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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
41/127

さては貴様




…神くん、


…神くんはフランシスカと戦っていた。





《…ぶっ叩かれたのはどれくらいぶりか。》


《…それも、お前みたいな童貞クソボケヤローなんかに。》


《…許せない。》




見事にフランシスカの側頭部を

刃沙羅のみねが捉えたところだ。


箇所は少し血をにじませ、

赤みを帯びている。




少し身を縮めたフランシスカは、


《許せないなああああああああ!!!!》


と身体を伸ばして咆哮した。




ここまでは上出来すぎた。

神くんに、

実はもう何も打つ手はないのだ。


自分の式を反映させる和紙の人形、

"人形代"、

これには限りがあり、


1枚使って残りは2枚しかない。


このあと、

フランシスカみたいな者に同じ手が通じることなんてそうそうないだろう。


それに、

神くんも求道者の身、

式人としてのスキルはそれほど多くはない。



「…はは、参ったな。」



ケイトの前ではああ言ったが、

今となっては無謀な強がりだった。


食い止めるなんてできないだろうな。


刀でそれなりに打って、

ピンピンしてる人間なんていないんだ。




彼女は、

ものすごく強い。





《安心しろよ、殺しはしない。》


フランシスカは向かいの神くんにそう言った。


耳を疑ったが、間違いなくそう言った、

しかしそれには続きがあって、


《その代わり、全身の骨をとりあえず折ってやる。》




それがスタートの合図、


斧の横っ面でまずぶっ叩かれる。


ガードが間に合ったが、

なんせ衝撃、

こればかりはどうすることもできず、


また吹き飛ばされ、

吹き飛ばされたスピードよりも

更に速いスピードで回り込まれて、


《オラオラオラオラぁあ!!!!》


足を腰元まで振りかぶってからの蹴り。


ぶっ飛ぶ神くんを追いかける際、

フランシスカが纏う紅い力が、

水飴のようにぐにゃりと伸びて

残像として残る。



蹴られた神くんは、

オフィスビルの屋根にぶち当たって

砂埃とともにワンバウンド、


「くっ…!!」


また上を向くとすぐそばに紅の笑み、


背中につくくらい引いた斧を、

縦にフルスイング!


とっさに身体を回転させて回避する神くん、




その衝撃凄まじく、

神くんが寝ていたそのビルは

爪でチーズを引っ掻いた如く、

大きく裂けて口を開けた。


激しく舞い飛ぶコンクリート片とその煙、


今のを回避していなければどうなっていたことか。


とん、とんと距離をとって

荒れた息を整える神くん。



「…っ!!」



回避、できていなかった、

右肩の痛み、

ぬるい感覚、


斬られた、

血が、出ている、痛い。



少し目を配らせば、

黒の学生服の右肩部分もじわりと滲む。



(だ、ダメだ…逃げてばかりじゃラチがあかない。)


額から眉間へ、

眉間から鼻筋へ、

するりと冷や汗が垂れ、


顎から落下する。


(いずれ、捕まる。鬼ごっこじゃ、負ける。)




時間を稼ぐ、

この選択肢には穴がある。


どれだけ稼げばいいのか?

それがわからない。


何時間稼いだところで、

フランシスカがケイトを追いかけるのはまず間違いない、


ケイトもケイトで、

火災を止めるのにどれだけの時間が必要かもわからない。


つまり、

神くんとケイトが助かるには、

フランシスカを倒さなければならない。




しかし、

絶望的な戦力差、

相手は化け物だ。


ちょっとした自分の手品はもう通用しない、

それは一番本人が痛感している。


一捻り、

工夫、


何かが必要だ。




《…ん?何をしている?》


神くんは刀の柄を咥え、

両手にそれぞれ人形代を構える。


そして、

離す。


すると、

その人形代2枚は、



『1人じゃ無理なら、3人だ。』



神くんにそのまま化けて、

分身した。



そしてまた、

刀を構えて、


飛びかかる!




3人、縦に並んで一直線へ向かった!


《無駄なことを!!》


そこへ両刃の斧を振るうフランシスカ、



三方へ散る神くん、


1人はフランシスカの頭上、

もう1人は左脇、

右脇は3人目、



初撃をまず持ち手で受け止めるフランシスカ、


《ちぃ!!》


左脇の胴払いは腰を引いて回避、


問題は右、

右脇を突く1拍子の突剣!


《…っ!!!》



持ち手を片方離して、

神くんの刃沙羅を握って受けた!




