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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
65/127

全員起立




事情は誰にもあった。


神くんにも、


「少しでも晴名さんの背負ったものが軽くなるなら、僕は戦う。」


朝、大きな玄関の

大きな姿見の前で、

学生服の襟を正し、

毛くずを払う。



右手にはカバンと竹刀が強く握られていた。







同じく、

この人にも事情が。


軽く渋滞している市内の幹線道路、


詰まる車の中に、

一際輝く長いリムジン。




パワーウインドウを開けて、

舞い込んだ風がふわりと長い前髪を持ち上げた。


「フラン様、落ち着きませんか?」


バックミラー越しに

メイドのマリーが離れた後部座席に尋ねると、


「楽しみだ、学園生活ってやつがな。」




フランシスカは不敵な笑みを浮かべて、

シートの背もたれに身体を預けた。




「カタナの妹、奴をどう料理してやろうか…フフフ、フハハハハ!」


バタンバタンと身体を揺らして

はしゃぐフランシスカ


その姿を見て、


マリーはスマートフォンで連写撮影を開始した。




信号はとっくに青で、

後ろに並んだ車たちから一斉にクラクションと怒号、


けれど、

セレブにはお構いない。


「フラン様!カシャ!美しやフラン様!!カシャカシャ!!」












そのリムジンの横、

歩道を駆け抜けるケイト。


「5時ぐらいまでは眠れないんだけど、そのあとすっごく眠くなるのは、アレ、何なんだろなあ!!」


軽く寝坊して

急いで学校へ向かう。




2時前くらいには準備を終えて布団に入ったのに、


全然眠れなかった。


もちろん、

俥の恐怖もあったし、


休みとは違う学校があるという緊張も、




そして伊達のことも。


「伊達さんに会うのが少し気まずい。」





喧嘩したわけではないが、

強引に好意を断ったことが少し引っかかる。


「何故気まずいんだい?」



すぐ横に伊達。



「うわああ!!!」


驚いて

歩道でひっくり返ってしまった。




伊達は手を差し伸ばし、


「君はいっつも驚いているね。ふふ。」





その手を握って、

起き上がり、


「…いや、その、昨日、せっかく伊達さんに心配していただいたのに、」


「いや、いいですから!みたいに強引に、断ってしまったので…その、」



そして並んで歩く。



伊達はまた笑って、



「全然気にしてないよ。寧ろ、気遣いさせて悪かったね。」




ここでケイトが気づく、


この人は、

学校の制服を着ているが…


ズボンだ。




こないだは道着だったし、

助けてもらった時はジーンズだった。


そして、

ズボン。


上は普通に女子と同じブレザーだけど、

ネクタイも男物で…




「スカートは、ふふっ、得意じゃなくてね。」





目線で気づいたのか、

前もって言われてしまった。


「あ、いえいえ…!」




2人で並んで話をしてると、

もうそろそろ学校に近くなってきた。


遅刻は何とかなりそう。


すると、

他の学生達も現れ始めて、


歩行者用の信号で待ってると、




「伊達さーん!!」


「おはようございます!!きゃー!」


「今日も素敵です!!」





他の女子たちが黄色い声をあげる。


それに対して

作り笑顔を浮かべて

無言で手を振る伊達さん。


なんか宝塚の男役の人みたい。

女にモテる女。

まあ、気持ちはわからないでもないが。






その2人の姿を後ろから見つめる女が1人、


「…アイツ、誰。」












学校に入って、


「まあ、久々で大変なこともあるだろうけど、頑張って。」


「何かあったら何でも言ってね。」


伊達さんと別れて

頭を下げて階段を上がった。




「えっと、ここを上がって…三階の、ろ組。」


※クラスは いろはにほへと で組み分けされる。




すると、

突然

二階の踊り場あたりで、


「はるな、けいと?」




背中から声をかけられた。


振り返り、

応じると、


「あんた、何者?」



巻き髪の可愛らしい女の子だった。




「は、はい?」


見たこともない人、

というか何で名前知ってるんだこの人。


そんなあたしに

詰め寄り、

壁に追い詰めて、


どん、と手を壁へ。



「とぼけんな、あんた誰?部長の、何?」




眉を釣り上げ、

巻き舌でまくし立てられる。


この人、キレてる。


それに部長って言ったな、

ということは、剣道部?




「あ、いや、何でもないです!何というか、知り合いです!」


「単なる知り合いの一年坊主が何肩並べて通学してんだよ!?」



歯を剥き出し、

声を張り上げる。


えーもうちょっとなんなん!


