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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
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川上・アリーシア・晶




「自分は震撼しました。ワザと失敗したという事を、人もあろうに、竹一に見破られるとは全く思いも掛けない事でした…」


生徒が教科書を持ち、朗読。


ある程度続きを読み進めて、

中村先生が止める。


「ありがとう、では次を田中くん、読んでもらおうかな。」




…何故だ、


…何故なんだ!




田中は立ち上がり、

続きを読む。


「…それからの日々の、自分の不安と恐怖。」




何故普通に授業が進むんだ!?

ホームルームであんなことがおきて、

全員同業者で、

フランシスカはめちゃくちゃで、


何故!



ケイトも勿論教科書を開いて顔をそこに向けてはいるが、


心は違う方向を完全に向いている。




「表面は相変らず哀しいお道化を演じて皆を笑わせていましたが、ふっと思わず重苦しい溜息が出て、何をしたってすべて竹一に木っ葉みじんに見破られていて…」





…次の時間もそうだった。


「…軸の方程式はx=2なので,区間-1≦x≦3で考えれば,x=-1のときが最小値,x=2のときが最大値となるね~。」


数学の

千葉先生がグラフを黒板に書いて説明。




ケイトが乱される理由は他にもある。




《ニコニコ》


頬杖をついて笑顔を浮かべ

授業を受けるいばら。




《No convencido...No convencido.....》(納得できない、納得がいかない…。)


同じく頬杖をつき、

ブツブツと独り言を唱えるフランシスカ。




この両者に挟まれる席順になったケイト。




何で隣同士なんだ!!













昼休みになり、

神くんがケイトの元へ。


「や、やあ。」


サンドイッチをかじり、

間抜け顔で。


目線だけをやって、

机にうつ伏せる。



そして立ち上がり、

教室を出るケイト。


どこでもいい、どこかに、行きたい。




「はっ、晴名さん!?」


神くんは追いかける。





フランシスカも立ち上がり、


廊下で待つメイドのマリーの元へ。


《さあさあフラン様、ランチにしましょう。》


《うむ。》





いばらは2人と対照的に、


「ローゼスさん、一緒に食べよ!」


「ローゼスさんハーフ?」


「ローゼスさん可愛い!」


ここまでの休み時間からそうだったが、

何故かクラスの女子に人気があり、

あっという間に輪の中へ。


《あ、あたしお弁当忘れたや》


後頭部に手を回し、

舌をぴゅっと出すと、


「あたしのお弁当食べてよ!」


「ならあたしのも!」


「えーずるい!あたしもローゼスさんに食べて欲しい!」



いばらの机の上は

おかずで溢れる。



《なんか申し訳ないね!》



いばらはクラスが何なのかを理解しているようだ。








ケイトは廊下を走り、


「晴名さん!待って!」


神くんの呼びかけにようやく答え、

止まった。




「晴名さん、どうしたの?」


息を吐き、

尋ねる神くん。


「いや、その、何で!?」


「何でみんな普通に授業受けて、普通にお弁当食べてるの!?」




登校初日はそんな事なかった!

周りがみんな自分と同じなんてなかった!


そんなこと、

知らなかったし!




そしてまた、歩く。

どこへ向かう事も無く、

歩いて、


ただ、歩く。




「晴名さん、驚くのはわかるよ!実際僕もそうだ!」


ケイトはまた止まって、


「嘘つき!知ってたくせに!」


「いや、本当なんだよ!僕も驚いている!」




ケイトに疑問が残り、

神くんの話を聞いた。


「僕ね、みんながああなんだってこと、知らなかったんだよ…本当に。」


「まさか、普通に過ごしてたし…いや、みんな妖力とかそういうのを持ってるなんて…びっくりしてるよ。」




嘘は言ってないように思えた。


神くんは

ケイトから聞いた話を思い出しながら、




「その、川上先生がやってる清浄会、だっけ?その関係で、妖怪退治の選抜クラスとしてうちの1年ろ組は存在しているのかな…」


この神くんの読みは正しい。

だから、

ケイトもいばらもフランシスカも同じクラスにしたのだ。













1年ろ組、32人。


ケイト、神くん、フランシスカ、いばらを除く28名は全員全国から集められた妖怪退治のスペシャリスト達で、


清浄会に勿論加盟している。




有事の際は出撃命令が出て、

適材適所に人員が送られる。





「アリー、今回はちとやり過ぎたんじゃないか?」


校長室に

川上先生と、


校長にして、清浄会の会長、


川上旧太郎がソファに座り、

向き合い、話している。


「編入の件?きゅうちゃん、何の話?」


両の手脚を広げ、

ソファに沈み込む川上先生。




「酒呑童子の使徒をうちに引き入れたのは…此れ…」


「いや、別になんともないよ。なあに、やり過ぎくらいがちょうどいい。」




校長は咳払いをして、


「まあ、まあね、一応我々は秘密裏に行動しているのはね、わかるよね?」


川上先生はうんうんとうなづいて腕を組む。


「周りにもそうだしね、酒呑童子にもね、行動がバレバレな気がするんだよなあ、うん。」




何かあればケイトやいばらはすぐ、

清浄会の怨敵、酒呑童子に報告するだろう。


すると

川上先生は前のめりになり、

校長のネクタイをつかんで、


「バレバレだからなんだっつーのよ」



校長、

これには参った。


「いや、なんだってことはないんだけどさ!ははは!」





全ては予定調和、

川上先生、


川上・アリーシア・晶


全ては、予定調和。





「手駒として考えているよ、ふふん、来たるべき時、その時備えがあればあるだけいい。」





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