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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
22/127

妖力因果、巨大刀




神社の境内、

その真ん中で向き合うケイトと酒呑童子。


《よく、漫画の主人公なんかには必殺技がありますね~かめはめ波しかり、アバンストラッシュしかり、ジャジャン拳しかり…》


ケイトもよく漫画を読むが、

酒呑童子も読むのか、それもジャンプ漫画ばっかり。

と、少し変な気持ちになったがそれは置いておいた。



《業、これも詰まりは必殺技です。相手を必ずぶっ殺す技!必殺技!ほほほ!いい響きですね~》



かめはめ波が出てきたからじゃないけど、

この人完全に悟空じゃなくてフリーザ側でしょ…とも思ったが、これも置いておいた。



《ですが、そんな大技ですから、危険が伴います。麻雀や花札はお好きですか?必ずぶっ殺す手札の役を作る時こそ相手を助けかねない、それにも似ている。》


た、例え好きだなこの人…。

ケイトは鼻でため息を1つ吹いて、

何が言いたいのかを催促する。



《携帯民、あの小人たちを倒した時の事を覚えておりますか?》


酒呑童子が指を1つ立ち上げた。

もちろん、

忘れられない出来事だ。


あの時、

まるで現祓が生きてるかのように青い稲光を帯びて…



急に振り下りた…日本語変だけど、

振り下りた。



《あれこそ業!妖力を纏い、現祓が眠りから目覚めた!》



ん?

その言い方引っかかる、

まさか、この刀は…



《生きている!普段は眠っているだけです!》



今、右手で握りしめているこの刀が、

生きてる?


《あなた様の妖力を糧に、生きております!》



ケイトは少しだけ酒呑童子の方へ前進し、


「ちょっと!あたしのようりょく?なんだかわからないけど、この刀にあたしの何かを吸われてるの!?」


《妖力を吸われております。》


なんでこいつ冷静なの!?

吸われてるとか、許可した覚えない!!



《業、それの危険とはあなたの妖力を消費するという事です。》



ここでいばらが間に入る。


《妖力をまず何なのか説明したら?》



その言葉に

酒呑童子は手のひらに拳を打って、


《妖力をご存知ありませんか?》




一般常識みたいに言いやがって…


知らないと当然答えると、



《妖力とは、常と現が使う現実ならざる神通力のような力でございます。》


《妖力には個性があり、使うモノたちによってその能力は様々、》



ここでケイトを指差す酒呑童子。


《あなた様には現と戦う資格がある、あなた様と出会った時、私はそう申しました。》


《それは、あなた様が既に妖力をお持ちでしたから…》



手のひらを開き、見つめるケイト

そんな不気味な力なんて持っていない、

そう確信している。


《持っていますよ。わかりませんか?身体に留められる許容量を超えていて、漏れ出しているのが。》


「まさかそんな!」


ケイトは自分を抱きしめ、

首を振る



《溢れんばかりの妖力をお持ちのあなた様と、それを食い尽くす現祓、相性は抜群です。》


「あたしはあなた達とは違う!」



あたしは妖怪じゃない!

妖力なんてない!



ケイトを黙らせるように酒呑童子は続ける


《人間の中には特殊な修練を積んだり、血統であったり、妖力に干渉したりして妖力を使えるようになるモノもおります。あなた様は確かに我々とは違う…》


《ですが、妖力を使えるという点ではなんら変わりはありませんよ、ほほほ。》



たまらず現祓を投げ捨てるケイト、


「いや!あたしは、妖怪になんてなりたくない!!」


心身、不安定な状態での、

妖力を使えるという告白に耐え切れなかった。





それを見かねて、

いばらが刀を拾う。


《あんたの兄貴も、》


《妖力を使える。》


腰を落とし、

前屈みに。


そして、手渡す。



《あんたの家系はそういう家系だった、それまでの事。妖怪だとか、現、常、人、そんなの何も関係ない。》


下を向き、現祓を受け取らないケイト。


《受け取れ。これはあんたを守るモノ、捨てるなんて、許さない。》




細い眉尻を吊り上げ、

ケイトを睨むいばら。



《いばら、止しなさい。》


酒呑童子が2人の間に手を割って入る。

そして1つ手を打って、


《話を戻しましょう。必殺技、業について。》



白く、透き通るような細い手を袖から出して、


酒呑童子はその手のひらから、



《私の刀です…夜滅酒(よいめつざけ)、これは素晴らしい刀です、我ながら。》



真っ黒く、

刃振りの大きな大剣が現れ、

石畳にめり込んで見せた。


《あなた様にしていただく事はさほど難しい事ではありません。妖力を纏い、現に向かって振るう、ただそれだけ。ただそれだけで、必殺技になり得ます。》



夜滅酒を肩で背負う酒呑童子、


大の男、一人分くらいの長さのソレを、

片手でいともたやすく持ち上げた事に、

ケイトは驚いた。



《この刀は現祓と同じく軽いのです。さ、見ていてください。》


そして目を閉じ、

何かに集中する。


《刀を温かい何かで包み込む、そう云う想像です…》



見る見る内に夜滅酒のサイズが大きくなっていく。


《私の妖力はこの刀にとって巨大化する力になるんですね〜まだまだ行きますよ…っ!》



どんどん大きくなっていく、

そしてとうとう、


《まあ、これくらいにしておきましょう。》


夜滅酒は寸法からして20mほどになった。

もちろん、全長だけではない。

刃振りもそれだけ太く、分厚く。



それを見たいばらは

鼻で笑って


《こんなんで斬られたらそりゃ死ぬわ》



巨大、

巨大すぎる、


光景もそうだが、

酒呑童子という妖怪、

その存在感、

巨大すぎる。


圧倒され、ケイトは口を開けて尻餅をついていた。



「あわわ…」


こんな化け物と、

知り合いになってしまった…



《さあ、次はあなた様の番ですよ!ほほほほ!》




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