「わかりませんよ!方向が一緒だったからただ歩いてただけですし!」



ケイトもイライラ来始めた。



「歩くな!部長と今後一切!あんた如きが!!」




あとでわかったけど、

この捨て台詞を吐いて消えた女は、


2年の剣道部、


「殿平、ユリさんだね。」



同じクラスの神くんにきいた。

さっきの、巻き髪の人。



「殿平さんは部長を尊敬以上の、崇拝?してるから…かな。まあ、元々キツイ人でもあるけどね。」



それから自分の席に座り、

改めて思う。




「…。」




周りの視線が…厳しい。





一カ月もいなかった、

空席だった席が、

埋まっているのだ。


皆からしたら異様だろう。




「…。」


これも試練だ。

じきに慣れる、はず。




そうこうしてるうちに、

8時半になり、


担任の中村先生が現れた。




「おはようございます。」


号令に合わせて

中村先生が挨拶する。


そして

手を一つ打って、



「今日から皆さんのクラスメイトとなります方を紹介します。」


入って来た引き戸へ手招きをする。



ん?

まさか、いばらちゃん同じクラス?



休み明けに編入となる

いばらちゃんのことは意識していた。




読み通り、

制服を身に纏ったいばらが現れたが、


その後ろ

の光景に目を疑う。





「げ、げぇ!?」





いかん!

変な声が喉の奥から出た!

咳払いして周りへごまかす!


「ではご挨拶をどうぞ。」


中村先生は教壇から下がって降りた。




ざわつく教室。


《Hola caballeros.》(やあ諸君。)



腕組みをし、

顎をツンと上げ、

クラスを見下す。


紅く、

手入れされたロングヘアを手で払い、

ニヤリと笑う。



《私は私で勝手にやる。だから話しかけるな。だが、私に話しかけられれば、返事をしろ。》




フランシスカ・マリア・リア。

ああ、そうだった。

この人もいたんだ。

しかも、同じクラスかよ…。



おでこを手で押さえ、

ため息を吐くケイト。



クラスメイト達は騒然とし、

生意気なフランシスカへヤジを飛ばすものもいた。


《なんだこいつら?人間の分際で。》



しかし中村先生が間に入り、


「静かに!静かにして!」




勿論、

フランシスカにも、


「マリアさん?自己紹介にエッジを効かせる必要は無いのよ?」


と、

クギを刺すが、


《先生だかなんだか知らんが、貴様も私に口を利くな。》



目は鋭く、

口だけで笑うフランシスカ。




あいつ学校に何しに来たんだよ…。

ケイトの頭は益々重くなる。


すると、

フランシスカの後ろで待機していたいばらが、

その肩をつかみ、

後ろへ引いた。


《いつまで喋るつもり?もう下がっていいよ》



そして前へ出て、


《ローゼスいばらです。みなさんよろしくお願いします。》


一礼。




さっきの奴とは対照的な奴が出て来たと、

静かに不思議となるクラス。


だが、

このいばらの行いに、

フランシスカが黙っているわけがない。




《おい、何のつもりだ?死にたいのか?》


いばらが触った肩を埃でも払うように、

手を動かして、

紅い瞳で睨む


だが、

いばらも負けじと、


《常識も何もない奴にあたしは負けないよ》




神くんは冷や汗をかき、

ケイトはこの状況に辟易して、

両手を握って神に祈る。


(あ~!助けて~誰か~!)


すると、

その祈りを…


拾う神、いや、

拾う川上あり。




「やっぱりお前ら揉め事を起こしたか!はは!ウケる!!」


スターン!と教室の扉を引いて、

現れた白衣。


そしてすかさず、


フランシスカに振りかぶってげんこつ。



《なっ!?》



いばらには、しない。




「今廊下で見てたけど、お前、態度が悪すぎる。反省なさい。」


そう言うと、

中村先生に手のひらを見せて、

川上先生はホームルームの続きを促した。


が、


《…ちょっと待て。》





ああ、もう知らない。

ケイトは机の下に隠れた。


《クソ人間共、貴様も、貴様も貴様も、許さん…。》


フランシスカから紅い色、妖力が吹き出て

辺りを照らす。

朝日が伸びているにも関わらず、

まぶしく光る。




《皆殺しにしてやる!!!!!》




と、

フランシスカが身構えたところで、




クラス全員が立ち上がり、


『やってみな!!』


と、

それぞれが携帯する武器を取り出し、

一斉にフランシスカへ向けられた。




ええええええ!!!

もうケイトは驚くしかない!


神くんは顔を手で押さえ、

天を仰ぐ。





収拾がついたのは、

中村先生が教壇をバシンと叩いて、


「…いい加減にしなさい。」


この一言。




そして、


「マリアさん、自己紹介をきちんとしなさい。約束は忘れていませんよね?」


フランシスカに睨みを利かせ、

改めて促す。



それに対し、

詰まらなそうに、

不満タラタラに、

名前を名乗り、よろしくとだけ呟いた。




「なんなの…このクラス…」


従うフランシスカも怖い、

従わせる中村先生も怖い、

それを面白がる川上先生も怖い、


そして、

クラスメイト全員が、


"同業者"


なのも…。







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