3連撃を凌いだ!

だが、

そこから更に詰めてくる神くんと分身たち、


機はここしかない、

それは明らか、


右手を離した為、上段のガードが不完全になる、

そこを叩く、叩く!


左脇の払いを避けられ、2撃目の構え、

そして、払う!


突剣を握られた為、

手首を返し、

えぐる、


たまらずその刀を離す!

だが、

離すだけではなく、

すぐさま刀身を手刀で払った。



《この野郎…!!》



ここで

フランシスカの何かが切れる。




もう遊びではない、

本気で潰す。

神くん程度の人間、

フランシスカにはゴミムシにも満たない。


そんな存在にここまでやられてしまった…



《…済まさんぞ…タダでは!!!!!》



纏っていた紅を突風のように吹き飛ばす


その波動で風圧で

神くんたちの動きが一瞬止まった。


その隙を突く。



髪の毛を掴み、

膝蹴りを3発、

蹴り上げたと同時に手を離し、

上を向かせたところで斧の先端で胸を突いた。



吹き飛ぶ神くん、

人形代、


《偽物!次っ!!》



残り2人、

やられた人形代は煙と共に蒸発、


神くんペア、

2人並ぶ格好でフランシスカを迎え撃つ、



『これ以上やられるわけには…!』



刀の一振りをフランシスカ、回避、

すかさずもう一振り、

だがそれは見えている、

斧の持ち手で受け、火花、


だが様子がおかしい、

火花を散らしガードしたその勢い殺さず、


そのまま手元で

まるで風車のように回転させる、



『しまっ…!!』



狙いがわかった、

それはカウンター技、

相手の勢いを利用して倍の力で

上から(下から)叩きつける(かち上げる)


今回は上から、

みしっとのしかかるインパクト、


察知した神くんは

刀身の背を

両手で押さえての上段受けが間に合った。


しかし腕が痺れて次の行動ができない、


そこに気をとられるフランシスカの背中、

屋根を蹴って

思い切り飛び込む!



そこで、

フランシスカは後ろを向いて

口を尖らせ息を数回吹く、


『ぐっ…!!』



含み針、

とっさにガードしたが、

腕と脚、

手のひらに何本か刺さってしまった。



《(針が刺さっても分身は消えないのか?本物はこいつか、あいつか、どっちだ?)》


様子を伺うフランシスカ、



腕が痺れた神くんAか、

針を当てまくった神くんBか、



正解は、


どちらも偽物、




建物の屋根をぶち壊して

下から現れた神くんC!


《下!?分身は2枚のはず!?》



思い切り腕を引き込み、

逆手で振り払ったその一撃は、

フランシスカの胸を捉えて、

バチバチと雷のように激しく音を立てる



そして、

上空へ思い切り吹き飛ばした!




「はあ…はあ…」


満身創痍で着地した神くん。


ありったけの心を今の一撃に込めた。

神くんが纏う

ガード分の黒色の心までも。

もう余力などない。




《な、何故だ…》


時間差でフランシスカも降ってきて、

屋根に激突してごろりと横になった。


神くんは実は人形代を3枚持っていたのだ。


その3枚を有効に使う為に、

敢えて2枚しかないということをアピール、

完全にフランシスカは思い込んでしまった。




大逆転勝利か、


しかし、

神くんの瞳に心をへし折る光景が。




《フラン様、なんとおいたわしいお姿…。》



同じく、

紅を纏うメイドのような女、


わかったことは、

まず間違いなくこのフランシスカの仲間だということ。



駆け寄り、フランシスカを抱きよせ揺さぶる。



《しっかりなさいませ、フラン様、よいよい、と。》



フランシスカはそのメイドの肩を掴んで一気に、


《がぶっ!》


《あっあはぁあん…!》


その首筋にかぶりついた。



《…ふーふしゅー…。》


噛んで離さず、

一点を見つめ、

何かを吸うフランシスカ。



《あっあ〜ん…あひゅん…》


噛みつかれたメイドは、

苦しみもがくどころか、

なにやら快感に酔いしれている様子。



雰囲気にのまれてしまう神くん。


…あ、まさか。


…嫌な予感がする。





その予感、

ズバリ的中、


《…ふう、もういい。》


ドンとメイドを突き飛ばして、

立ち上がるフランシスカ。


「やはり、」



完全復活、と言わんばかりに

神くんの前へ立ちはだかるフランシスカ。



《さあて…第2ラウンドだ。》


「…吸血鬼か!」






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