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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
54/127

乱取り




ケイトの顔をまじまじと見つめ、

顎に手を置く川上先生。


「なーに、あたしが顧問でなんか不満でもあんの?」



げっ、

顔色がその色をしていたのか、

気付かれてしまった。



「いえ、そんなことは…」


と、

咄嗟に茶を濁す。

嫌なわけじゃないけど、

大丈夫なの?とは思ってしまった。

それは事実だ。




「まあいいや、ようこそ青葉台剣道部へ!」


川上先生は

ケイトの手を持ち、ぶるんぶるん振り回し、


「入部希望者!新しい可能性!希望!いつになっても胸躍りますなあ~ふほほ~」




かなり激しいハイテンション。

温度差が本当に激しく、

ついていけないケイト。



「ほっ!ほっ!ふほほ!」


「えっ!ええっ!なに!?」



川上先生の長い銀髪は乱れ、

素足をバタンバタンさせて

跳ねる、舞う。





「ちょっ!」


「待っ!」


「見学!」





御構い無しにおどける川上先生に向けて、


伊達が割り込み、


「先生、晴名さんは見学で、入部希望ではありませんよ。」



そして

一礼して下がる。



それを聞いて、

動きをピタリと止めた川上先生。


「見学…だけ?なんでだよ、寄ってけよ。」


うっ、

顔が近い。


キラッキラな大きな緑の瞳、

初めて見た、

いや、そんなことはどうでもいい!


照れる!


顔を背けるが、

腕を掴まれて、身動きが取れない。

離れられない!



「いや、まあ、その…ちょっ、離して下さい。」



そして、

急に離す。



「うわっ!!」


ドテッと転んでしまった。

なんだこいつ!!

急に離すなよ!!



「ソラ、こいつ強いよ?みすみす逃すのかい?」



尻餅をつくケイトを指差して、

腕組みをする川上先生。



伊達も同調する、


「それはわかっています。ですが、」


が、


「それは個人の自由なので。」


凛々しく笑った。




何であたしが強いとか、

それはわかってるとかって話になるんだ…。




ここまでのやりとりを見た神くんは、

たまらず声を上げた。


「晴名さん!」


「その!僕としては、川上先生と同じで!」


「晴名さんは、入部した方がいいと!」




…ケイトはゆっくり立ち上がって、


「…なんで顔が赤いの?」




寒い目で神くんを見つめてしまった。


「あ、いや、顔が、あれ?顔が赤い!?」


腕を目の前で振って、

激しく否定する神くん。





ここで、


《ケイト様、折角です、試して見ては?》




酒呑童子!

やはり見ていたか。

向こうから呼びかけてきた。


一応

集魂石は肌身離さず持ち歩いていて、

聞きたくはなかった声ではあるが。



ケイトはとりあえず

それには答えず、

目を閉じ、

少し考えた。


(まあ、目的は強くなることだし…)


(伊達さんも、川上先生もわかった、)


(2人はめちゃくちゃに強い。)




よく、達人は立ち振る舞いを見ればそれが贋作か否かがよくわかるというが、


川上先生と手を取り舞った時、


わかってしまった。




この人も、めちゃくちゃな強さだと。




「あたしは、その、流儀も何もない、我流ですが、」


「それでも良ければ、」




眼を開き、

伊達と川上先生をにらんだ。


「見学…ではなく、」


「是非お手合わせを。」





曇っていた川上先生の顔が見る見るくしゃくしゃに晴れ渡り、


「…よ~っしゃ!伊達!乱取りじゃ!」


「神!竹刀を貸してやんな!」




神くんは返事をして、


ケイトに自分のを手渡す。




「思い切り!打って!!」


「部長は強いよ!」




ケイトを信じ切ったまっすぐな瞳、


決闘するわけでもないのに…

少し困ったが、


うん、

なんて力なくうなづいて、



竹刀を握った。




「…ん、重い。」


いかに

普段から使っている現祓(うつつはらし)が軽いかがわかる。




くるりと剣先を回して


伊達に向ける。




「中央に、来て。礼は無くて…」


伊達の呼びかけに応え、

そこへ寄り、

ケイトは手のひらを見せる。


「礼はします。立ち合っていただき、ありがとうございます。」



深々と礼。


すると伊達も少し頭を下げて、


「礼には及ばないよ。」



そしてお互い、

腰元から、抜く。



「乱取りだ、作法を気にせず打ってきなさい。」



まっすぐケイトを見据える

伊達の鋭い眼差し、


ケイトは少し緊張したが、



いつも通りを心がける。

いつも通り、


いつも通り…。






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