修羅と羅刹と川上先生
川上先生が作ったブラックホール?に
飲み込まれた1年ろ組!
彼らは無事だった、
そう、
「…ここは施設のレイドトレーニング空間。」
川上が一つ呟く。
平凡なサラリーマンが
30年ほどのローンで購入したような
一戸建てがポツンと
川上の右手に建ち、
他は辺り一面
薄気味悪い夕方手前の岩場。
皆は不思議そうに辺りを見回す、
自分の無事を確かめる、
スマホを取り出す、
各々の行動を取って
川上を睨みつけた。
「川上先生、」
ろ組の面々は様々言いたいことがあるだろう、
だが、
それを察して
「近田さんがおらんもんで、おいが偉そうな口を開きもす。」
クラスの副委員長、北郷吉之である。
川上は腕を組み、
静かに鼻息を一つ放って
話を聞いた。
「学校の外で誰かが何かと戦っちょって、じゃが、おい等はこげんところにおりもす。」
「こげんことしとる場合じゃろうか?先生。」
「おい等も、一緒になって戦うべきじゃ?」
細かいところはともかく、
ろ組が思っていることを代弁した北郷。
しかし
川上は邪悪に高らか笑って、
「お前らが、百鬼夜行と、戦って、どうなるんだよ?」
「教えてやらあ、すぐおっ死んで終わり。」
「もしくはな、これ最悪、3年、2年の足手まといになってその上級生たちがおっ死ぬ。」
この言葉で
侮辱されたような怒りに火がつく奴もいたが、
確かにそうかもしれないと思う者も。
「要するに、弱いんだよてめぇら。」
指を差す、
指を差す、
「お前も、お前も、お前も皆弱いんだよ!」
そして、
川上が笑い、
「弱い…だったら頑張って強くなればいいんだよ。」
細い両の白腕を大きく開き、
「ここで!ワシが!稽古をつける!少々の予定が狂ったが、実際そうつもりだったし。」
ようやくこの言葉で
皆が静かに川上の話を聞く態度になった
が、
「稽古するったって、外があんな状態なら1時間もできねえだろ?」
近田の相棒、
土倉 虎三郎の言葉。
すると、
「詳しい説明はお前らに話しても仕方ねーから言わねえけど、」
「ワシの業で、今この空間の時の流れは現実世界の流れよりかなりスロウリィだ。」
「ドラゴンボールの精神と時の部屋知ってんだろ?あれだよ、要するによ。」
話はよくわからなかったが、
例えはよくわかった。
「本当は現実世界1時間、こっちの世界2年間で行きたかったけど、とりあえず30分/1年で行く。」
「旧ちゃんの結界が多分1時間も保たない。」
川上はサラッとこんなことを言っているが、
時間を支配したり、
異空間に皆を連れてきたり、
只者ではないとは知っていたが、
よく考えて、
本当にこの人は頭がおかしいくらい強く、
凄まじい人なのか?
と
皆は唾を飲み込む。
そして
川上は皆へ
地面の岩肌に着座を要求して、
「時間がないけど、これくらいは授業しとかないとならん事があるからな、」
「ちょっと聞けぃ。」
それぞれ腰を落としだす、ろ組。
川上は手振りを使い、
「お前らがてっとり早く強くなる方法はただ一つ、自分の妖力を限界まで使いまくり、無くなったらすぐさま回復させてまた使いまくる。」
「限界まで使って、限界まで回復…ってのがコツだ。」
「妖力の底は、無理やり広げられるんだよ。」
そのシステムを
知っている者も中には何人かいたが、
初耳、耳からウロコな者もいた。
「しかし、やってみたらわかるがな、これがまあキツい。」
「妖力=心、心をすり減らし、ボロボロになるまで酷使するんだ。これほどきつい事はない。」
「この先、泣き出し、自殺しようとする者も現れるだろう。」
「それは、許可する。」
自殺を許可するだと?
ざわつき、毛羽立つろ組。
「死は心を育てる、強くする、それは先日のレイドトレーニングでわかったろ?」
確かに
死んで死んで、死にまくったろ組、
そこで手に入れたものは
単なるトレーニングでは得られない経験だった。
自分の首が飛び、
顔がなくなり、
血を失って闇に包まれる感覚。
「だから、辛かったら勝手に死ね。ここはレイドトレーニング空間だからな、死んでもまた再生されるだけだ。」
もうこの川上の話をたわ言と思う奴はいない。
川上のルールで強くなり、
早く外に出なければ、、、
これがろ組のスローガンになっていくからだ。
それと、
と
川上はもう一つ付け加える。
「この建物、これな、トイレとか風呂とかキッチンとかテレビとかあるから、好きに使え。」
「精神と時の部屋にもあったろ?そういう部屋。」
うししと笑って
手を叩く。
「よし授業終わり!死んで死んで死にまくれぇ!!」
川上はいきなり
自分の正面に座る生徒たちへ
愛刀 銀銀銀を振りかざし、
その場を爆散させた。
「何人ぶっ殺したかな?」
鞘を抜き、
両刃が峰になっているその刀へ妖力をまた込める。
そして一斉に得物、武器を取り出す生徒たち。
「18テンポ遅ぇんだよ、武器構えるのがよ。」
笑顔で長い銀髪を振り乱し、
手当たり次第
生徒をぶっ殺していく川上。
その光景は、
まさに修羅、
川上は、羅刹。
ここで力の差が出る、
やはりろ組の中にも手練はいて
すかさず川上から距離を取り
様子見ムードの者、
どうせ死んだって復活できる、と
「川上ぃいいい!!!」
目の前に立ち、
歯を剥き出す者とで分かれた。
「おお、木戸だっけ?お前」
「おう!木戸龍たぁ俺様の事よ!!」
川上は銀銀銀をだらりと下ろして、
「博打が得意なんだろ?振れよ、賽子。」
広い木戸の額に血管がいくつも浮き上がり、
言われなくても振っていた!
「最初から大博打だ!!賽子嵐!!!!」
地面の岩肌を上手に転がり
3つの賽子は駒のように勢い良く回ると、
「遅ぇんだよ、パッと出せねぇのか?その出目は」
賽子の結果を見るまでもなく
川上がすぐ目の前に現れ、
木戸は愛刀、撲殺刀を振ったが、
銀銀銀が凄まじく速く
下から刀を顔に入れられて
その半分が空へ吹き飛んだ。
「いいか、百鬼夜行ってのはな、仮面ライダーの怪人みてぇに、変身待っちゃくれねえからな?」
「そういう奴相手にするには、先手先手、3、4無くて、5にも先手だ馬鹿野郎。」
1年ろ組23名中、10名死亡。
残り、13名。
吹き飛んだ木戸の顔面半分が
ようやく空から降って
汚い音を立てて着地した。
「さあて次は、気取ってこの川上・晶・アリーシアちゃんを様子見なんざ気取ってしやがる奴らでもぶち殺すかな。」
大きな瞳を
川上は怪しく輝かせ、
ゆっくりと舌舐めずりをした。




