転生
《…ほう、蕪鬼がやられたか。》
盛鬼はファイナンスにはおらず、
とある場所にいた。
オールバックの額の奥から血が一筋垂れる。
《…酒呑童子がコソコソと…ふん、まあいい。》
昼間だというのに真っ暗闇の場所、
盛鬼の向こう側で
ろうそくがいくつも灯りを点け、揺れている。
照明はそれだけ。
「さ、榊さん…これは一体どういうことなんでしょうか…?」
裸にされた七瀬が、
手足を縛られ正座している。
そう、
なにやらよくわからない魔法陣?
のようなものの上で。
《お前に一仕事やってもらうためには必要な事なんだよ。黙ってろ。》
七瀬は震え上がっている。
これから何をされるのか、
不安で恐怖で仕方がない。
すると、
頭を丸めたお坊さんみたいな人間が数人、
闇の中から魔法陣の方へやって来て、
七瀬を囲む。
「さ、榊さん!!」
盛鬼は葉巻をかじり、
笑う
《何を怖れる?痛みや恐怖などない!お前にもたらされるのは、単なる昇華だ。》
《人間を超越するんだ、分かるだろ?》
坊さんたちがとうとう念仏を唱え始めた。
「やめ!!やめてください!!!」
盛鬼の耳に念仏、
ブレーキなどない、
《人間をやめて、転生するんだよぉ!七瀬ぇ!!》
とうとう七瀬の肉体に変化が現れ始めた。
突出してなければならない場所がへこみ、
へこんでいなければならない場所が突出する。
「うぁあああああああああ」
《はははははは!!!ようこそ!!現の世界へ!!!!》
あの魔法陣こそが
現を大量に生産するシステムだった。
人を媒体とし、
邪法で無理やり人間をやめさせる。
叫びも消えて、
先ほどまで激しく揺らめいたろうそくの灯りが
ピタッ
と
落ち着いた。
坊さんたちは禅をやめ、
盛鬼に会釈をして退散する。
吸い終わった葉巻を投げ捨て、
七瀬だった者に声をかけた。
《ふん、気分はどうだよ》
もう人の面影などない。
肌を真っ赤に燃やし、
角を三つ生やし、
口を大きく裂いた妖怪がそこにいた。
《さか、さか、さか、》
もう、
人間としての全てを失ったのか、
言葉が出てこない。
《七瀬、お前は改め、火事鬼と名乗れ。ワシが、許そう。はははは。》
青葉を火の海にする準備が整った。
七瀬がこれから火をつけて回るのだ。
ケイトは間に合わなかった。




