ようこそ百一文 未来堂へ
まばたきをして、
目を開けた時にはもう、ここにいた。
朝が夜になり、
貧乏アパートの寝室が神社になり、
迫っていた神くんが大きな黒い鳥居になっている。
わけがわからない
この奇な大量の情報を処理しきれない。
ただでさえおかしい朝だったのに、
今はワープかテレポートかしたように
こんな場所へ突然来てしまった。
暗く、肌寒く、
不気味…な場所。
《クスクス…》
高い声の嘲笑、
その方へ振り向くと、
灯篭の物かげが揺れている
また別の笑い声、
また、
またさらに!
囲まれている?
何か、存在のないものに。
《それは、お前の魂を狙う者たちの笑いだ。》
鳥居の向こう側、
真っ白い杜へ続く石階段を下ってくる人影が2つ
逃げなきゃ、
けど
座り込んだまま、
動けない。
手に持った黒い塊を握りしめることしかできない。
何で動けないの?
雰囲気に呑まれた?
恐怖?
混乱?
普段慣れない感情に揺り動かされすぎて
ひどい乗り物酔いをしたような感覚。
吐きそうになる。
人影がとうとうすぐそばまで来た…。
また神くんみたいな感じで来られたらどうしよう。
まさか、神くん?
石畳の通路を挟む灯篭が、
2人の横顔を一瞬照らし、
《ようこそ、"百一文 未来堂"へ》
長い牙を見せ、
そう呟いたのは男の和服、
もう1人の女の和服は背が低く、
見た目はまるで子供だけど
綺麗な人。
男の和服は突然、座り込んだ自分に手を差し伸べてきて、
《お待ちしておりましたよ、晴名ケイトさま。》




