神くん
ふらふらで家に戻り、
ほっとけないので、疲れてるけど仕方なく玄関先で倒れる神くんをリビングに運ぶ。
横に寝かせ、
額に冷たいおしぼりを置き、
毛布をかける。
「はあああ…」
床に腰を下ろすと疲れがどっと出た。
身体を刺された傷はもう無く、痛みも消えている。
時計を見ると11時前、
疲れた、本当に。
テーブルに半身を寝かせ、
頬をつけて目を閉じた…
…少なくてもあんなのとあと4回も戦うの?
なんで?
お兄ちゃんのため?
いや、
そうだけどさ…
妖怪って何?
もしかして、
あたしも妖怪になったの…?
ここで、
肩にふわっと風が吹く
目を開けると、
「起こしちゃったかな?毛布、ありがとう。」
神くんがあたしの肩に自分が使っていた毛布をかけてくれた。
「あ、いや…その、寝ちゃった。」
身体を起こして
また時計を見ると11時半、
30分も寝ていたのか。
神くんは正座して、
「ごめんなさい、何か、色々迷惑をかけたみたいで。」
頭を下げた。
…うう、確かに怖い思いもしたし、
…変なものに巻き込まれたり大変な迷惑だ。
けど、
そこまで素直に謝られると何も返す言葉はなく、
「いやあ、まあ、気にしないで。」
こちらは歯と手のひらを見せるしかない。
「晴名さん」
頭を戻し、
まっすぐな灰色の瞳であたしを見つめる神くん。
「は、はい」
何を改るか、
ついついあたしも正座になってしまった。
「学校、こないの?もう、ゴールデンウイークになるよ。」
3週間行ってない、
もうそんな時期か。
「勉強とか部活とかはともかく、学校には通った方がいいよ。」
あたしは下を向き、
何を言い出すかと思えば、違う切り口とはいえ教師と同じことを言う。
なんて悪い気持ちになる。
せっかく心配してくれてるのに。
「学校は、行くよ。」
この一言で少し神くんの顔が緩んだ。
「けど、それはあたしのタイミングで行く。」
悪い事してるとは思うけど、
こっちの事情だってあるし、
知らないくせに。
立ち上がり、
神くんにお帰りを手で願った。
「話はそれだけ?」
神くんも
それに気づいたか、
「わかったよ。」
立ち上がり、
学生カバンを脇に抱えた。
操られて家の中を土足で居座った先ほどとは真逆、
スタスタと出て行くじゃないか。
靴を履く神くんはさいごに、
「ゴールデンウイーク明けに編入生が来るみたいだよ。」
あたしには関係ない。
その背中を見送らず、
玄関の扉を閉め、
あえてすぐ、聞こえるように鍵をかけた。
そこからすかさずため息、
あたし、嫌な奴だな。
けどわかってる。
わかってる。
わかって、る。
「頭のおかしな不登校は今週まで。」
「来週からは普通の高校生に、なる。」
お兄ちゃんを見つけて、
早く、高校生にならなきゃ。
お兄ちゃんに、叱られる。




