式人の戦い
ならば…
見定める、それから
神くんに任せるか判断する。
もう猶予はないし、
それなら2人でフランシスカと戦えばいい?
けど、
2人でも勝てる気がしない。
・神くんに任せて災いを止めに行く
これがベスト、
それはわかってる。
けど不安だ、不安すぎる。
だから、見定める。
「しきびと、って何?」
向こう側で聞いているであろう酒呑童子に
問いかける。
《式人、私も拝見するのは随分懐かしい種族ですね。》
《妖力の代わりに心を減らし、式と云われる特殊な力で戦う者のことを言います。》
《式は拒絶する力、彼がもし本当に式人ならば…》
《…手強い。》
黒い霧のようなものに包まれた神くんは、
刀を上段で構えて、
左足を踏み出す
「速い!」
もちろん斧で
その一撃を受け止めるフランシスカ。
そして、
打つ、打つ!
でたらめではない、
上段がダメなら下段、
ダメなら中段で腰を払う!
素人のケイトから見てもわかる、
経験者の太刀筋!
「おっ、おお!!」
もしかしていけるんじゃないか、
自分よりは格段にいい勝負をしている!
ケイトがそう感じた瞬間、
《軽い、手数だけだな。》
細かい連撃小賢しいと、
まとめて斧の一振りで後方へ弾き飛ばす!
その衝撃、
纏っている黒の残光を残し、
身体だけを先にビルの壁へ吹き飛ばすほど。
「…っはあ!!」
大の字でそこへめり込む神。
やはり強い、フランシスカ。
所詮戯れなのか?
ムードが一変し、
ケイトも出番が近いのかと覚悟する。
《…違う、後ろです!!》
なんと、
その壁にめり込んでしまった者は神ではなく、
10数センチのヒトガタに切り抜かれた和紙、
変わり身!
「これが転移だ!!」
横払い一閃!
フランシスカの側頭部に衝撃!
もちろん刀の背で打った。
ハンディなどではない、
人としてのモラルゆえの。
揺さぶられた紅、
長い髪が乱れて舞う
神は飛び跳ねた勢いそのままに違うビルへ
飛び移って着地した。
《やはり式人、壁にめり込む既で身代わりの式と場所を入れ替えた!》
《身代わりを仕掛けたのは細かい連打をじれったいとあの娘が感じて払ったあの雑な一振りの時!》
《彼、なかなかいいセンいってますよ〜ほほほ》
実力は申し分なく、
これ以上の確認は必要ない!
ケイトは驚きを隠せぬまま、
その場に背を向けた!
「神くん!ありがとう!」
先ほどとの手のひら返しが痛々しい。
流石にダメージがあった。
ケイトを追おうにも、
手足が付いてこない。
《…く、クソがあああああああ!!!!》
更に溢れる紅い妖力、
あまりに巨大で、
周辺全てがその色に染まる。
これからが本当の戦い、
フランシスカもナメるようなマネはしてこないだろう。
神にも更に気合が入る。
「晴名さん、この街を頼んだよ。」
そしてまた、
神は紅い狂気に飛び込んでいった。




