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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
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現と常と


《…そう、あなたのお兄様は、身体を奪われてしまっただけ、まだ生きております。》


牙の和服男の顔が戦慄色に染まっていく

この先の話を聞きたくない気持ちでいっぱいになる心、だが、


欲しい、

欲しがってしまう。

耳を閉じてしまえばいいのに、

身体はそれをしない。



《お兄様、ケイラ様は身体をバラバラにされ、うつつのものたちに奪われてしまったのです。》



何を言っているのかさっぱりわからない、

けど、

あのリアルな眼球を見てしまった以上、

本当のことを言っているのかも

と、

錯覚をしてしまっている。



《単刀直入に、申し上げます。》



和服男は目の前に迫り、

腰が抜けてしまったあたしの上に影を作った



《お兄様に会いたいなら、わたくしたち、とこしえのもの達に協力しなさい。さすれば、お兄様と会える日が来るのは明らか。》


どんどん顔が近づき、

もうあたしの眼前まで来ている。


《この続きを話すには、あなたの承諾が必要です。》


《さあ、》


《ご決断を》



あたしは尻餅をつきながら後ろへ下がる


だが、

和服男もそれに合わせてすり足で前へ



「わっ、わかった!わかったから!」


止むを得ず、

この表現がしっくりくる。

強引に合意してしまった。



《そうですか、では早速》



和服男は、

例の眼球を握った拳をあたしの顔に近づけて、


「えっ」


顔半分にその拳がズブズブと入っていく


《あなたの右眼を、ケイラ様の、お兄様の眼球にまずしておきましょうか》


「えっわっ、えっ…」



信じられない

漫画みたいな話、

いや、こんな気味の悪い漫画なんかないけど


右側の視界が一瞬なくなって、

また復活する


この時だろうか、

右眼が兄の眼に代わったのは。



《うつつのものたちは現代社会に溶け込み、力の無いものたちには見えません。この、ケイラ様の右眼でそれを見るのです。探すのです。》



和服男はあたしの顔から手を抜いて、


これでよし、なんて息を一つ吐いた。



《どうです?特に変わったことは無いでしょう?ましてや、肉親のパーツ、よく馴染むはずです。》


顔を触って何度もまばたきをしたが、

変わった様子は無く、

それがかえって不気味…



そろそろ立ち上がって、


「なんなのよ…なんなのよ!?説明してよ!訳がわからなすぎて、あたしは…」



涙が出てきた。

もちろん右眼からも



《また泣かした》


《またわたくしのせいでしょうか?》




それから和服男の説明が入った。

100説明してくれたうちの10くらいしか理解できなかったけど、

落ち着くには十分な数字だった。



今の日本には妖怪がいて、


(うつつ)のもの、

そして

(とこしえ)のもの、


この二種類がいるということ。



こいつらはとこしえのもので、

昔からこの国に存在した妖怪たち、


逆に、うつつのものたちは最近現れた妖怪で、

現代社会に溶け込み悪さをし、

とこしえのものたちをも排除しようとしている。



兄はそんなとこしえのものたちと共に

うつつのものたちと戦っていた。


それは何故か?



《わたくしたちはお兄様にとあるものを貸していましてね、その返済こそがうつつの魂なのです。》


とあるもの?

もちろん問うと、


《あなたの、未来です。》


そう言って

和服男は和服少女に合図した。



それを受け、

和服少女は石階段を上がり、

杜の扉を開く


《彼女は(くだん)と言う妖怪です。ありとあらゆる災いを産む妖怪、何もしなければ災いを産み出し続け、この世をめちゃくちゃにするでしょう。》


大きなソファに寝転がり、

虚ろげな顔をして

ため息をつく女の人がそこにはいた。


《件の災いを止めるには、うつつの魂が必要です。お兄様はそれを必死にかき集めていた、あなたの未来を守るために。ほほほ。》



半分何を言っているかわからなかったが、

もう半分は理解できた。


また涙があふれた。





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