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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
弐の章 蒼い春
48/127

動き出す街




原因不明の青葉大火災は、

突然火の手が上がり、

突然その火が消えてしまった事で収拾した。



30名の犠牲を出した謎多き、大火災。

マスコミは連日連夜、全国へ報道を続け、

政府や警察、関係機関等はその対応に追われた。








「妖怪どもめ。」


この大火がその者達の仕業だと理解している者も、中には当然いるわけで…。











青葉市の警察本部、

青葉署。


ここには普通の警察署には無い部署があった。


公にされない、

秘密の部署、0係。



そこを仕切るのはこの男、




「…千鶴さ~ん、コーヒーまだ?」


だらしない私服姿、

ネクタイは巻いているだけ、

髪もボサボサだ。





青葉署の資料室の更に奥、

昭和の時代から使われなくなった、

博物館のような雰囲気、

書物や資料で乱雑になったその部屋こそが、


0係、

正式な名称など無い。




「ほんとに…毎日毎日10杯も20杯も飲んで、このカフェイン中毒者!」


だん!

机に置かれたコーヒーカップは緑色。


少しこぼれた。



「その罪は僕の罪じゃ無い、美味すぎる千鶴さんが淹れるコーヒーの罪だ。」



ありがとうと頭を下げて

音を立ててすする。



この男、

(くるま) 入人(いると)は何かに目を通していた、


それは、

先日の大火、


それの報告書。




「…ふふ、興味深いね。」


火災の原因?

範囲?

損失?


この男にそれはどうでもいい事、

注目したのは…




「…現場近くで発見された男子高校生、軽度の火傷と右肩に重度の裂傷…ほう。」


ブラックコーヒーをまた飲み終えて、


「千鶴さ~ん、おかわり~」


とまたコーヒーをねだる。




その図鑑のような報告書を閉じて、

机の上に肘を置き

手を組む。


「青葉台高校、1年ろ組、(じん) 衛花(えはな)…か。」











数日経って、

神くんは病院を退院した。


「…神くん。」


大きな総合玄関を出ると、

ケイトが待っていた。


「あ、晴名さん。」




神くんは顔に大きな絆創膏を貼り、

三角巾に包まれた右腕をぶら下げている。



「神くん、ごめんね、すぐ駆けつけなくて…」




目を閉じると昨日のことに蘇る、

青葉の大火災。


火事鬼になった七瀬の魂は、

件の災いを止めるために捧げられた。




ケイトはすぐに未来堂へ行ってしまって、

神くんを放置する結果に。


神くんはその場にいた人たちによって

救助され、

入院したのだ。




「…怪我、大丈夫?」


ケイトと神くんは並んで、

少し歩く事にした。




何も言わないまま、

病院から少し離れたところで急に神くんが口を開いた。


「…大丈夫だよ!実はもう、治っていて、ほら!この通り!」


腕に巻いていた三角巾を解き、

肩をぐるぐる回す!




「刀傷が数日で治ったなんて人には言えないもんね!ハハ!」





…神くんのハイテンションは見事に空回りして、


ケイトは何も言わずに

神くんを見つめた。




「…ハ、ハハ、あの時の話は何も気にしてないよ!むしろ、僕はすぐに駆けつけられなかった。謝るのは、僕だよ。」


神くんの前髪を、

風が通り抜けていく


「ごめん、晴名さん。」




ケイトはその場から急いで立ち去った。


「…えっ!?あっ、あれ!?」


神くんは手を突き出し、

走り去るケイトの背中に照らし合わせるだけ。





《…なぜ逃げるのです?》


酒呑童子は相変わらず集魂石の向こう側から、ケイトの様子を伺っていた。


しばらく走って、

途中で歩行に変えて、


「あの人、いっつも謝るんだもん。」




耐えきれなくなったのか、

呆れたのか、

自分自身よくわからない感情。



そして呟く、


「…次の災いは、いつ?」




ケイトはもう既に状況を理解していた。





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