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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
43/127

悲痛





「はっ…はあ、はあっ…」


右肩の裂傷を手で押さえ、

壁伝いに火の手の上がる方へ進む神くん。


「行かなきゃ…晴名さん…」


元々良くない顔色もさらに拍車がかかり、

足元はフラフラ。



それでも向かう、

血痕の足跡を残して。







そんな神くん、

件の災いによる予言の中で名前が出てくる人物だ。


大火で死ぬ、


ケイトは盛鬼と七瀬を止めなければ、

神くんは、死ぬのだ。




《災いが産まれれば予言通り神という少年は死にます。》




酒呑童子の言葉、

自分には関係ないと思っていたけど、


今は違う。


神くんのおかげで

フランシスカと戦わずに済んだ、

こうして今、


盛鬼を見つけられた…


しかし、

火を放つこの妖怪は、

右眼で見る限り、まちがいなく、


彼氏(ななせ)さん…




《…。》


…斬れないよ…。




七瀬であった火事鬼はまた口から火を放つ


それを回避する、

だが、

ケイトのいた場所には民家、


また火事が広がっていく。




「どうしよう…!」


「元に戻す方法は無いの!?」




未来堂の酒呑童子に聞くが、

返事が無い。


それが返事、回答。




「ねえ!?ねえ!?」




火事鬼を倒さなければ、

災いが産まれ、

神くんが死ぬ


倒せば、

七瀬が死ぬ




決められない二者択一。





《あと30分くらいかな…産まれるよ?》



件もカウンドダウンに入った。

いばらが実況する。



時折、

膨らんだお腹の中で何かが蠢き、


皮が内側からウニのように

突き出しては引くのだ。





それに、

件を鎮めるには魂があと二つ必要なのだ。


火事鬼を倒したとしても、

足りない。


ならば…




《…来るか?》




腕組みをして余裕綽々のあの、盛鬼をやる。





ケイトは切り替えて、

火事鬼の横を通り抜けた。


「うぉおおおお!!!」


弱気や恐怖を振り払う咆哮、

自然とケイトの底から噴き出した。




当てる!


現祓の刀身を横に振って斬り払い、


それを腕と肘で挟み受ける盛鬼、


わざわざこんな受け方をする所を見ると、

かなり体術に優れているとわかる。


「抜けない!!」



挟まれたまま、

ビクともしない現祓



《本来なら俺の身体を斬りつけられるとは思えんが、警戒、警戒しておこうと思ってな。》



操鬼と蕪鬼を倒したその刀を。



挟んだまま刀を下へ向けると同時に

足を下ろして地につける。


そしてそのまま肩でタックルした。



それはケイトの胸に当たって吹き飛ぶ


現祓から手を離してしまった。



現祓は音も立てずに消え失せる。




《消え…もしや妖怪の刀、酒呑童子のか》



ケイトは膝を立て、

立ち上がる。


その際、また現祓を掌から出した。




(不用意な攻撃は全部受けられてしまう、どうしよう…)


ではまた、(アレ)をやってみるか…


纏っている防御の妖力を

刀に集めて、


蒼い剣閃を大波のように3つ飛ばした。




コントロールは十分、

3つの妖力で出来た刃は地を這い、

削りながら盛鬼へ一直線、



《これに奴らはやられたか…!》



ニヤリと笑って

盛鬼は腕をクロスして防御した。





…全部命中!!


…しかし、





《…ふうう、効くぜ》



………


…轟音と砂煙が鳴って舞う、

それが晴れると、

筋骨隆々の上半身を露わにした盛鬼、


あの(カルマ)は、

上着を紙吹雪のように細切れにして吹き飛ばしただけに終わる。




無傷、とまでは行かないが、

多少のかすり傷程度、



割と力を込めた一撃、

それが無残にも無力。





少し乱れたオールバックを手ぐしで整え、


《そよ風起こしてヒーロー気取りか?お嬢さんよ。》




ケイトは焦った、

向かいにいる妖怪の、

あまりに強大すぎる実力に。



《他の鬼は殺れても、俺は殺れんぞ!》



盛鬼は思い切り足を踏み込み、

アスファルトに蜘蛛の巣のようなヒビを入れ、


蹴り出す!



ケイトとの距離は一気に詰まって、


《破っ!!》



不意すぎて

ガードが間に合わなかった

無防備なケイトのみぞおちに

正拳一発、


「っぐっはああ!!!」



前かがみになったところを、

膝蹴り!


「ぶっ!!」



顎に決まって、

強制的に空を見上げたケイト、


その髪の毛をすぐさま掴んで、



《噴っ!!》



路面へ思い切り叩きつけた!





「…。」


ケイトは頭からアスファルトに突き刺さり、

砂漠に生えているサボテンのように直立した。



そこへ、

思い切り回転蹴り!



頭は露出し、

体をくの字に曲げて吹き飛んだ。




《さて…死んだか?》




向こう側で、

信号機横の、

大きな看板型の道路標識に当たって

めりこんだケイトを

手のひらを横にして見つめる盛鬼、



「…ごっは!!」



血を吹くケイト。

バタバタっとその下に跳ねて落ちた。



《まだ生きてたか。そうこなきゃ詰まらんね。》




のし、のし、

迫る盛鬼、


固まっていた火事鬼に

また火を放てと手で合図して


ケイトにとどめを刺しに行く。



数十メートルのこの距離が詰まれば、

ケイトは死ぬだろう。



「…ぶっ、はっ、ごほっごほ…!」



目を覚ましたくない、

身体を動かしたくない、


このまま、

もう、寝ていたい。



いくら妖力を纏っていたとはいえ、

全身が激痛に襲われている。

ビリビリと、

等間隔で襲われている。




腕だけを起こし、

歪んだ看板に肘を掛けた。


「…あっ、あり得ない…看板に、めり込んでるなんて…」




眉間に熱が集まり、

なみだが溢れる。


「…もう、あたし…人間じゃないじゃん。」


あはっ

と笑えてくる。



泣き笑い、

どうしようほんとに。




盛鬼も、

七瀬(彼氏さん)も、

火事も、

神くんも、



こんなに背負っちゃってる、

どうしよう、












誰か…助けて。







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