天身一体の剣
大穴に飛び込んで、
構え、
俥を視認、
狙う、が、
「…うっ!重い!!!!」
そう、
肩で担ぐ現祓、
妖力を喰いつくし巨大化したソレ、
重くて振るえない!
もう仕方ない、
担いで、
そのまま回転したケイトは、
頭から落下して
俥目掛けて刀を上にそのままぶつけるつもりだ。
俥も
右手のひらを宙を降ってくるケイトへ向けて、
妖力を送り込み
その手のひらをどんどん広げる
「来い!そのまま!なあ!」
かなり大きくなった俥の右手、
その手で包んで
ケイトを握り込むつもりだ!
寸前まで来たところ、
酒呑童子と猫叉も固唾を飲んで見守る
その時だった、
ケイトが感じる違和、
身体が軽くなり、
楽になった感覚!
「えっ、何!?」
急に何故そうなったかはわからない、
だが、
これ幸いと、
プランの変更を急遽かける。
そのまま
横に回転、
無計画な今のままの
軌道をずらし、
俥のやや横でそのまま着地、
「なっ」
何だと!?
そんな言葉を言いかけたのだろう。
そのまま刀とともに俥の頭上に落下、
それは
フェイクで、
「うるああああああ!!!!」
刀は届かずも、
ありったけの力で下から上へ
巨大化した現祓を振り上げる
(あの楽になった感覚、それは刀が軽くなったから…今なら振れる!!)
ケイトの策、
いつも飛ばす剣閃のように
この大量に溜めた
大妖力も飛んでくれるはず、
賭け、ギャンブル。
それは思った通り、
剣先から
どんな街中を簡単に飲み込む大津波のような大妖力が現れて、
俥のちっぽけな存在感を
飲み込んで、
ビルを壊滅させながら爆裂した。
この時発した光は
青葉市全体を照らして
すぐさま街全体を激しく揺らしたのは無論のことである。
ケイトは
大妖力に俥が飲み込まれたのを確認した後、
力つき、
倒れた。
瓦礫が大量に降ってきている。
ここにいれば、
このまま死ぬかもしれない。
だが、
それもまたいいや…
と思いかけたその時、
「大事な部員だ、ここで死なれては困るよ。」
すっと、
自分が抱きかかえられたことを感じ、
そのまま意識を失ってしまった。
この事から、
隕石が衝突したのではないか?
と
市民たちの間で話題となり、
公共機関に問い合わせが殺到する。
その後、
ケイトはそこから離れた場所で倒れていた。
あれからどれだけ時間が流れたか、
あのまま
あそこにいれば、
潰れたビルの瓦礫に飲まれて
無事では済まなかったであろう。
「…う、うう。」
起き上がり、
全身の痛みを迎える。
「あっ!ぐっ…!!」
どこもかしこも痛い、
また倒れる。
「…無茶を、したね。」
倒れながら横を見る。
すると
風に長髪を吹かれた伊達がいた。
伊達も地面に座り、手を置いて後ろに寄りかかっていた。
「…伊達さん、なんで…。」
と、
同時に、
伊達に助けてもらったことを確信。
本当に偶然だった。
学校の帰りに
風俗街を通りかかった伊達は、
結界が大妖力で破られた瞬間、
ケイトの妖力に気づき、
現場へ。
すぐさまケイトを見つけて
人目を避けながら
かなり離れた海浜公園まで運んできたのだ。
「誰かと、戦っていたの?」
問う伊達。
「…なんか、わからない人と。」
伊達は爽やかに笑って、
「わからない人にあんな妖力をぶつけたのか?ふふっ、面白いね君は。」
そして伊達はそのまま視線を
暗闇の海に戻す。
「だって、本当にわからない、人だったから…」
やはり、
起き上がらなければ。
無理矢理体を起こすケイト。
「大丈夫?」
伊達も支える。
「すみません、ありがとう。」
ここでケイトは疑問をぶつける。
「伊達さん、なんで助けてくれたの?」
当然の問い。
あの時、軽くなった。
絶対振るえない重さが、
急に。
そして、タイミングが良すぎる救出。
伊達じゃない訳が見つからない。
「私が、助けた?いいや、それは違う。」
「剣は天身一体。君が望めば天が力をくれるよ。」
?
よくわからないが、
まあ、助かったことだしよしとしよう。
…助かった?
…それは違う。
「仕事の結果はともかく、仕事の後のコーヒーは格別に美味い。」
すずっと
いつものマグカップを口に当て、
啜る。
そしていつもの机に
ブーツをどんと置いて、
「…邪魔をしやがって。」
俥は伊達の存在に気づいていた。
あの後、
ケイトに追撃もできたが、
さすがに伊達もいると面倒なのは必然。
「まあ、いい。じっくり、じっくり。」
青葉署0係、
俥 入人は何を思う。




