表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あにあつめ   作者: 式谷ケリー
壱の章 あにあつめ
2/127

とある朝


もう3週間にもなる

兄がいなくなってから始まった、灰色になった世界がやって来てから。


朝はいつも同じ事から始まる。

スマートフォンが鳴り、

兄かと思い、貪るように手に取るが、

通っている高校からの電話、

自分の登校確認の電話。


出る気も起こらず、

放置する。


それが朝の始まり。



そして

いい加減目を覚ませ

なんて言われる事を期待して無理やり身体を引き起こす。


悲しくても

寂しくても腹は減って、

何かを齧り、

シャワーを浴びる。



これがいつもの朝、

灰色の世界での朝、


だが今日は違うことが起きる。



玄関の呼び鈴が鳴って、

全身の毛が逆立つくらい驚いてしまった。


ドライヤーで髪を乾かしていた直後、


ラフな下着姿のまま、

期待して、

会いたくて、

夢中で玄関のドアを開けて応じる。



「お、おはよう」



兄では無かった。

そうだ、

冷静に考えたらそうだった。

兄が、呼び鈴なんて押さない。

押すわけがなく、勝手にずかずか帰ってくる。


「神くん」


家の近所に住んでいる、

一応幼馴染だけどそんなに仲良くない男の子。


何か用?

なんて目線をあたしがしていたのか、

それに気付き、

彼はあたふたしながら自分の肩掛けバッグをまさぐる。


「プリントとか…あ、あと小テストと、」


学校から渡してくれ

と言われたんだろうか

3週間分のプリントを手渡した。


「他には?」


落胆が大きい、

兄だと思った。

正直な所、思った。


来客なんて無かったし、

呼び鈴も久々に聞いたから…



神くんは白い肌で、綺麗な顔をしてるけど、

なんだかオドオドして、

子供の頃は気にならなかったけど、

今は男らしくない女々しさが勝ってしまってなんだか気持ちが悪い。


あ、

とか

ええと、

とか

を繰り返すだけだったので、


何も言わずに玄関の扉を閉めた。



ため息を吐きながら

靴箱の上にプリントを置いて

膝から崩れ落ちてしまった。


狭い玄関の天井を見つめ、

寂しさと悲しさしかないこの空虚な時間に嫌気をさしてしまう。


そして、

床の冷たさをショーツ越しの尻で感じる。


「あっ…」



そうだった、

下着姿で応対してしまった。


シャワー上がりのまま、

応対してしまった。


なのに、

何故ノーリアクションなんだ?

これでも10代の麗しき女子高生なんだぞ

なんとも思わんのか


突然現れた神くんへの不信がどんどん溢れ出す。



不意に茶の間の壁掛け時計を見る、

時間はもう9時になろうとしている。


「なんで…」


そう、何故なのか、

遅刻をしてまで何故プリントを渡しに来たのか?


そもそも、

プリントを渡すのは朝なのか?

いや、

帰りがけの夕方だ。

でなければプリントの情報が最新ではなく、

それに、逐一届けるはず。


一気に貯めて渡すのか?


立ち上がって、

扉を開ける


「神くん!」


「は、はい」


まだ玄関の前で突っ立っていた。


ノーリアクション、

遅刻、

プリント、


かなり怪しい、

この男


「なんで、まだいるの…?」


白い顔で、

少し薄ら笑いを浮かべ、

七三に分けた少し長い黒髪を揺らしている


「なんで、って、要件を満たして、いないから」


また閉める

だめだ、

かなり危ない人だ


毛穴がふつふつと沸き立つような感覚、

全身が神くんを拒絶している

どうしよう、

ずっとあのまま突っ立っていられたら…


お兄ちゃん…


強く思った。

強く思って、

思い出す。


《使え…》


何てことない日常の1ページで言っていたこと、


《何か変なことがあったら、これを使え》


変なことって何?

って

言って、思ったけど、


今がそうだ…

変だ、変なことだ。


ズボンを履いて、

タンクトップの上にパーカーを羽織る


そして、

タンスの奥の奥へ手を伸ばした


その瞬間、


「開けてよ!!まだ要件が!!あるよ!!」


鉄の扉をガンガン叩き、

大きな声で喚く神くん


音の方を振り返って冷や汗を流したが、

目をつぶり、

歯をくいしばる


「いや、嫌ぁ!!!!」


やっつけようとか、

なんとかなるなんて全然思わないけど、

信じるしかない、

お兄ちゃんを、信じるしか…




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=836330751&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