紅が来る
《ほっとけばいいのに》
マンションから路上に出ると、
電信柱に寄りかかるいばらちゃんがいた。
《例の、人の番のところに行ってたんでしょう?》
つがいって…動物じゃないんだから。
神社で特訓した時に、
酒呑童子といばらちゃんに2人のことは何となく話していた。
《それはそうと、あと3日だけど、大丈夫?》
期限が切れる、
青葉の街が火に包まれる
「わかってるよ。」
件の災いがくる。
《まだ妖力を探れない?近くにいるよ、現》
これは酒呑童子も言っていた事、
慣れてくれば、
他の妖力を探知できるようになるらしい。
けど、
あたしにはまだ無理だ。
《行きなよ、譲ってあげる。》
腕組みをして目を閉じるいばらちゃん。
いばらちゃんも魂を集めている。
「ありがと。」
あたしは前述した通り、
妖力の探知ができない、
けど相手を見つける事ができる、
何故なら、
「…おいで、現祓!」
人目のつきそうにない場所を探し、
「あった!現世の神社!!」
一気に妖力を解放する!
留めておくなんてテクニックは無いし、
探知もできない、
なら、
敢えてバレバレな妖力を放出する!
青の色が身体中から溢れ出て、
水気のある枯れ草に火をつけた時の煙のように立ち上った!!
そこで、
しっかり付いてきてくれたいばらちゃんが叫ぶ
《来たよ!!二時の方向!茂み!》
えっ
二時の方向?
え、どこ!?
あ、もしかして時計の二時?
って事は、
…えっ、どこの時計の二時の方向!?
激しく葉を揺らし、
飛び込んできた獣、
《ううううううううう》
…のような、おじさんだった。
…四つ足で石畳に立ち、
…体毛を濃くし、
…腐った乳製品のような匂いを放つ、
典型的なおじさん、
ハゲ頭で、
小太りで、
ヒイヒイよだれを垂らす、
全裸のオッさん。
「いやー!」
たまらなくなり、目を手で覆う。
《何やってるの!?さっさと斬れ!》
いらつくいばらちゃん
けど、
この四つん這いのおじさん、
「だってー!全裸なんだもん!!」
人の、それもおじさんの裸なんて見たく無い!
《俗鬼だ、人を捨てた人が転生した雑魚、容易い!》
ペタペタ手足をついて、ケイトの周りを回る。
「ほんといやー!!」
気持ち悪い!
ほんとに気持ち悪い!!
モタモタしてしまっている、
するとどうだろう、
あたしの妖力は出っ放し、
全身青い色に包まれる。
《うううう》
《うううううう》
《うううう》
更に3人、
それぞれ違うオッサンたちが妖力に気付いてやってきた!
《他の奴らも来たよ!》
わかってるってば!!
服でもきてくれてればいいんだけど…
調子狂うなあ!!
《うううう》
俗鬼?は、いばらちゃんの方に最初死んだ目をやったが、
いばらちゃんの何かを察知し、
回れ右、
あたしの方へつま先を向けた。
《4匹!殺ったら一気にノルマ達成!》
確かにそうだ!
いばらちゃんに気づかされた!
このオジサン達には申し訳ないけど、
やるしかない!
現祓を握りしめ、
覚悟を決める
もう前が隠れてないとかどうでもいい!
4つ魂いただいて、あたしは…
《Suerte.》(ツイてる。)
突然現れた紅、
見覚えある強烈な紅、
フランシスカ・マリア・リアマ!!
こないだのいけ好かないスペイン女!!
《うううう》
俗鬼たちもそれに目を奪われ、
また、向きを変える。
あたしの目の前に
その紅は立ちはだかり、
《何をモタモタしている?魂を狩るときは手早く、でなければこうなる、》
まるであたしが現祓を手のひらから出すように、その紅も両手から両刃の斧を生み出し、
《ううっ!》
俗鬼たち4人の首を一瞬で刈り取った。
《魂4つか、ツイてる、手間が省けた。》
ああっ!
それはもう鮮やかに、
手柄を横取りされた!
命を終え、
煙へ蒸発する4つの肉塊、
《例の悪魔祓い師か、 その魂、こちらが貰い受ける》
あたふたするあたしに代わって、
いばらちゃんがフランシスカの前に立ちはだかる。
顔を見ると細い眉が完全につりあがってる、
おお、こわい…
あたしは知らないよ!
いばらちゃんがああなったら手がつけられない。
《常か?モタモタしてるからこうなる。》
《神に仕えてる奴がこんな小賢しい真似をするなよ》
お互い睨み合い、
一歩も譲らない。
キツい女の子同士のバトルはどうしてこうハラハラするのだろうか。
嫌な汗が噴き出てくる。
《ケイト、早く集魂石出しな。》
フランシスカの顔を睨んだまま、
あたしに指示を出すいばらちゃん
《この魂、私のだと言っている。横取りする気か?》
《先に見つけたのはこちらだ。》
《倒したのは私だが?》
返す刀、
言葉の応酬。
《ケイト!早く!》
イラつくいばらちゃん。
あたしはパーカーのポケットから集魂石を取り出すと、
《おい、》
《…何をしてる?》
フランシスカの斧先があたしの顎に近づく。
「ひっ…」
手を挙げて、
何もしませんよアピール。
《あったま来るね、コイツ。》
いばらちゃんは堪らず、
フランシスカの背中へツカツカと歩いていく。
それに気付いたが、
踵を返し、
《…Cómo se combate conmigo?》(やるか?)
いばらちゃんに斧を向ける
その時だった、
《いばら、おやめなさい。》
頭上に挙げた集魂石から酒呑童子の顔が飛び出した。




