黒塊
お兄ちゃんが残したもの、
変なことが起きたら使えと言われたもの、
それは大切に、
宝石箱のようなものに入っていた。
黒いダイヤのようなものが散りばめられた、
そんな簡単な、
上開きの箱、
それを手に取った時、
急に玄関の方が静かになって、
《お邪魔しますね〜》
単純な金属音がカタンと鳴って、
ドアが開く音が聞こえた
まさか、
入ってきた…の?
そして靴音、
制服姿の神くんの、
乾いたローファーの音がゆっくりと増えていく
だ、ダメだ…もう
玄関から歩いて、
突き当たりを右、
そしてまた突き当たりを右に行くと、
この寝室にたどり着く。
室内だ、
大した距離はない。
な、何をされるのか…
もう、どうしようもない
半分ヤケになって
宝石箱を開く
すると、
箱に飾り付けられていた黒いダイヤのようなものの、
大きな塊が入っていて、
それを手に取り、
握りしめた。
《あれ〜リビングには、いないね〜》
茶の間まで来た…!
けど何も起こらない!
起こるわけないとはわかっていたけど!
嫌、やめて、
お兄ちゃん、
なんで…
あたし、
どうなるの…!?
ゆっくり手のひらを開き、
黒い大きな塊をまた確認すると…
「白、くなってる?」
この独り言で気づかれた、
「見つけた〜」
茶の間の突き当たりで右を向いた神くんは、
寝室のタンスの前で座り込んだあたしに気づいて、
首を90°曲げて確認した。
「も、もうだめ〜助けて〜」
涙がボロボロ出た。
これなら神くんにもう少し優しくしておけばよかった…
幼馴染なのは確かだけど、
深く関わろうとしたり、
何かをされそうになるとそれを受け入れたり、
一切しなかった。
それを今ものすごく後悔している。
きっと、
神くんに対してあたしは何か無意識に、
知らず知らずに迷惑を積み重ね、
それが学校を休んだ3週間で大爆発したんだ…
心当たりは本当にないんだけど、
どうせ死ぬなら何かしらの覚悟をして死にたい、
何でもいい、
無作為に殺されるより、
無作為に理由があったほうがマシだ!
ゆっくり神くんが迫る
せめて靴脱いで…
その時だった。
あたしは神社にいた。
夜の、
薄暗い鳥居の前で、
灯篭がその闇をわずかに晴らし、
境内への石畳を照らしていた。
「え、嘘…?」




