いばらの宇宙
起き上がるケイト。
大分マシになってきた。
まだ折れていて痛みもある。
けど、
マシになってきた。
そんなケイトに驚く2人、
「君大丈夫なの!?」
さっきまで散々暴れていたのに、
今は落ち着きを取り戻し…
顔、顔色まで良くなり、
腫れも引いてきている。
「助けていただいて、ありがとうございました。」
ケイトは刀、現祓を出していた。
普通の人には見えない、
鞘のない、白く美しい刀、
「な、何だかわかんないけど、とりあえず良かった。」
ショーコから離れて、
七瀬は洗濯機を指差した。
「君の服、洗濯したけど…まだ乾かないから、それ着てていいからね。」
元々着ていた服はかなり汚れてしまっていたため、ショーコのお古のスウェット上下を着ていた。
「あ、ありがとうございます…」
ド派手なピンクのモコモコスウェット、
ショーコの趣味だった。
そしてとうとう立ち上がったケイト。
「服、お借りします。行かなくちゃ…」
回復したとはいえ、
肩は折れ、
怪我もまだまだ治っていない。
三角巾と添え木で腕を固定し、
左眼に眼帯、
顔中絆創膏にまみれている。
口の中もまだ鋭い痛みが抜けていない。
「まだここにいてもいいんだよ!」
七瀬も立ち上がるが、
ケイトはそんな心境にどうしてもなれない。
それには理由がある。
「大丈夫ですから」
「ダメだって!」
真っ黒なのだ、
七瀬自身が、何の淀みもない漆黒。
そして、
自分自身も嫌でたまらない。
重症だったのに、
もう動けるようになっていること、
現祓を強く握りしめる。
「大丈夫ですから!!」
駄々ではない、
うんざりしているのだ。
この異様な状況に。
七瀬はそれでも止めようとしたが、
ショーコはその袖を引っ張った。
それから、
エレベーターを降り、
自動ドアをくぐる。
行くあてなど家くらいしかない。
自分をこんな目に遭わせたあの男もどこにいるかわからない。
ショーコの家から少し離れて
人目を避けてケイトは泣いた。
感情が入り乱れすぎていて
苦しい。
自分がどんどんおかしくなっていって、
怖くて、
もしかしたらあの優しい人を傷つけ、
魂を奪い合うかもしれない、
またこんな目に遭うかもしれない、
痛いのはもう嫌だ、
渦がケイトを巻き込み、
深海に誘う如く、
息ができなくなる。
頭を抱え、
しゃがみこむケイト。
そんな弱い生き物の背中をそっと、
いばらが撫でた。
《あんた、弱いね。》
いばらも同じくしゃがみ、
今度は後ろからケイトを腕で包んだ。
《ケイラ、あんたの兄貴の気持ちがわかる、》
《あんたは弱い、だから必死で守ってたんだ》
《こんな弱い命、私なら耐えられない》
更に強く抱きしめる。
《けど、今はそれでいいよ。》
どうしていいかわからない、
いばらなりのケイトに対する優しさだろうか。
ケイトの首元に顎を置くいばら、
その時彼女は何を思い、何を見ていたか、
それは誰にもわからない、宇宙だった。




