ローゼス!
川上先生はニンマリと笑って、
綺麗な幼い顔を崩して歪めた。
「頭を上げなよ、鬼っ子。」
「あんたみたいなツワモノに、頭を下げるなんて格好悪いことさせちまって。」
「あたしのほーこそ、すまなんだ。」
いばらよりも低い位置で頭を下げる川上。
そして
すぐ頭を上げ、
「あたしゃ大歓迎だよ、なんとかしてみよう!」
と、
小さい胸をどんと叩いて、
「なんとかする!」
なんで!?
なんでなの!?
ケイトはたまらず2人の間に入って、
「だって!なんで!?先生達はあたし達の!」
清浄会は鬼や妖怪を始末する集団なのに!
「学びたいと願う者に、何者だとか事情は関係ないだろうよ…だってよ、」
「…ここは、学び舎だぜ?」
天井へ人差し指一本突き立てて、
川上先生は優しく笑った。
…そこから川上先生は早かった。
あたし達3人の前で
ありとあらゆる方法を使い、
どこかに電話をかけたり、
書類を書いたり、
なんだりかんだりで…
「よし、ようこそ青葉台へ。」
合法的に無理矢理、
いばらを転校生と言うことで
学校に編入させてしまった。
握手を交わす川上といばら。
「あ、そうだ。苗字が必要だったから勝手に付けさせてもらったよ。ここでのあんたの名前は…」
「ローゼスいばら だぜ。」
…。
…何かの悪い冗談なのか尋ねた。
「冗談?とんでもない、大真面目。」
「鬼っ子、あんたの苗字はローゼスだ。」
「苗字が無かったら変じゃないか!なあ?」
なあ?
なんて、手を広げられても。
《まあ、確かに苗字が無いのは変だ、な。》
腕を組み、
細かくうなづくいばら。
なんでだよ!
そもそもの苗字が変じゃないか!
「なんで苗字がカタカナなんですか!」
「えっ、カッコいいじゃん」
アホすぎて議論にならない。
それに
なんでいばらちゃんは何にも言わないのか。
神くんはどうか、
目を向けると、
「ではこれからローゼスさんって呼べばいいですか?」
何故!
何故そんなすぐに受け入れられるんだ!?
何、
あたしがおかしいの!?
何なの!?
誰か来てくれ!
「じゃ、ブリリアントいばらでも良いの!?バルサミコいばらでも!?」
あまりにこだわるケイトが面倒臭いのか、
川上は白い目で
「…本人が良ければいいんじゃね…。」
何であたしが頭おかしいみたいな空気になってんの!?
「晴名さん、バルサミコって酢じゃないですか!」
いや、そのツッコミ違う!
それじゃない!!
《自分がカタカナじゃないからって、ケイト…そんな言うなって。》
ポンポン、
肩たたき。
…もう、いいや。




