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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
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見覚えの色





とうとう街がサイレンの音で騒がしくなり、

単なるボヤではない、

大火事だということを住民たちが気づき始めてきた。


辺り一面焦げ臭く、

鼻をつく臭いが溢れた。




《ようし、建物は放っておけ。次は、人間だ。》


《あの馬鹿どもに挨拶してやれ。》



盛鬼は呑気にタバコをふかして、

肩で風切り、悠然と道路の真ん中を歩く。


火事鬼と化した七瀬は建物からくるっと回転して、


野次馬根性で

スマホ撮影に夢中な人々の集団の方へつま先を向け、



《……!!》



鋭く尖ったクチバシから大蛇のような炎を噴き出す。


火事鬼が見えない人々は

急に現れたその炎に対処する間もなく

包まれ、

冥府へ向かう。


《はははは!ナイスショット!!》


異変にようやく気付いた他の者達は一斉にその場から離れる




《まだまだこれからよ、こんなのはまだ、満足されない!!》


太陽や空を黒煙が隠して、

まだ昼間だというのに

夜の訪れを感じさせる夕方の模様のようになった。


何の罪もない人々が死んで行く、

傷ついていく、

壊されていく、


この黒猫の小さな瞳に何が映る?




《…ただこうして、見ていることしかできないのか…。》


炎のオレンジに潤いが混じり、

猫叉の瞳に

目一杯溜めた涙が今にもこぼれ落ちそう。



その時だった、



「…許さない。」



守護天使が

羽根を伸ばして舞い降りるかのように

盛鬼と火事鬼の前に

ケイトが空から現れた。


それは、

様子を隠れて見ていた猫叉にも確認でき、



《あ、あれは…?》



希望の光にも見えた。




火事鬼は炎を吐くのをやめ、

盛鬼は咥えたタバコを吐き出した。


《正義の味方、参上ってか?》


余裕の腕組みをして、

2m近い身長からケイトを見下ろす。




「火なんか放ってどうするつもりなの?」


「止めてください。」




真剣な眼差し、


街を守りたい、ただそれだけ、

純粋な気持ち。


しかしそんなものは盛鬼にはクソにも満たない。



《クソ小虫に何ができる?》


火事鬼に合図して、


《やれ、蚊を落とせ。》


それに呼応、火事鬼が構える。




ケイトはこの真っ赤なクチバシ妖怪を、

七瀬だとは気づきもしない。


面影も何もかも無くなっているのだから

当然だ。


だが、

右眼は、

ケイラの右眼はそうは言っていないのだ。




「えっ」


真っ黒い(しき)

中に、見覚えのある暖かい色、


七瀬の色、


そして、

涙を流す鬼。



《…っ!!!》


ケイトに向かって火を吹く火事鬼、


それを横に転がり、

回避。


続けざまに吹き続ける。


近寄れない!




「え、嘘、そんな」


ケイトの疑心がどんどん膨らんでいき、

心を重たくしていくのだ。


「まさか」




考えれば考えるほどに

手が出しにくくなって


「彼氏、さん?」


七瀬だと確信していく。




《知り合いか?》


《ははは、もうそいつは火事鬼!!人間ではない!!》


交わる運命、

あの人がああなってしまった。


更にケイトへ

責任がのしかかる。



関係ない、

出会わなかったとしてもそうなっていた、

だが、

本人はそうは思えるはずもなく、


神くんもそうだ、

自分と出会った人たちはみな、

この螺旋に巻き込まれていってしまう





「はあ、はあ、はあ、」


無駄に消費していくだけの妖力。

全身から蒼みが消えてきている。



遠巻きに見ていた猫叉は、


《何をしておる!じれったい!》



事情がわからず、

応援していた人間の娘に幻滅するのみ。




何か近づく名案が浮かんだとして、

この現祓が届く距離に行けたとしても、


斬れない、きっと。






こうしている間も、

火の手はどんどん伸びていき、

とうとう20数名の犠牲者が出てしまっていた。





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