やっつけられ仕事
青葉台高校剣道部、
3年生10名、
2年生20名、
1年生30名、
計50名、たまたまキリがいい数字なだけである。
そして顧問は川上先生、副顧問は山岡先生となる。
現在の主な経歴として、
全国高等学校剣道大会予選、
男子個人出場、
男子団体出場、
女子個人出場
女子団体出場…
予選すら突破できず、
表彰台や入賞は夢のまた夢の話という現状。
「何で!?」
ケイトのツッコミが炸裂する。
「伊達さんみたいなのがいたら、団体はともかく、個人は余裕で全国優勝でしょ!?」
学校帰り、
こないだケイトといばらが立ち寄った美味しいカフェラテ屋さんに
神くんとともに3人で集まっていた。
「そうそう、そうだよね。そのツッコミはわかるよ。」
「けどね、」
神くんはケイトといばらに顔を近づけ、
指を立てて笑った。
「うちの剣道部は高校生の大会を目的としていない。」
「他の学校には凄く失礼な話かもしれないけど。」
どういうこと?
いばらはそんな2人を尻目に
砂糖がザバザバのカフェラテ三杯目を飲み干した。
「本人が望めば大会に備えてエントリーはできるよ。けど決して伊達部長は勿論、他の強い先輩方はエントリーしないんだ。」
青葉台高校剣道部、
その謎が明らかになる。
「…うちの剣道部は、要するに私設の軍隊さ。」
神くんはここから真相に迫る。
「ローゼスさんが武道場に来た時のセリフ、清浄会、これでピンと来た。」
「清浄会、妖怪専門の戦闘集団、その活動を目的としかしていない。」
「実はね、ローゼスさんが編入って話、僕は可能だと思ってたんだ。なぜなら、何人もそういう部員がいるから。」
…いや、いいんだけど、
…いいんだけどさ、
…ちょいちょい挟まるローゼスさんってパワーワードが気になる。
「…神くん、いばらちゃんて呼ぼう。」
《え、何で?あたしはいいけど。》
そしていばらはカフェラテの四杯目を注文する。
「って、さっきから飲み過ぎだから!!」
またあたしに払わせる気か!
神くんはさらに続けた。
「部活の練習は熾烈を極めるよ、実戦に近い事をバンバンやらされる。」
「けどそれでいいんだよね、だって戦う相手がその、妖怪?だから。」
「伊達部長との試合を望む全国の猛者達もやって来るんだよ?」
川上先生の操り人形、
青春を殺し、
妖怪を殺す。
それがこの剣道部なのか?
本当にこんな変な剣道部に入っていいのだろうか…。
ケイトの不安はますます募る。
《それはともかく…》
カフェラテを飲み干し、
ケイトを睨み、
おでこを指で突くいばら。
《あんた、忘れてないよね?現。》
…あっ、
…その一言で思い出した。
「わ、ま、勿論。」
《…ならいいけど。》
完全に忘れて、
思い出して焦るケイトへ、
いばらが何かを机に滑らせた。
《ご馳走さま。今日は私が。》
いばらが渡したのは、
一万円札。
《じゃ、また。》
驚くケイトと神くん。
現狩りを念押しして、
いばらはどこかへ行ってしまった。
「…いばらちゃん、えっ!?お金持ち!」
「ローゼスさん!お、お釣りは!?」
けど、まあ、
いなくなったんで…
「お釣りはあたしが預かっておくよ。」
「僕もご馳走になっていいのかな?」
…こないだご馳走したんだから、
今日は…いいよね!
「…って、ふざけんな!!」
おかしいと思った。
やけに気前がいいと…。
いばらが渡した一万円札は
時間が経つとすぐに手のひらに収まるサイズの木の葉に戻った。
「なんかそういう術、かな?晴名さん、やられたね。」
何笑ってんだよコイツ…。
自分の分しか払わない癖に!
店を出て、
手のひらから現祓を飛び出させる
「ちゃちゃっと狩って、ノルマをこなす!」
現狩りでウサでも晴らすのか?
今日のケイトはやけに乗り気だ!
すぐ神くんと別れて、
夜になる夕暮れの街に飛び出した!
と、
同時に、
ケイトの妖力が
奴のアンテナに引っかかる。
「…本命が、動いたか。」
部下のパトカーから降りて、
トレンチコートの背筋を伸ばす。
「ここでいい、ありがとう。」
俥、謎の刑事。
人が溢れた繁華街の渦に消えていく。
「…さて、ちゃちゃっと仕事だ。」




