処理プラント
時同じ頃、
夜明けは誰にでもやってくるはずだが、
彼の元にはとうとうやって来なかった。
道路舗装などの請負を主に行う、
とある建設会社のプラントに、
跪く男と、
それを見下げる男がいた。
見下げている男のバックには何人ものスーツを羽織った男たち。
さらにその後ろには黒塗りの高級車が並ぶ。
ここにいる誰も彼も、一般人とは考えにくい風体。
見下げる男は
跪く男の髪の毛をつかみ、
タバコをくわえたまま耳元で呟く。
《何か言い残す事は?》
現場が現場だ。
誰も見ていない。
跪く男の最期は近い。
「いやあ!死に、死にだぐない!!!」
この男、何かをやらかしたのか?
命を終わらされるような事を?
情けないその姿に、
他のスーツ達が笑いを堪えない。
「頼む!頼むから!お願いします!!!」
なんでもするから助けて
と言わんばかりの命乞い。
《…なんでもするから助けてと言わんばかりの命乞いだな。》
なぜここで説明したのに敢えて言うんだ。
ナレーションの意味がないじゃないか。
まあいい、戻ろう。
「はい、なんでも、なんでもいたします!」
見下す男はオールバックの灰色頭だ。
《その言葉を聞いたからには、殺すわけにはいかないな。》
髪を掴んだ手を離し、
そのまま手をパンパンと打って払う。
《ようし、じゃあな、この街に火を放て。ボヤかなんかじゃねえぞ?100人1000人殺すような大火だ。》
えっ
血まみれの口を開け、
呆然とする跪く男
《大火、それを見たいお方がいるんだよ、俺たちの天上に。理解しろ、今死ぬか?》
首を振り、
「無理、無理ですって!そんな、無理です!」
やり方ももちろんわからないし、
そんな度胸もない、
当然その返答になる。
《…ここ、この処理プラント、ウチんとこの会社のもんでな、道路舗装とかに使うアスファルト、アスファルトわかる?》
《一般的にはリサイクルなんだよ、剥がしたアスファルトに砂利を混ぜて3000℃で練り直す。そこに死体でも放り込めばどうなる?》
《…骨も肉もDNAも溶けておしまい。お前は晴れて、年間1万人はいる行方不明者の一員になるわけだ。》
跪く男は肩を震わせる。
皆まで言わなくてもわかる。
これは自分のことだ。
《まあ、放り込む時はチェンソーで4つか5つにしてからだから、そん時はオメエ…》
《…男見せろや。》
灰色頭の提案、
青葉を火の海にするか、
部品となって道路に埋もれるか、
2つに1つ…。
ここで跪く男の肩を優しく叩いて灰色頭は言った。
《火、付けるならウチでお前を守ってやるよ。伝説の放火犯ウチで囲ってるとなりゃ、ちったあ箔がつくってもんだ。守ってやる。》
前歯をオール金歯にした灰色頭は満面の笑みで笑い、存在感のあるボディピアスを揺らした。
「う、うぐぐ…。」
跪く男に選択肢はなかった。
明暗分かれた2人の男、
跪く男、七瀬。
灰色頭、榊。
この2人がケイトに最悪な週末をもたらす事になる。
「榊さん、さっきの話…。」
「七瀬の野郎に話した、」
「アレって…本当の話ですか?」
榊は笑い、
タバコを吹かし、
車内から流れる景色を目で眺めている。
《アスファルト合剤を作るのに3000℃もいらねえよ。たかだか200℃、でっちあげだ。》
運転手の子分は赤信号で車を停めた。
「えっ!?じゃあ、嘘ですか!?」
榊は前のめりになり、
運転席と助手席の間から顔を出す。
《…処理は俺たちの仕事じゃねえ。》




