうとう身体が悲鳴をあげて、
「…勝て、ない。」
膝から落ち、
うつ伏せに倒れた。
様子を傍観していた神くんと
アイコンタクトを交わし、
いばらも戦いをやめ、
武器をしまった。
「…あの3人、結局生き残りやがった。」
いばらが腕を組み、
見据える先に、
スナイパー山岡の姿。
「…。」
清河もやられた。
「…俺たちの負けだ。」
山岡も武器をしまい、
白旗がわりの両手を挙げる。
そこから2人が視線を移した場所は、
残り5人に囲まれるケイトだった。
敢えてケイトの助太刀はしない。
それは
いばらにはハッキリと、
神くんにはぼんやりと、
お互いに理解していたからだ。
(気づいて!晴名さん!)
(そう、こいつらは…)
…脆い。
構えて、四方へ目を配せる。
どの方向の攻撃でも
対処できるように備えるケイト
と、
ここで
《ケイト様、何をしているのです?》
酒呑童子が集魂石越しに呼びかける。
「何!?今、忙しい!!」
目線はそのまま、
口出し無用と突っぱねるが、
酒呑童子は御構い無し。
《彼らに稽古でもつけてあげているのですか?それなら直ちに辞めてください。傲りが過ぎますよ。》
そんな訳ない!
そんな!稽古なんて!
《ならさっさと済ませて、あの悪魔祓い師と戦うべきです。》
ねぐら、未来堂で
眉間を指で押さえ首を振る酒呑童子。
1分ほど睨み合いが続いて、
ようやく誰かがケイトに仕掛ける。
それを皮切りに2人、3人、と後に続いて、
5対1。
《先程から、何故あなた様はがむしゃらに動くのです?せっかく良い眼があるのに。》
眼?
なんの関係があるの!
振られる武器を交わし、
跳んで避け、
受け、
受け止め、
《あなた様は膨大な妖力の、謂わば、才能に助けられているだけ、だから無駄な動きをしていてもその自覚がないのです。》
《平凡な妖力使いが同じ事をしたらすぐに疲れ切って動けなくなる…》
《…嗚呼!何て勿体ない!!》
手をワナワナ突き出して
歯をくいしばる酒呑童子
ケイトはその助言?
を聞き流している訳ではなく、
しっかり聞いてはいるが、
要点を話さないその内容に苛立つ。
ましてや、
今は攻撃をされ続けている状態、
防御でやっとのところ、
苦言を投げつけられる!
「ああ!イライラする!!」
刀を振って、
5人を威嚇、
後方にステップして
睨み合い、
またこう着状態。
その間、
作った時間で考える、
酒呑童子が何を言いたいのか、
(良い眼?ってことは、眼を使えって事?)
一眼が頭をよぎるが、
(…あれは寧ろ使うな使うなって酒呑童子がうるさいくらいじゃん。)
なら何を?
《鬼羅…》
ぽつりと呟く酒呑童子、
そして続ける。
《ケイト様、稽古をつけた後に食べた、あの粥を覚えていますか?》
沈黙で答えるケイト。
《宜しい、あれは鬼粥、あれをしばらく食べさせて、あなたの体質を変えました。》
えっ!?
何言ってる!?
《あなたはもう立派な鬼です。おめでとう!》
頭に響く、
酒呑童子の拍手と歓声。
「ふ、ふざけてんの!?」
つい独り言のように見える文句が出てしまった。
勿論、
生徒たちに聞こえて、
誰と話してるんだ?
なんて類の疑問をいくつも生ませた。
《というのは冗談ですが…折角いい練習相手がいるのですから、試してみましょう。》
《あの男と戦った夜の事を覚えておりますか?》
もちろん、俥、入人、
嫌な奴。
《あの時、自らの妖力を最大限まで引き出した後どうしましたか?》
…あの時は…。
《…現祓に喰わせた。》
(喰え!喰えぇ!!!)
あの時のことがフラッシュバックされる。
そうだ、
ただがむしゃらに…そうした。
《それを、自らに喰わせるのです。あなた様が、喰うのです!》




