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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
67/127

クエスト開始




1年ろ組


このクラスに入った者はとある特権を許される。





「ゆかー!今日も行く?」


「行く行くー!試験近いし、再来週から本格的になるんでしょ?」




ろ組の大石ゆかと、辻まみが放課後、

地下の剣道場をすり抜け、さらに地下へ。


吸い込まれるように

ほかのろ組の生徒も次々と地下へ降っていく。





剣道場のさらに地下、

そこは大きなドーム状の施設になっており、


妖怪退治のありとあらゆるトレーニングを

無償で受けられるシステムになっていた。




「レベルなんぼで行く?」


「まずは3からだな。」


「5でやろーよー。」


場面は変わり、

仲良し3人組、沖野、土倉、近田が首を回し、屈伸して何かを

大きな扉の前で待っている。



古い石造りの大きな観音扉。


その上に

エレベーターのような目盛り、




1、2、と乾いたシャッター音を鳴らし、

数字が刻まれ、


3、で止まり、

扉が開いた。


その先にあるものは、




なんて事ない、

街の風景。


雑居ビルの群れが目につき、

その下を

車や、信号機が並ぶ。


だが、

異様なのは

朱色の空と、誰もいないことだろうか。




「一番乗りー!」


腰元に

ケイト同様、刀を二本出現させ、

沖野が飛び出した!




それに

お互い刀の土倉、近田が続く。


そして

閉まる扉…。



向こうに待つ仮想のボス妖怪を倒せば脱出できるという、レイドトレーニング。


難易度1から10まである、

挑戦者を飽きさせない作り。




他にも、

色々なクエストが付箋で貼り付けてあるコルク作りの掲示板、


これは青葉市や近隣の街に住む人々の、

妖怪に対する様々な悩みや相談が貼り付けてあり、


清浄会員は自分と相談して

相応のクエスト、依頼に答えるというもの。




見事、クエストをクリアすると報酬が二つ貰える。


現金と、クリアポイント。

このクリアポイントの貯まり方次第で

アイテムや武器などと交換できる。





「まるで、ゲームですね。」


ケイト、神くん、フランシスカ、いばら

4人は川上先生に連れられ、

施設を案内された。


「最近の子はこういうシステムの方がやる気出るしね。」



腕を組み、

自慢げな川上先生。



そこへ

神くんが当たり前な事を聞く。



「凄いのは、わかりましたけど…勿論、下手をしたら怪我したり、死んじゃったり…するんですよね??」



これはケイトも思った。


ゲーム感覚で

自分がしてきたような命のやり取りを?


蕪鬼にボコボコにされ、

ニセ盛鬼に殺されそうになった事が

フラッシュバックする。




「勿論。仮想トレーニングで死ぬ事はないけど、実戦は死が付き纏う。」


なんてことをサラっと言うんだこの人。


苛立つケイト。

だが

御構い無しに川上が続ける。


「けどその代価は支払っているつもり。能力や仕事に見合う代価を。それに納得してもらって初めて清浄会員なのよ。」



頭に来た!


「でも…!!」


と、

ここでいばらが身震えるケイトの肩を抑える。




《考え方を変えなよ、そうは言っても、あんたもケイラも、あたしも、やってる事は同じ。死が付き纏う。》


そう…そうだけど!

倫理観が狂ってる!!

ゲームじゃない!




フランシスカが他とは少し離れて手を広げる。



《ゲーム、くくく、ゲーム結構!》



フランシスカはスマホを取り出し、

何かを眺める。

その顔は液晶で青白く照らされている。



《金はともかく、スキルポイントで交換できるもの、くくく。これはずいぶん魅力的じゃないか。》


表情を変え、

はにかむ川上。


「フランシスカ、あんた要領悪く見えてそうでもないんだね、感心したよ。」


「そう、うちのサイトでそういうの確認できる。入口のQRコードにスマホをかざせば、この施設のサイトにアクセスできる。」




フランシスカはいつのまにかスマホをかざしていたのか…。




《すまほ、みんなが指でカサカサやってるあの板か。》


いばらがアゴに指を置き、

上を眺めた。


「あ、そっか、いばらちゃんスマホ持ってないのか。」



すると川上が

白衣の胸ポケットから手のひらに収まるくらいの黒いスマホを取り出し、

これをやろうといばらに手渡す。




「Sphone、エスフォーンヌ。鬼っ子、これ使いな。」


《いいのか?悪いね》


「使い方はみんな知ってると思うから、教えてあげて。」




そして川上は咳払いをおいて、

わざわざ4人の前に立った。


「さてさて、まあ各々言いたいことはあるだろうけど、改めて問う。」


「清浄会に入るか?どうだ?」




当然の問いだろう。

ましてや、

強制的でないだけ救いか。


フランシスカは迷わず、


《仕方ないから入ってやろう。》


前に出て、

川上をすり抜け奥に行ってしまった。




「…他は?」


横目でそれを追った後、

また3人に視線を戻す川上。




色々考え、

黙り込むケイトに代わり、


《あたしらは現は倒すが、常は拒否する。》



…うん、そうだ。

…酒呑童子や、いばらちゃん、猫のおじいさんみたいないい妖怪だって他にもたくさんいるはず。


そんな人たちを相手にできない。




「それはダメだね。」


「命令次第で常の類も対象になれば参加してもらう。」




口を結ぶ川上、

いばらは鼻で笑って

先ほどのスマホを返した。


《ならあたしは無理だ。降りる。》




川上はスマホを受け取り、


「あら残念。」




残るはケイトと神くん。


ケイトは深呼吸し、


「あたしも賛同できません。失礼します。」


心は決まっていた。

いばらがどうのこうのではない。

もう、

七瀬のような事はまっぴらごめんなのだ。




そして、


「先生、僕もリーダーがああ言ってるので…はは、失礼します。」


神くんもケイトを追いかける。





そしていばらと合流し、

3人並んで出口へ。


その背中を見つめる川上。





…そして、合図。







「この後どうします?道場に寄って行きますか?」


「もちろん!身体を動かしたい!いばらちゃんもいこ?」


《いいよ、それで帰りにかふぇおれをのもう。》




仲良く歩く3人の前に、

施設内の生徒たちが立ちはだかる。



すぐに予感を察知し、



ケイトは後ろの川上をにらむ。


川上は手を振り、

頑張って、と激励する。




「なるほど、拒否したら敵ってことね。」


ケイトは視線を生徒たちに戻す。




その生徒たちの間を割って、


堂々と

フランシスカが参上する。




《初の仕事だ、お手柔らかに頼む。ククク。》


清浄会として、

戦う気だ。






クエスト

清浄会の反乱分子3人を倒せ


報酬

1人倒す毎に

クリアポイント100

現金50万円







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