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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
38/127

彼は…!



とうとう動き出した盛鬼の企み。


それと平行して、




《産まれそう…!》


未来堂百一文、酒呑童子といばらのねぐら。


臨月を迎えたような(くだん)は、

お腹を愛おしそうに撫で、

足を開き、息を荒らして汗をかく。


いばらは件の座るソファの傍で、

件の様子を酒呑童子に伝えた。


酒呑童子はクッと頷いて、




《ケイト様、時間がありません。災いが、産まれる。》


現世のケイトに呼びかける。



ケイトは声を荒げ、


「わかってる!わかってるけど、どう探したらいいの!?」


完全に焦っている、魂はあと二つ必要で

尚且つ、

盛鬼がどこにいるかもわからない、


探す手段が、無い。




ケイトは

明らかにイライラしていて、

無駄に街並みをキョロキョロ目配せして、

どこに向かっていいのかわからず、

何もできないまま足踏みをしているだけ。




その時、

神くんが


「晴名さん、あれ!」


指をさした方向に、

煙が。


ビル郡の向こう、

そこより少し低い建物の間々からいくつも上がっている。


間違いない、あれだ。



ケイトは回復した妖力をまたフルパワーで

纏って、

神くんを置いてでも

なりふり構わずに飛び立って向かった。


「ああ!晴名さん!」



仕方ない、

神も駆け足でそこを目指す。





しかし、

神様はケイトの足首を掴み、

是が非でもそこへ向かわせたく無いようで、


《やはりこの街は楽しいな、人間と妖怪の戦い、興味をそそられる。》


目の前に現れた閃紅、



腕組みをし、

電信柱の最頂で顎をツンと出して笑う。



「…フランシスカ。」




とりあえず建物の屋根に止まって、


「急いでるの、後にして。」


だが、

ケイトの要求は通じない。


《後に?それはお前が決めることじゃ無い私が決める。》




明らかに面倒な相手、


「あなたは人間でも妖怪でも無い、魔の者なんでしょ!?関係無いじゃん!」


《何度も言わせるなよ、私はお前たちに興味があるんだ。》


身振り手振りを使い、

本当に忙しいことをアピールするが、

フランシスカには全く通じず、



《たった数日で、大分力の使い方が上手くなったじゃないか。》


などと話を逸らされてしまう。




そして

フランシスカの全身から、紅が滲み、

一気に吹き出す。


《妖力の鎧を纏ったならば、もうお前は騎士という事、》


《どれ…試してやろう。》




何かを察知し、

急いで現祓の名を叫ぶケイト


間一髪、


現祓を構え、

防御しなければ明らかに飛んでいた、


首が。



「くううっ…!!」


フランシスカの両刃斧、

その攻撃を防いだ反動、


手から腕へ、痺れが駆け登る




クルクルと大きなそれを簡単に片手で回し、


《Buena suerte.》(幸運を。)


と、

フランシスカから嫌味なスペイン語が飛び出し、


続けざまに、叩く、叩く、


叩きつける!!




不安定な屋根の足場、

現祓から激しい火花を散らせ、

ガードしたが、

吹き飛び、

瓦屋根で跳ねて


破片を散らかした。


だが、休んでいる暇はない、


起き上がり、

顔を上げた時には


ニヤリと笑う

フランシスカがもうすぐそばまで来ていて、



今度はすくうように下からかちあげられて、


空中で回転、



ダメージは無いものの、

激しく眼球や三半規管を揺さぶられ、

意識は朦朧、



「くっは…!!」



上空へ舞い上がり、

ちょうど引力に負けて

ケイトが落下してくるところを


フランシスカが待ち受ける。




野球の守備練習、ノックのように

トスされたボール代わりのケイトへ、

バット代わりの両刃斧をジャストミートさせるつもりだ。


バッターと化したフランシスカ、


その時、

また神くんがファインプレーで

落下してくるケイトを受け止めて、

違う屋根へ飛び移った。



「晴名さん!大丈夫かい!?」



お姫様のようにケイトを抱え、

しゃがみ、

屋根へ寝かせる。


そして、

立ち上がってフランシスカを見据えた。




《tenga un buen día, el amante de.》(よう、色男。)


機を失ったことなど気にせず、

次に現れた刺客へ興味が移るフランシスカ。


「スペイン語?君も、妖怪か?」



向かい合う神とフランシスカ。



ケイトはよろよろと立ち上がって、


「助けられてばっかり…ありがと、神くん。」



頭がクラクラする。

さっきの斧でのかち上げは強烈に頭を揺さぶられた。



「晴名さん、」



神はケイトへ見向きもせず、

背中でこう言った。



「この人は僕が食い止めるから、向かって。」


「街を、」


「守って。」




ここで爽やかな風が一つ吹いて、

神の黒い髪を凛と揺らしてぬけていった。





ここで、

そうですか、ならよろしく、

とはならない。


《おい、おいおい、今、食い止めるって聞こえたんだけど、まさか、》


《お前が、私を?》


神を指差し、その手を自分の胸へ。

フランシスカにはジョークに聞こえたようだ。


それはケイトにも同じこと。

ついさっきまで普通の高校生で、

自分が巻き込んだから、

ちょっと妖力を使えるようになっただけで…


そんな、

神くんがどうにかできる相手では無い。



「神くん、大丈夫だから、そんなこと言わないで!」



わかんない、

妖力が使えないから、

フランシスカの凄さがわかんないんだ。


神くんは刃沙羅の名を呟き、

握り、

きっ先をフランシスカへ向ける。



「神くん!!」



しかし、神には根拠があった。


「僕は、僕は、」


「晴名さんのお兄さんに昔よく遊んでもらったって言ったよね?」



ケイトは神が何を言いたいのかわからない。



「僕は、よく遊んでもらったんだっ…!!」



何かの力が神の身体を包む。



《君は、まさか》


酒呑童子も堪らず呟いて、

心当たりと彼を重ねてみた。


ケイトの妖力が蒼なら、

神くんは黒、


しかし、

妖力とは違うような感覚。




「どういうこと…?」


神くんも、戦えるの?


「妖怪と戦える力は、僕にもある…」




《そうか、ケイト様、わかりましたよ》


《あなた様が妖力で戦うとするなら、彼は…》


《心、で戦う者、》


《陰陽師以外が妖怪退治をしていたのもこの力のお陰、》


《…彼は式人(しきびと)か!》




…とは言いつつも、


…ケイトからしたらピンとこないのだ。




また助けられて、

尚且つ

自分が食い止めるから早く街を救ってきてと言ってくれる。


ありがたい。

それは素直な気持ち。


だけど、

今思えばゆるキャラくらいにしか感じない、


携帯民、

なる小物の現代妖怪に

神くんは操られていたのだ。


そんな彼が、

めちゃくちゃ強そうなあのフランシスカといい勝負なんてできるわけがない、


そう感じてしまうのだ。




「さあ!晴名さん!」




…さあ!言われましても…。

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