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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
32/127

ごっこじゃない



構えなさいませ!

と言われましても…


ケイトに策などない。


ガラの悪い連中数人とかならともかく、

こんな大勢と

ケンカするなんて考えてなかった。



不安で仕方がない、

もうすぐそばまで

人形の多勢が迫っているのだ。



《ケイト様、あの人形たちを右眼で見ると分かる通り、1人1人が糸で繋がれている。》


《更に眼を凝らしなさい。何か分かりませんか?》



後ずさりをしながら、

ケイトは必死で何かを探る




《ほらほら!さっきの勢いはどうした!?》


高らかに笑う操鬼は、

指をしきりに動かし、

人形たちを操っている




「…あっ!!」


《分かりましたね?》




酒呑童子の意図が見えたケイト。


「指が足りないから、人形同士に糸を中継させている…!」


その通り!とはしゃぐ酒呑童子、

つまりは、


《所詮、頭数だけの多勢、一体ずつに糸を張らせば指が足りない。だからと言って十体も中継させてしまえば指に遠ければ遠いほど動きも単純になります。複雑な動きは不可能!》



なるほど!

って

根本的な解決になってない!

何の解説!?



《恐るるに足りないということ、それにアレを行いなさい!すれば道は開かれる!》



もうすぐそばまできている!

しのごの言う暇はなかった。



アレ、

それこそがケイト最大の必殺技だった。



「…よっしゃあ!!」



ダメでもともと!

現祓を肩で担ぐケイト。

先ほどと同じく刀身は蒼色の妖力に包まれて輝いている。


それを思い切り…振り下ろした!


すると

剣先からその蒼色は

大きな湾曲した刃のように飛び出して



津波のように地を這って人形たちを通り抜ける!



過ぎ去ったその妖力は大きくスライスして

路地の壁にぶち当たり、


その壁を粉々に砕いてしまった。




中には無事な人形もいるが、

多勢の7割ほどをその刃の妖力でかすめ取ることに成功。


《…ほほほ、決まりましたね~》


だが、

操鬼は無事、当たらず。



《お、面白ことしてくれるね…人間!》


砂埃舞う中、

ケイトも操鬼の無事を確認、



「はあ、はあ、はあ…」



命中しなかったことを

悔しがることもできないほど、


疲弊。



いくら無尽蔵の妖力とはいえ、

今のは消費が激しすぎた。


(カルマ)の代償、即ち…激しい消耗。




だが、


《いいえ、ケイト様、よくやりましたよ。》



酒呑童子が集魂石の向こう側で笑う。





《うっ、な、なんだ!》


《指が、指が、》


《…熱い!!》




そして操鬼の両手が爆発する。


と同時に残った人形たちの挙動が消え失せた。





倒れこみ、

何が何やらわからない操鬼は、


指を失い、血を吹き出す手のひらを見つめる事で精一杯だ。


《何故、何故だ…何故、何故、》




向こう側で操鬼が倒れたのはわかった。

だが、

ケイトも何故だかわからない。


酒呑童子は答える、


《ケイト様の妖力が糸を伝わり、巻きついた両手を吹き飛ばしたのです。》



伝導、した。


あの蒼い刃が。




そして人形が消え、

うずくまり、もがく操鬼だけとなる。





《う、うあ、うああ、》


見事に10本の指が吹き飛んでいた。


凝視はもちろんできなかったが、

一瞬見ただけでわかる。


そんな操鬼に憐れみを感じるケイト。



《ケイト様、ヤツはあなた様を殺そうとしてあたのです。可哀想などと感じる必要は全くない。さあ、魂を頂きましょう。》



心情を察し、

先手を打つ酒呑童子。


そんな事言われてもケイトは複雑だ。



《はっ、はは!馬鹿め、俺に大人しく殺されてればいい、ものを、》


《ぐっ、他の奴らは、もっと、厳しいぞ》



操鬼はとうとう大の字になって空を眺めた。




《さあ、とどめを。》


「そんな事言われても、はいそうですねとはならないよ!」




見た目はほぼ人間と同じ、

自分と同じくらいの少年なんだ。


そんなのに、

刀を突き刺すなんて、できない。




と、

ここで次の刺客が現れる。


《…おや、あんたこないだのお嬢さんじゃないか。》



操鬼の更に向こう側、

榊ファイナンスの入り口から現れた男、


声に聞き覚えが嫌という程あった。



鋭くも太い声、

黒い手袋、

くわえ煙草、



「…あ、あいつ」




こないだボコボコにされた、

あの黒づくめの男、




ケイトの背筋が凍り、

身震いが始まる。




《…う、蕪鬼(かぶらぎ)さん…すんません。》



操鬼は身体を起こして、

頭をさげる。



蕪鬼、

盛鬼の部下、


《おお、随分やられたな。指、指無いじゃん》


蕪鬼は操鬼の肩を叩き、

身を気遣う、


フリをした。



《お前が指なかったらよ、価値無いじゃん》



目の玉に黒手袋の指を二本突っ込み、


《あんな奴にここまでやられて、鬼として情けない。恥を知れ。な?》


そのまま握る。



操鬼は手足を激しく痙攣させて

ありとあらゆる場所から血を吹き出した。




《…ケイト様、ケイト様!早く、魂を!》




不本意な形だが、

集魂石に操鬼の魂が入り込んだ。




《ふう、お嬢さん、あんたまだ探偵ごっこに懲りてなかったか。》


立ち上がり、

手袋の血を勢いよく地面に払う。



くわえていたタバコは落下して、

操鬼の血だまりの中で音を立て

炎が消えた。



ケイトを指差す黒の革手袋、


《続きは、無いよ?ごっこの、続きは。》




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