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あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
21/127

お前は俺の




《今回は大変でしたね〜》


神社に来ていた。

未来堂 百一文に。


ケイトは黙ったまま、

俯き、

体育座りをしていた。


酒呑童子は

ヒョイヒョイと反復しながら側へ行き、



《それにしてもその格好、珍妙ですね〜ツツジ色と言いますか、ボタン色と言いますか、何とも珍妙、ほほほ》


まっピンクのケイトの格好をからかう。



《俗世の流行りでしょうか?なんともかんとも。ほほほ!》



いばらは空気の読めない酒呑童子の背中に蹴りを入れ、睨みつける。




《お、おほん。失礼致しました。》


すっ転んだ酒呑童子は立ち上がり、

気を取り直して1つ咳払いした。


そしてケイトに呼びかけ、


《辞めますか?》




ケイトは体育座りをしている

自分の腕の中で

目を丸くする


何を言い出すかと思えば、



《辞めてもよろしいのです。お辛かったでしょう?心中お察ししますよ。》



ケイトは涙と鼻水でグズグズになった赤ら顔をゆっくり上げる。



《今回の災い、あなた様は関係ないのです。他の人間が焼かれて死ぬだけ、お兄様を探すにしても今回の災いはスルーしても良い、もっと言えば、》


《お兄様を探すのも、辞めていいのです。》



なんでこんな辛い目に遭ってるのか、

そもそも考えれば全部お兄ちゃんのせいだ。


けど、

お兄ちゃんはきっとあたしを待ってる


あたしじゃないかも知れないけど、

助けをきっと待ってる。


そう思ってこんな事になってるんだ。




《あなた様の傷は一晩経てば治るでしょう、ですが、心の傷は?再び向き合えますか?現と、敵と。》



不気味に穏やかさを醸し出す酒呑童子の笑顔、



投げやりになってしまえば、

その誘いはかなり魅力的で、

普通の生活にまた戻れるチャンスでもある。



ケイトは酒呑童子の後ろ、

灯篭に背をもたれて腕組みをするいばらの方を見るが、


いばらは下を向き、

目を閉じ黙っていた。




「あ、あたしは…」




ここで七瀬とショーコの顔が頭をよぎる


見ず知らずの自分によくしてくれた2人、

あの2人、

間違いなく現に取り込まれ、

このままだと不幸になるに違いない。


それを止められるのは自分だけかもしれない。




ケイトは葛藤する。


「あたしは…その、」




またボコボコにされるかもしれない恐怖、


七瀬とショーコへの心配、


兄への不安、


災いを放っておけない正義感、





様々な感情入り乱れる中、


《どちらにせよ、決心なさい。我々は現と戦うあなた様の支援しかできません故、》


《…其れをお辞めになられれば、それまでの関係という事。》


《何も難しい事はありません。》




物事は何事もシンプルだ、

それは何にでも当てはまると思う。


酒呑童子の言う事は当然のわかりきった事。


けど、

そういう勘定をしたいわけじゃない。



「あたしは、やる。」




ケイトは立ち上がった。


「あたしは、あと魂4つ集めて、2人もこの街も守る!じゃないと、」


「じゃないと、あたしは…」




お兄ちゃんの顔が頭に浮かぶ


「お前は俺の妹だ。」


頭をよくポンポンと叩く、

あの生意気そうなお兄ちゃんの顔。




「あたしは…お兄ちゃんに会えない…会ってはいけない…!」


怖いけど戦わなきゃ前進できない。


今回は

走り抜けるための後退、

助走をつける後退!!




《よろしい、ではあなた様に現と戦う上で役に立つ カルマ をお教えしましょう。》


顔を引き締める酒呑童子

かるま?とは何のことか


《覚悟なさいませ、この業、ちと危険を伴います故…》






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