妖力因果、巨大刀
神社の境内、
その真ん中で向き合うケイトと酒呑童子。
《よく、漫画の主人公なんかには必殺技がありますね~かめはめ波しかり、アバンストラッシュしかり、ジャジャン拳しかり…》
ケイトもよく漫画を読むが、
酒呑童子も読むのか、それもジャンプ漫画ばっかり。
と、少し変な気持ちになったがそれは置いておいた。
《業、これも詰まりは必殺技です。相手を必ずぶっ殺す技!必殺技!ほほほ!いい響きですね~》
かめはめ波が出てきたからじゃないけど、
この人完全に悟空じゃなくてフリーザ側でしょ…とも思ったが、これも置いておいた。
《ですが、そんな大技ですから、危険が伴います。麻雀や花札はお好きですか?必ずぶっ殺す手札の役を作る時こそ相手を助けかねない、それにも似ている。》
た、例え好きだなこの人…。
ケイトは鼻でため息を1つ吹いて、
何が言いたいのかを催促する。
《携帯民、あの小人たちを倒した時の事を覚えておりますか?》
酒呑童子が指を1つ立ち上げた。
もちろん、
忘れられない出来事だ。
あの時、
まるで現祓が生きてるかのように青い稲光を帯びて…
急に振り下りた…日本語変だけど、
振り下りた。
《あれこそ業!妖力を纏い、現祓が眠りから目覚めた!》
ん?
その言い方引っかかる、
まさか、この刀は…
《生きている!普段は眠っているだけです!》
今、右手で握りしめているこの刀が、
生きてる?
《あなた様の妖力を糧に、生きております!》
ケイトは少しだけ酒呑童子の方へ前進し、
「ちょっと!あたしのようりょく?なんだかわからないけど、この刀にあたしの何かを吸われてるの!?」
《妖力を吸われております。》
なんでこいつ冷静なの!?
吸われてるとか、許可した覚えない!!
《業、それの危険とはあなたの妖力を消費するという事です。》
ここでいばらが間に入る。
《妖力をまず何なのか説明したら?》
その言葉に
酒呑童子は手のひらに拳を打って、
《妖力をご存知ありませんか?》
一般常識みたいに言いやがって…
知らないと当然答えると、
《妖力とは、常と現が使う現実ならざる神通力のような力でございます。》
《妖力には個性があり、使うモノたちによってその能力は様々、》
ここでケイトを指差す酒呑童子。
《あなた様には現と戦う資格がある、あなた様と出会った時、私はそう申しました。》
《それは、あなた様が既に妖力をお持ちでしたから…》
手のひらを開き、見つめるケイト
そんな不気味な力なんて持っていない、
そう確信している。
《持っていますよ。わかりませんか?身体に留められる許容量を超えていて、漏れ出しているのが。》
「まさかそんな!」
ケイトは自分を抱きしめ、
首を振る
《溢れんばかりの妖力をお持ちのあなた様と、それを食い尽くす現祓、相性は抜群です。》
「あたしはあなた達とは違う!」
あたしは妖怪じゃない!
妖力なんてない!
ケイトを黙らせるように酒呑童子は続ける
《人間の中には特殊な修練を積んだり、血統であったり、妖力に干渉したりして妖力を使えるようになるモノもおります。あなた様は確かに我々とは違う…》
《ですが、妖力を使えるという点ではなんら変わりはありませんよ、ほほほ。》
たまらず現祓を投げ捨てるケイト、
「いや!あたしは、妖怪になんてなりたくない!!」
心身、不安定な状態での、
妖力を使えるという告白に耐え切れなかった。
それを見かねて、
いばらが刀を拾う。
《あんたの兄貴も、》
《妖力を使える。》
腰を落とし、
前屈みに。
そして、手渡す。
《あんたの家系はそういう家系だった、それまでの事。妖怪だとか、現、常、人、そんなの何も関係ない。》
下を向き、現祓を受け取らないケイト。
《受け取れ。これはあんたを守るモノ、捨てるなんて、許さない。》
細い眉尻を吊り上げ、
ケイトを睨むいばら。
《いばら、止しなさい。》
酒呑童子が2人の間に手を割って入る。
そして1つ手を打って、
《話を戻しましょう。必殺技、業について。》
白く、透き通るような細い手を袖から出して、
酒呑童子はその手のひらから、
《私の刀です…夜滅酒、これは素晴らしい刀です、我ながら。》
真っ黒く、
刃振りの大きな大剣が現れ、
石畳にめり込んで見せた。
《あなた様にしていただく事はさほど難しい事ではありません。妖力を纏い、現に向かって振るう、ただそれだけ。ただそれだけで、必殺技になり得ます。》
夜滅酒を肩で背負う酒呑童子、
大の男、一人分くらいの長さのソレを、
片手でいともたやすく持ち上げた事に、
ケイトは驚いた。
《この刀は現祓と同じく軽いのです。さ、見ていてください。》
そして目を閉じ、
何かに集中する。
《刀を温かい何かで包み込む、そう云う想像です…》
見る見る内に夜滅酒のサイズが大きくなっていく。
《私の妖力はこの刀にとって巨大化する力になるんですね〜まだまだ行きますよ…っ!》
どんどん大きくなっていく、
そしてとうとう、
《まあ、これくらいにしておきましょう。》
夜滅酒は寸法からして20mほどになった。
もちろん、全長だけではない。
刃振りもそれだけ太く、分厚く。
それを見たいばらは
鼻で笑って
《こんなんで斬られたらそりゃ死ぬわ》
巨大、
巨大すぎる、
光景もそうだが、
酒呑童子という妖怪、
その存在感、
巨大すぎる。
圧倒され、ケイトは口を開けて尻餅をついていた。
「あわわ…」
こんな化け物と、
知り合いになってしまった…
《さあ、次はあなた様の番ですよ!ほほほほ!》




