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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
27/127

鬼切丸




いつもの場所、


未来堂百一文、要は自分たちの本拠地、

相変わらず夜で

灯篭の灯りがぼんやりと鳥居の向こう側で揺れ、


件がソファに座り、

お腹を抱えてゆらゆらこちらも揺れている、


いつもの風景。




勿論

何故いきなりここに来られたのか尋ねる、


酒呑童子はそれを待ち構えていたかのように、

揚々と話す、


《今のは、媒体と媒介する者、つまり私といばら、この3つが揃って成し得る妖術にございます。げえむでよくある呪文や魔法の類とでも言いましょうか、ほほほ》



ルーラ?

ドラクエですか?

なんでそんなこと知ってるのか



《天井が無くて良かったですね~》


ほほほと笑う酒呑童子。

ルーラだ、これ完全にルーラのこと言ってる。

天井とか、ルーラじゃん。



ここで手を一つ打って、


《いや~それにしても先程は危なかったですね、悪魔祓い師に、現の大物、危なかったですね~》


そして鳥居の向こうへ進んでいく酒呑童子。

それに続いていばらも、


《あんなのあたし1人でどうにでもなったよ》


と、

まだ納得の行ってない様子。



《いえ、こちらでは無く、あちらが危なかったですね、と云う意味です。あちらは命拾いしたと思いますよ、ほほほ。》




随分強気で、口の減らない…


あの2人も結構すごかったと思うよ!

雰囲気にのまれて何も出来なかったから!



《まあ、それはそうと…》



境内の真ん中まで来たところで

つま先を翻し、

酒呑童子は呟く。



《…これから忙しくなりますね~。魔族もそうですが、鬼まで絡んで来ている、あなた様のお兄様は随分と仕事を残していったようですよ。ほほ。》



ここで

話は一旦お兄ちゃんの話になる。



何故魂を集めるようになったか、

なんて話はしなかったけど、


あたしの知らないお兄ちゃんの話なもんで、

不思議と茶々を入れずに聞いてしまった。



お兄ちゃんが初めてここを訪れたのは、


中学一年生の夏休みらしい。

あたしはまだ物心付いてない子供で、

そんなことは全然知らなかった。




《あなたのお兄様はここでよく励みましたよ。》


《お父上様と同じ…》





「お父さんのことも知ってるの!?」


酒呑童子はニヤリと笑い、


《勿論です、あなたのお母上様も知っています。》



自分が物心つくまえにいなくなったお父さんとお母さん、


自分の知らない家族を酒呑童子は知っていた。





《もっと言えばあなたのお爺様、そのお父上様…先祖代々ここに通われております。》


なんと!

全然情報も何もない先祖様まで知ってるとは…




《…話が脱線しましたね。戻しますよ。》


ケイトはここで はいわかりました とはならない。


「教えてよ!お父さんのこととか、おじいちゃんのこととか!」


何も知らないのだ、

なのに

こんな得体の知れない妖怪、酒呑童子は知っている。


「納得できない!」



酒呑童子は細い眉を結び、

少し困った様子で、


《駄々をこねないで下さい。それは追々…。》





お兄ちゃんはお父さんの意志を継いで、

酒呑童子のところへやってきた。


何故なら、

現や鬼と戦う為に。


それは先祖代々してきたこと、

晴名家に生まれた者はすべて妖族と戦うさだめ。


お兄ちゃんはなんの疑問も持たずにやってきた。




《現とはまあ、要するに最近現れた妖族…我々常とは違うのはもうお分かりですね?》


《ですが、この現を利用して色々と企む輩がいます。その一つが、鬼です。》


《鬼は昔からいる、妖族とは違いますが常のようなものです。》


《常のような鬼が何故現と相見えるのか?》


《それには、人と鬼の因縁が関係しているでしょう…。》




遥か昔、人と鬼は水面下で共存し、

人がどうにもならない常や災いを鬼が丸く治めていた。


だが、

鬼の中にはそれを快く思わないものもおり、

人の中にもそう思う者がいた。


その鬼が突如人に反旗を翻し、

人と争うようになった。


これ幸いと人もまた鬼を討伐するようになって


人、鬼、常の三つ巴の戦いになる。




《この戦いは今でも全国各地で続いております。現やあなたのお兄様のような新しい勢力と共に。》



そして現代、

現と呼ばれるものが現れ、

鬼はそこに注目した。


頭目のいない現をコントロールするのは容易いと睨んだ鬼は、

現を率い、そして生み出していった。



《鬼は、この世を支配しようと企んでおります。人を滅ぼし、常も。》



話を聞いていたケイト、


ここで疑問が生まれる。



「仲良くやっていたんでしょ?なんで急に鬼が…」



灯篭に寄りかかるいばらが答えた。


《それは、鬼切丸に聞いてみるしかないよね?》




おにきりまる?

酒呑童子の顔が暗く沈む。

それはケイトにもわかった。


「鬼切丸、って誰!?」




何やら訳ありげな様子。


酒呑童子は重い唇を開いた。




《鬼切丸、あなたのお兄様が狙っていた鬼の総大将です。》




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